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女性に囲まれて育った私が「あのこは貴族」を観て思うこと


映画「あのこは貴族」を観賞しました。
※「あのこは貴族」のネタバレを含みます。

Netflixで観たのですが、リンクが上手くいかなかったので、プライムビデオにかかってます。

主人公の榛原華子(演:門脇麦)は開業医の三女で、実家は渋谷区の松濤。小学校からのエスカレーター式私立に通い、大学を卒業して、現在は27歳。交際していた恋人に振られたことをキッカケに婚活をすることになる。
そんな中で、慶應幼稚舎出身のエリート弁護士、青木幸一郎(演:高良健吾)と出会い、関係を進展させていく。
しかし、ふとしたことから彼と近い距離にいる女性の存在を知ることになる。
時岡美紀(演:水原希子)は富山の漁師町に生まれ、猛勉強した末に慶應義塾大学に入学するものの、金銭的な問題で夜の店で働くこととなり、最終的に大学は中退。
幸一郎とは大学時代に少しだけ顔を合わせたが、正式に関係を持ったのは中退後、美紀の働く夜の店に来店した後だった。
華子と幸一郎の関係は、穏やかに、しかし着実に溝を深めていく。
「あのこは貴族」あらすじ

上流階級である華子と、決して裕福でない美紀の間で揺れる幸一郎とか、
華子を取り巻く周りの環境とか、
ストーリーとして面白い展開は幾つもあったのだけど
私はこの映画を観て、心がスッとした。

女の敵は女ではないと、明言してくれたから。

作中で、華子と美紀の共通の友人である逸子(演:石橋静河)が二人を幸一郎のいない場で引き合わせるのだけど、そこで彼女が言うのです。

日本って、女を分断する価値観が
普通にまかり通ってるじゃないですか。
おばさんや独身女性を笑ったり
ママ友怖いってあおったり。
女同士で対立するようにしむけられるでしょ。
私そういうの嫌なんです。
ホントは女同士で叩き合ったり
自尊心をすり減らす必要ないじゃないですか。
「あのこは貴族」映画版/相良逸子の台詞

この言葉を聞いた時、
私は大きくゆっくり首を縦に振った。

海外ではどうなのかとか、
じゃあ男性は分断されていないのかとか、
そういうのは一旦置いておいて
私も逸子の言う通り、
「女の敵は女」とか「女って怖いよな〜」というノリが心底苦手で嫌いだ。

まだメンズエステで働く前、
当時付き合っていた彼氏が元カノと
こそこそ連絡を取り合っているのを知って
更に関係まで持とうとしていたのを知って怒った時
彼は「元カノは良い奴だから。会えばわかる」と言ってきた。
そして実際、会うことになったのだけど、
彼はその前日に衝撃の一言を私に言った。

「やっぱり女って怖いなあ」

え?
そもそも、あなたの不義がきっかけで、
あなたの提案で、あなたの元行われる会なのに?
自分の振る舞いは全て棚に上げて
「女が怖い」で片付けようとしてる??
元カノも私も、何も知らない上にあなたが勝手に撒いた種でしょう??

その一言を聞いた瞬間、
私はこの男の元カノと何がなんでも仲良くなってやろうと決めた。
し、今でも3ヶ月に1回食事する仲だ。
その男とは別れてから連絡も取ってなければ、興味もないけれど
元カノの方とは今でも仲良くしている。

中学時代、幼馴染の男の彼女が
幼馴染の男の隣の席の女を虐めたことがあった時も
周りの人たちは「女って怖いよね」と嘲笑っていた。

この社会には、たしかに、
「女が怖い」「女vs女」というシチュエーションをつくり、
それで解決しようとする人が一定存在する。
それは当事者のこともあれば、野次馬の男性のこともあるし、女性のこともある。
“そういう社会”なのである。

私がその考え方に心底共感できないのは
恐らく自分自身が女性に囲まれて育ち、
その空間に居心地の良さを感じ続けてきたからだと思う。

人が喧嘩していたり、口論している時に、
普通は双方の言い分を聞いて、悟し、場合によっては罰を与えると思う。
だけど、その作業はかなり疲れる。
そう言う時、もしもその性別が双方女性だったら
「女って怖いよね」で、その作業を割愛することができる。

女は怖くないよ。男と一緒だよ。
仮に女が怖いなら、男も怖いよ。

女にしか存在しない感情なんて、この世にはないよ。
男にしか存在しない感情なんて、この世にもないのと同じ。

性別を思考停止の理由に使ってはいけないし、
問題解決の手段に使ってはいけない。
「男は強くなければ」とか「女は怖い」とか、そんな根も歯もない謎理論に現代人が振り回されるべきじゃない。

ラスト、華子は幸一郎と離婚して逸子のマネージャーとして働いている。
経済的にも精神的にも、自立したという表現に“離婚”を使うのが皮肉に思える。

華子は誰かに頼ることをやめて、男を頼ることをやめて、
一人で友人の人生をサポートする職を選ぶのである。

女性の人生に必ずしも男性は必要ないし、
もちろん、いてもいいし、
“女”と性で括ることの無意味さを
この映画を通して改めて感じることができた。


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