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さよなら2023年

一年を振り返って

 少し一息ついたので書く。気がつけば月は師走、年末である。夏の終わりから今までずっと走ってきた気がする。課題に追われ、バイトのシフトが消え、二十歳を迎え、一年が終わろうとしている。
 そんな多忙な時間を彩ってくれたのは、過去の記憶や趣味たちだった。趣味の方が占めていたと思う。同窓会の連絡に対して「卒業したのってそんなに前のことだっけか」と時の速さを感じながら、今は滅多に会わない人たちの顔を思い浮かべるだけでも少し心が楽になった。
 趣味に関してはイギリスの影響が目立った一年であり、特に音楽面での影響が強かった。大学の前期でイギリスを学べる授業があると知ると、すかさず受講することにした。高校の頃は日本史選択者だったので、日本から遠く離れた国の歴史を遡って学んでいくだけでも新鮮だった。

ブリットポップ①

 遡ることおよそ30年前、イギリスではオアシスやブラーといった数々のバンドがチャートを賑わせていた。彼らが演奏していた「ブリットポップ」と呼ばれるそのジャンルを今聴くと、90年代の退廃的な雰囲気と現代社会の閉塞感がマッチしているようで馴染み深かった。"ポップ"と呼ばれただけあって大衆化し国家高揚の雰囲気が高まっていった(後にそういった政策が打ち出された)が、ブームは5年ほどの短命だったという。似た曲が量産化される状況に早い陰りが表れたのかもしれない。

オアシス(左が兄ノエル、右が弟リアム)
ブラー

 ちなみにブーム勃興当時のイギリスでは不況が国を覆っていた(日本ではバブルが崩壊した頃)。それを踏まえれば、ブリットポップはその影響が直に反映された、時代を象徴する音楽だったということが分かる。後に好景気に転じたことも、流行の収束に繋がったかもしれない。それがリバイバル的なマイブームとなって非常に響いている。年月が失われ続ける国にはうってつけの音楽だと思った。

ブリットポップ②

 思い返すと今年の8月に行われたサマーソニックにてブリットポップの代表格であるオアシスの元ボーカルであったリアム・ギャラガーがソロで、またそのライバルとも評されたブラーの方はヘッドライナーとして出演していたのである。

リアム・ギャラガー

 自分は観に行けなかったのでツイッター(X)でしか情報を追えなかったが、ブームの渦中にいた人たちは熱狂したことだろう。とても羨ましかった。当時の彼らはメディアによって出身階級や音楽的な違いなどから、事あるごとにお互いをおちょくるような対立関係に巻き込まれていた。そうした構図をイギリス人が楽しんでいたのもまた事実であり、シングルを同日発売してどっちが売上で勝つか、と熱狂していたらしい。
 自分は音楽面ではブラーが好きだが、音楽への姿勢ではオアシスが好きだ。比較的裕福な中流階級育ちの四人組であり、主流のポップスよりも自分たちらしい捻った音に忠実なブラー、労働者階級が人生で成功するにはサッカー選手かアーティストになるしかない、と言われるなかで見事成功を納めたオアシスのギャラガー兄弟(リアムは弟、兄ノエルの脱退により解散)。ブリットポップの二大巨頭とも言えるバンドは、今でも根強いファンを抱えていることだろう。
 日本の音楽チャートでは邦楽やK-POPが目立つ一方、洋楽は皆無と言っても過言ではない。一方イギリスのチャートではブリットポップ期に発表されたオアシスの楽曲「Wonderwall」が下方でランクインしていることがよくある。

12/29時点でのApple Musicにおける、
イギリス国内のトップ100で「Wonderwall」は96位だった

 そもそもジャンルにこだわる聴き方が前時代的とも言われ、SNSでバズることによって始まる流行も珍しくない。そんな時代でも何万人が入る会場を満員にして堂々と歌う彼らの影響力たるや、「ブリットポップは死んでいない」のではないかと思わされた。普段洋楽を聴かない人にもおすすめできるジャンルだと思うので、是非。

ブリティッシュヒルズ

 そんなしてイギリスに興味を持つようになったもので旅行に行きたくなったが、生憎の円安である。海外旅行には痛手だ。でもそれとなく雰囲気を味わえる場所に行きたかった。そうして見つけたのが福島県天栄村にある、ブリティッシュヒルズである。

 『パスポートのいらない英国』、この見出しがブリティッシュヒルズのすべてを物語っている。ディズニーのような閉鎖的空間に位置するその小さなイギリスは、日本にいることを忘れさせてくれた。

玄関口の標識は英語表記だった

 ブリティッシュヒルズでは中高生らしき子どもたちを何人か見かけた。公式HPには当初は語学研修施設として作られ、それ以外にもホテルとしての利用も可能で、日帰りの観光もできるとのこと。自分は日帰りで訪れた。

正面に写るのはマナーハウス
マナーハウスの玄関

建物はイギリスのそれのようで、中世の雰囲気が醸し出されていた。食事もイギリスで人気のメニューが出揃い、アフタヌーンティーもあった。

ミートパスティ
中身はじゃがいもや玉ねぎ
ソルトビーフサンドウィッチ
塩漬けにされた牛肉とマスタードがよく合っていた

 色々と難しい状況ではあるが、文章を書いていると本国に行きたいと改めて思わされた。それくらいイギリスに熱中した一年だった気がする。打ち込めるものがあれば、救われることは多いと思う。

20歳

 になったが、実感はやはりない。お酒はそれなりに飲んでいるが、それでも湧かない。ティーンエイジャーではなくなり、20代に突入したばかりだからかもしれないが。親曰く「20代入れば人生はジェットコースターだ」とのことだが、そのレールがどこまで続いているのかも分からない。良くも悪くも未来の自分が何をしているか見えてこないし、様々な不安が渦巻いていて軽いものから重いものまで、どれも生活に直結していると思っている。2020年代になってからは幸せな最期を迎えられなかった人が多かったのではと思うし、だからこそ余裕を持って生きていきたい。笑って過ごしていきたい。思う存分楽しんで逝ければそれで幸せなんじゃないか。そんな20代を過ごしてやろうと思う。
 ちなみに誕生日の夜は、大学の人たちと食事をしていた。偶然その日に被っていたこともあり、祝ってもらった。社交辞令か否かなんて考えてしまう癖があり、その違いもよく分かっていない身ではあるが、今はそんなことはどうでもいいし、何より人に祝ってもらえる人間で良かったと思っている。日頃から少なからず感謝は口にしてる(と思う)が、こんな長々と伝えるのも恥ずかしいのでここに感謝の言葉を残しておく。本当にありがとう。

 除夜の鐘が聞こえてきたので、締めの挨拶とします。では、良いお年を。

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