影絵 緋江路

耽美的なものを愛でる。写真なら森山大道、絵ならクリムト、小説なら谷崎潤一郎の春琴抄、短…

影絵 緋江路

耽美的なものを愛でる。写真なら森山大道、絵ならクリムト、小説なら谷崎潤一郎の春琴抄、短歌なら北原白秋、詰将棋なら将棋図巧第一番、能なら道成寺、戯曲なら蓬莱竜太。 東京大学法学部卒。都市銀行勤務を経て、現在地方公務員。

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  • ほっこりエッセイ読本

    エッセイって何なんでしょう?最近エッセイにほっこりさせられることが増えてきました。 たくさんのエッセイストの方々のエッセイの中から心に止まったことを、徒然に綴っていきます。

  • 短歌メモ

    心に響いた短歌や短歌批評、作歌のヒントなどをまとめました。

  • オモシロ批評録

    面白いと思った批評を紹介します。 主に批評雑誌「エクリヲ」(エクリヲ編集部)掲載のものから取り上げることが多いかもしれません。 評論の読み方がわからないと悩む方もぜひ。

  • 写真批評 サシイロ

    様々な写真家の写真を批評した評論。 変わりばえしないモノトーンな日常に色が射すように、あなたの気付きになればという思いを込めて。

最近の記事

30歳を過ぎた今、伝えたいこと 〜谷口彰悟

 昨日、サッカーアジアカップ準々決勝が行われ、日本代表はイランに敗れてベスト8で終わりました。  実力としては優勝が狙えると言われていましたが、なかなか中東勢の実力も上がっていたというところでしょうか。  さて、日本代表選手の中で、谷口彰悟選手という方がエッセイを書かれています。  私はサッカーについては、この前のW杯でドイツやスペインに勝った日本選手の活躍を見てからのにわかファンですが、今回のアジアカップ中にこの連載を知りました。そして谷口選手の文章がなかなか上手くてびっ

    • 土地に根付くフィクション

      私が好きなNHKの番組に、タモリさんのブラタモリがあります。旅行気分で気楽に見られるし、それでいて、目から鱗な事柄を知ることができて、とても面白く、気分転換になります。 見たことのある方は分かると思いますが、こちらの番組は、タモリさんが日本の様々な土地を旅して歩き、その土地の歴史や風土を紹介する番組なのですが、特徴的なのは、昔の地形とかその地質の変化に着目する視点です。 タモリさんがとにかく地学に詳しい方で、本当に物知りなので、話はとても簡単に進みますが、深い話になっています

      • NHK短歌5月号より

         NHK短歌5月号掲載の短歌からいくつか紹介したいものがありました。  まず巻頭秀歌に私の好きな北原白秋の歌が載っていました。 ヒヤシンス薄紫に咲きにけり   はじめて心ふるひそめし日  (「桐の花」より)  この歌については、実はこの下の句、初出は「はじめてキスをおぼえそめし日」だったとのことで、それもわるくないのでは?と三枝昴之氏が解説されていましたが、私は「心ふるひそめし日」の方が直接言わない奥ゆかしさが恋のはじまりの日にふさわしいと思います。  記憶というのは不思

        • 近代人気歌人再発見 〜片山廣子

          NHK短歌4月号「近代人気歌人再発見」で片山廣子が取り上げられていました。 片山廣子という歌人のことを実は全く知らなかったのですが、なかなかのロマンチストのよう。 芥川龍之介との文学上の交流があって、お互いに刺激し合い、尊敬し合う関係ということで、手紙のやりとりなどが残っていて、プラトニックな恋愛関係だったことが伺えるという話に驚きましたが、歌を読んでみると確かにそうだったのではないかと思えました。 亡き友のやどりし部屋に一夜寝て  目さむれば聞こゆ小鳥のこゑこゑ  (「

        30歳を過ぎた今、伝えたいこと 〜谷口彰悟

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        記事

          NHK短歌 4月号より 1

          NHK短歌4月号より、印象に残った部分をここにメモとして残しておきたいと思います。 まだ全体を読み切れていないので、前半部分です。 4月から選者がまた新しい布陣となりました。 選者が変わると、紹介していただける短歌がまた違ってくるので、それも新鮮です。 今回田村元さんは、サラリーマンをしながら短歌を詠む活動を続けて来られている歌人ですので、その点私は共感できるものが多いように思います。  サラリーマン向きではないと思ひをり   みーんな思ひをり赤い月見て  働くた

          NHK短歌 4月号より 1

          河野裕子 没後十年特集

          角川短歌2020年8月号「河野裕子没後十年記念特集」を読みました。 河野裕子さんの全歌集についての評を年を追って掲出してあり、河野裕子の人生を知ることができました。 私は河野裕子の短歌と言えば、夫の永田和宏さんに対する恋歌というイメージが強かったのですが、彼女が結婚してからの歌は、母性というか、女性性をテーマにしていることを知りました。 結婚後妊娠して変わっていく自分の身体について歌った歌は、自分が女性として生まれた意味がこういうことだったと自覚していく過程を歌っていて、

          河野裕子 没後十年特集

          作歌のヒント(新版) 〜永田和宏

           歌人の永田和宏さんの著書「作歌のヒント 新版」(NHK出版)を読みました。 短歌を作るための心構えのようなことから、修辞や技法に関すること、また歌会で他人の歌を読み込むことの意味などについても言及されていて、とても幅広い内容になっています。  短歌を作る上で一番大事なのは、永田先生が何度も書かれていたように、「全部を書かないこと」なのだろうと思いました。これは、自分の心の動きを全部説明しようとせずに、読み手に投げてしまうこと、もっと専門的に言うと、結句に落ちを付けないこと

          作歌のヒント(新版) 〜永田和宏

          詩のこころを読む 〜茨木のり子

          先日読売新聞で梯久美子さんが、 コロナの今読むべき本に茨木のり子さんの「詩のこころを読む」(岩波ジュニア新書)を薦めておられたので、読んでみました。 ジュニア新書だけあって、とても読みやすい本です。 十代の頃にこの本に出会っていたら、もっと思春期の孤独感から解放されていたかもしれないと思う。良書でした。 「生まれて」「恋唄」「生きるじたばた」「峠」「別れ」と、人が生まれて死ぬというライフサイクルに沿った章立てになっているのですが、それぞれの章で、その章のテーマの真理を端的に

          詩のこころを読む 〜茨木のり子

          短歌を再び

          数年前に自分も短歌を詠みたいと思い、始めてみようと思いたった時期がありました。 私にとって短歌は北原白秋に始まり、若山牧水、与謝野晶子と進み、 現代短歌では栗木京子さん、河野裕子さんに衝撃を受けました。 それぞれの歌人の代表作は、ここで紹介するまでもありませんが、、 君かへす 朝の舗石さくさくと   雪よ 林檎の香のごとくふれ(北原白秋) 観覧車回れよ回れ 思ひ出は      君には一日我には一生(栗木京子) こちらの下の句の読み方、「きみにはひとひ、われにはひとふ

          新しいシェアリングエコノミーとは?

           先日仕事で総務省主催のシェアリングエコノミー(共有経済)についてのセミナーを受けました。それがとても面白かったので、書いておこうと思います。  シェアリングエコノミーとは何かというと、空間や物を社会的にシェアしていく市場を指していて、具体的には近隣同士で車をシェアしたり、テレワークが進んで空いたスペースを社員以外の外部の第三者も含めてシェアしたり、居酒屋などが営業時間外の時間のお店のスペースを子ども会、ママ友の集まりに提供したりといった取組みがあるそうです。  もともと

          新しいシェアリングエコノミーとは?

          時間とは? 〜ミヒャエル・エンデ「モモ」より

           秋の連続ドラマ「35歳の少女」というドラマは、小学生の時交通事故にあった少女がずっと昏睡状態となり、35歳になった時に目覚めるというお話で、心は小学生のまま、身体だけが35歳の状態の主人公が色々な人々との交流を通して、精神的に大人になっていくと同時に、主人公の周囲の人間も忘れていた純粋さなどを取り戻していくというストーリーです。  さて、今回はこのドラマの中で、主人公が事故に遭う前に借りていた「モモ」という本について取り上げたいと思います。  「モモ」はドイツの児童文学

          時間とは? 〜ミヒャエル・エンデ「モモ」より

          犬嫌いは見抜かれる?!

           夕方になると少し涼しくなってきた昨今ですが、それで気付いたことといえば、夕方に犬の散歩をする人が盛夏の頃より増えたことです。通勤時バス停でバスを待っていると、ポテポテと歩く犬と、その犬に歩調を合わせる飼い主をよく見かけます。犬は暑さに弱いので、夕方涼しいとはいえ、へばってしまってペタッと地面に腹ばいになって動かなくなり、それでも犬をなんとか立たせようとリードを引っ張る飼い主の姿などを見ると、微笑ましく思います。  さて、過去バス停でバスを待つ私の元に、散歩中のワンちゃんが

          犬嫌いは見抜かれる?!

          占い 〜2021年版

           2020年ももう8月となり、残すところ4ヶ月ですね。  さて、早いもので、一部の雑誌やコンテンツでは2021年の運勢などを掲載し始めていますが、皆さんは占い、信じますか?  女性は特に占いが好きな人が多いかとは思いますが、占いには十二星座占いや血液型占いなど、基本的には人を何種類かのカテゴリーに分割して、カテゴリーごとに共通する特徴を挙げて納得させた上で、未来についての記述に関しても信頼性を上げていくという手法をとることが多いように思います。  一般的に人は、ある程度の

          占い 〜2021年版

          もしもタイムマシーンがあったら

           先日地上波で映画バックトゥーザフューチャーシリーズが放送されていました。もしもタイムマシーンがあったら、あなたは過去へ行きたいですか?それとも未来へ行きたいですか?  過去へ行きたいと答える人たちの理由は、だいたい「もう一度やり直したいことがあるから」というものでしょう。過去を変えて、現在の自分の状況を変えたい。人間は、後悔の無いように生きようと思っても、全く後悔をしない人生など存在しないので、こういった過去へ行きたい派の理由も、非常によくわかります。  では、未来へ行

          もしもタイムマシーンがあったら

          ソーシャル・ディスタンスが人間関係に与える影響

           新しい生活様式、特にソーシャル・ディスタンスという言葉が叫ばれるようになってきましたが、このことで人間関係が希薄になってしまうのではないかということを指摘する方々も出てきました。  先日作家の重松清さんが読売新聞への寄稿をされており、その中で新しい生活様式の中で小説が果たせる役割は何か、特にソーシャル・ディスタンスが必要とされる中で人間関係や家族関係の変化が生じていくにつれて、小説における人間関係の描写も当然変化していくことが予想されることを指摘されていました。  重松

          ソーシャル・ディスタンスが人間関係に与える影響

          過去の恥ずかしいエピソード 〜穂村弘

           他人に知られたくない、過去のとびっきり恥ずかしいエピソード。どんな人にも絶対あると思います。 読売新聞にて連載中の穂村弘さんのエッセイ「蛸足ノート」にもこうしたテーマが取り上げられていました。  穂村弘さんのとびっきり恥ずかしいエピソードは、小学生の頃、「時報」のアナウンスについて友達と会話した時のお話でした。  今はほとんど利用する方はいなくなってしまったかもしれませんが、電話で「117」番をコールすると、時報が流れます。チッチッチッという時を刻む音とともに女性の声

          過去の恥ずかしいエピソード 〜穂村弘