漫画から学ぶ:鬼滅の刃の鬼との戦いは人間社会の不正や汚職、腐敗との戦う武士道精神が描かれている

「鬼滅の刃」という漫画がある。
大人から子供まで、一時期大人気になった漫画であり、現在はアニメやアニメ映画が現在進行形で人気となっている。

世間一般では、この漫画が何故ここまで人気になったのか、筆者は正直良くわからない。
主人公たちが苦悩しながら成長していく姿が描かれるところや、困難に対して仲間で協力し合う姿や、決してあきらめない姿が描かれるなど、主人公たちのリアルで美しい内面が描かれると同時に、主人公たちの敵である鬼たちの内情がリアルに描かれるのに加え、どの敵も心から憎むことが出来ない境遇が描かれることに対して共感を得るのではないかと思われる。


この「鬼滅の刃」という漫画の中で登場する鬼たちは例外なく、もともとは皆、人間であった。
人間社会で人に裏切られたり、騙されたり、あるいは、欲望に心を奪われることで鬼になる。
鬼になると永遠の命と強靭な力が手に入る。
鬼になれば、老いることはなく、食うための金も不要となり、病気にもならず、死ぬこともなく、何も失わなくなる。
つまり、鬼という悪魔に魂を売ることで、人間を喰らって生きることにより、楽に永遠の命が力が手に入るのだ。

これは正に、漫画の中で「鬼になる」という選択は、現代社会において「悪魔に魂を売り、不正に手を染めることで簡単に権力と財力を手に入れる」というのと同じである。

自分の力でコツコツと実力をつけ、働いて財を成すことは長く険しい道である。
だが、巨額の財を人から盗み、盗んだ財を利用して社会的地位を買収すれば、容易に権力も財力も手に入れることが出来る。
正に、「鬼滅の刃という漫画で描かれる鬼」とは、「現代社会で悪魔に魂を売った欲まみれの外道」のことを指す。

「鬼滅の刃」の作中では現代社会におけるリアルな悪魔のささやきと同じ場面が登場する。
悪魔からの誘いに乗って人として道に外れて外道の道を選ぶ者もいれば、悪魔からの誘いを断り、人として生きることを選ぶ者もおり、それぞれの姿がリアルに描かれる。

鬼を退治する鬼殺隊のリーダー格として描かれる「柱」という存在の中に煉獄杏寿郎というキャラがいる。
杏寿郎は柱として鬼と戦い、死にそうになる。
その時に鬼から「鬼となり永遠の命を手に入れないか」という悪魔のささやきを受ける。
杏寿郎は、杏寿郎が幼い頃に病弱のために若くして亡くなった母親から、「あなた(杏寿郎)は他の人よりも強く生まれました。なぜ他の人よりも強く生まれたのか。それはその力を使って他の人を助け、世の中のための役に立てるために使わなければなりません。決して、天から与えられた力を私腹を肥やすために使ってはなりません。弱き者を助けることは強く生まれた者の責務です。そのことを決して忘れてはなりません。母は強く優しいあなたの母になれて幸せでした。」と言われるのだ。
杏寿郎の母は、その言葉を残して死んでゆく。
だから、杏寿郎は鬼との死闘で、死にそうになり、悪魔のささやきを受けても、その誘惑に乗らずに自らの命を犠牲にして仲間を守って死んでゆく。

主人公の炭治郎は杏寿郎の背中を見て、杏寿郎が自分たちを命を懸けて守ってくれたことを背負い、例え自分が特別な力をもって生まれたわけでなくても、諦めずに立ち向かわなければならないことを悟るのだ。
世の中には人の心を持たない者が必ずおり、そのような者たちは理不尽に他人の命を奪い、そのことに反省もせず悔むこともない、そのような横暴を絶対に許してはならないと心に誓い、炭治郎は杏寿郎の意思を受け継ぐ姿が描かれるのだ。
残る者に想いを託して自らが犠牲になることも覚悟して立ち向かっていく杏寿郎や、杏寿郎の意思を受け継いで祖先の魂を受け継ぐ炭治郎、正に彼らが生きる様は現代において多くの日本人が失ってしまった日本の武士道精神そのものなのである。

この姿は正に現代社会そのものではないだろうか。
人類の歴史は巨悪による略奪とそれに抗う者たちとの戦いの歴史であるともいえる。
歴史を振り返れば、挙げるときりがないほどの多くの鬼たちが人の命を奪って私腹を肥やし、反省することもなく平然と生きている。

新型コロナワクチンで多くの人が亡くなったにも関わらず、そのような甚大な被害が起こることがわかっている上でそれを実行し、それに加担し、問題を指摘され、非難されても反省せず、開き直る鬼がそこらじゅうにいる現代社会は、漫画「鬼滅の刃」でいう鬼がそこらじゅうにいるのだ。



「鬼滅の刃」の世界では鬼は自分が鬼であることを自覚して鬼として生きているが、現代社会では自分が鬼であるにもかかわらず、その自覚がなく、平然と鬼として人を喰らって生きている。
つまり、現代社会は「鬼滅の刃」よりも残酷な世界なのだ。

漫画「鬼滅の刃」の世界では、多くの鬼が人間たちをとても残酷に殺す姿が描かれる。
だが、われわれが住むこの現代社会は、「鬼滅の刃」以上に残酷な世界なのであり、鬼である自覚のない者たちが人間の顔をして生きているのが現実なのである。
現代社会がそれほどの残酷な世界であることを、漫画「鬼滅の刃」は教えてくれているのである。




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