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夫が薬を飲みません~高齢者の拒薬や自己中断~

「家族が薬を飲んでくれない」と、高齢者家族に薬の内服を拒否され、お悩みではありませんか?お薬の拒否は、認知症を抱えていない方でも起こる場合があります。この記事では、薬を内服したくないという思いが発生する理由と、薬を飲まないことによるリスクについてまとめています。

高齢者が薬を拒否・自己中断する理由とは

高齢者が薬の内服を拒否することや、自己中断する理由(=拒薬/きょやく、以下拒薬と記載)はどのような点にあるのでしょうか。

まず、認知症を抱えている場合や、精神疾患などの既往がある方については、多くの原因が重なって潜んでいる、と考えることができます。
認知症を抱えていると、「薬が自身の健康を維持するのに、大切なものである」といった判断ができないケースがあります。
また、精神疾患の場合や、認知症のタイプによっては、薬に対し、不安や妄想を抱えていることも、あるかもしれません。
例えば、食後に薬を渡されても毒を渡されたと妄想を抱いていたり、何のために飲む薬かを、理解できずにいる場合です。
他には、飲み込みの機能(=嚥下機能/えんげきのう)が低下しており、薬を内服することができなかったと言うこともあります。
また、薬というものが理解できず、吐き出してしまうこともあります。介護者からみれば、薬を口から出している場面を見る=拒薬していると捉えてしまうかもしれませんが、このような身体的な理由も、存在することがあります。

では、認知症を抱えていなくとも、拒薬や自己中断をされる場合には、どのような理由が存在するのでしょうか。
もっとも多いのは、内服している薬に対して、重要性を理解していないことが挙げられます。
また、薬の副作用を恐れるあまり内服をしない方もいます。
その場合、薬を内服しないことで、新たな病気を抱えることとなり、本来は自分にとって必要な薬であったと気づく方も少なくないようです。
また、薬を内服する習慣を、面倒だと感じ、放置してしまうことから、薬の自己中断が始まります。
他にも年を重ねることで自己のこだわりが強くなり、内服を中断するといったケースもあります。

薬内服の拒否や自己中断によって起こるリスク

内服の拒否や自己中断をすることは、医師の指示に沿った正しい薬の内服ができていないということです。
その場合、どのようなリスクが起こり得るのでしょうか。治療の内容や薬の内容についても異なってくることを踏まえながら、次に紹介していきます。

血圧を下げる薬(降圧剤)の場合
⇒血圧の数値を下げる薬は、一日の中で、血圧が挙がり易い時間帯等を考え、薬を内服する時間を医師が判断します。
薬を内服することで、血液中における薬の濃度が安定し、血圧の数値をコントロールすることができます。
しかし、拒薬や薬を中断することで、血圧が高い状態がつづいてしまい、血管に負担をかけることがあります。
また、血圧の数値に大きなバラつきがでてしまい、ふらつき、頭痛症状などを起こすことがあります。

病気の症状をコントロールする薬の場合
⇒喘息やてんかんなど、薬を使用しないことで、発作の症状がでやすくなってしまうことがあります。
内服をやめて直ぐに症状が出なかったとしても、長期的に管理が必要な薬もあります。
ある日突然発作症状が起き、命に関わることもあります。

治療段階に合わせ、薬の投与量が変化する薬の場合
⇒禁煙治療に必要な薬や認知症の薬は、治療の段階や症状に合わせ、副作用の発症を軽度にしたり、身体への負担がかかりすぎないように、薬の投与量を変化させていきます。
そのため、突然内服をやめてしまうことで、禁煙治療の薬であれば、治療を継続することができなくなったり、認知症の薬であれば、症状の進行を遅らせることができなくなってしまう場合があります。

副作用を抑える薬の場合
⇒病気や症状を軽快させたり、抑えるために薬を内服しますが、薬を内服することで副作用が生じることもあります。
そのために、副作用を軽減や予防するための薬をあわせて飲むことがあります。
病気や症状に直接影響がないからと、自己判断で、内服を中断した場合、強い副作用症状がでてしまい、もともと必要としていた治療ができなくなってしまうケースがあります。
万が一副作用がでても、国の救済制度の対象から外れてしまいます(*1)

家族が薬を拒否・自己中断をした場合の対策は?

薬を内服しないことによるデメリットを先にご紹介しましたが、実際、高齢の家族が薬を拒否、自己中断するばあいは、どのような対策があるのでしょうか

①薬の必要性や、医師からの指示であることを説明する
認知症を抱えている方に対しての対策になりますが、薬の内服が医師の指示であることや、処方薬の説明書を手元に置いておき、薬の必要性を根拠を持って説明します。
理由なく内服を勧めるより、納得される可能性があがるケースも見受けられます。

②何故内服しないのか確認し、再度医師に必要性を説明してもらう
薬を内服しないのには、本人になにか理由が存在するのかもしれません。
高齢家族本人が、薬を内服しない、思いを聞きましょう。
その上で、再度薬を内服しないことにより起こる、メリットとデメリットを、本人同席してもらい、確認しましょう。

③薬の量や投与方法を変更してらもう
たくさんの薬を目の前にすることで、内服する意志がそがれてしまうこともあります。
主治医に、本当に必要な薬のみに絞ってもらい、内服する薬の種類の量を減らすのが良い場合があります。

まとめ

高齢者による薬の拒否は、認知症を抱えていたり、精神疾患などの既往がある方に多く、薬の重要性が理解できていなかったり、薬に対し毒であるといった妄想を抱いていることから起こる場合があります。
このように薬を拒否、自己中断することで、続けて治療ができないばかりか、病気を悪化させたり、他の病気を引き起こすことがあります。
介護者家族は、薬を拒否、自己中断される高齢者本人の気持ちを確認し、根拠を持って薬を内服してもらえないか働きかけることが、問題解決につながることがあります。




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