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土地に根付くフィクション

私が好きなNHKの番組に、タモリさんのブラタモリがあります。旅行気分で気楽に見られるし、それでいて、目から鱗な事柄を知ることができて、とても面白く、気分転換になります。
見たことのある方は分かると思いますが、こちらの番組は、タモリさんが日本の様々な土地を旅して歩き、その土地の歴史や風土を紹介する番組なのですが、特徴的なのは、昔の地形とかその地質の変化に着目する視点です。
タモリさんがとにかく地学に詳しい方で、本当に物知りなので、話はとても簡単に進みますが、深い話になっています。

先日は、対馬の特集でした。
船越という地名は全国にたくさんあるけれど、ここの小船越も、実際に内海から外海へ移る際に、一番近道となる陸地がここだったり、白村江の戦いで唐と新羅の連合軍に負けた倭が再び連合軍と戦うかもしれないことを恐れて築城した金田城の位置について、石英斑岩の地層の地域と一致する場所だったからだったりという目から鱗な話が、対馬の絶景とともに堆積岩の層が斜めに重なっている絶壁の風景なども交えられつつ見られて面白かったです。

また、少し前になりますが、イタコさん(死者と話せる巫女さんのような人と言われている)で有名な青森県の恐山を旅した特集も印象にすごく残っています。
恐山は溶岩の塊がゴロゴロしている部分は、火山ガス(硫黄)が微量に出ていることもあって、全く草木が生えない、まるで地獄のように見える地域と、草木が生えていて澄んだ美しいエメラルドグリーンの湖(カルデラ湖)がある、まるで天国のような植生が地続きで広がっていて、それがこの地域が死者に会える場所と信じられるようになった理由ではないかというレポートは説得力がありました。

その土地の地質や植生が、その土地での生活形態を決め、歴史とともに住む人々に民俗学的な意味である種のフィクションが語り継がれるようになるのかもしれません。
ブラタモリの中で、いつもその地方の市役所にいらっしゃる学芸員の方(文化財担当課)が解説をされるのも民俗学的なアプローチに説得力が増していると思います。

ところで、私は地理と地学が好きでしたが、地理は最初はそうでもなかったのです。
地理っていうと、白地図の色塗り。色鉛筆で世界地図を気候区分ごととか、平地や砂漠や山脈とか、はたまた小麦の産地とかで塗っていくのですが、綺麗に塗れたら満足、くらいな感じでした。
でも中学の時担任が地理専攻の人で、いきなり学年初めの授業で、「世の中は、君たちが思っているよりはるかに冷たくて厳しい世界だ」みたいなことを語り始めたのです。
「そういう世の中を生き抜くには、どうすればいいと思うか?ーそれは、まず自分を知ること。自分の立ち位置を知ること。自分を知って、世界を知ること。知らなければ対処ができない。自分を守ることも出来ない。」
その担任の話は、こう続きました。例えば、君たちは、自分が今日帰って寝る家がどれくらい安全なのか、危険なのか、知っているか?
確かに、中学生の私はそんなこと知らないし、考えたこともなかった。
地理とは、自分を知るのに一番役立つ科目だから、これから勉強していこう、という有体な文句で最後は〆られたのですが、結構衝撃だったのです。

ちなみに自分の家は、かなり大昔ではありますが、一級河川が流れていたと思われる場所に建っています。その証拠に大昔の地名には、「郷」という水にちなむ文字が入っていました。これはたぶんうちだけではなく、たいていの家はそうだと思います。だって、家が建っているのはだいたいが平野だけれど、平野は川の沿岸部分にできるからです。

ブラタモリは、地理や地学的なアプローチはもちろん、民俗学的なアプローチもかなり深く紹介してくれるので、歴史の中で人間が生きてきた知恵や遺産も知ることができて面白い番組だと思います。
まだまだ続きますように☆
過去行った地域の再放送もまた機会があればお願いしたいです。

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