見出し画像

『シティガール未満』を読むために新宿に行った話

近頃花粉がひどいとみんなが言う。
僕は元来鼻炎持ちで、急な気温の変化はもちろん、気圧によって、飲酒によって、埃によってすぐに鼻水が鼻のキャパを超える。(飛行機の離着陸のときなんか目の奥が痛くなって鼻もぐずぐずになって毎回しんどい思いをしている)
しかし、そんな僕が花粉症からのダメージをまったく受けてない。数年前までは毎年花粉に苦しめられていたのに。そんなはずはないと思うけど、どうやら治ったみたいだ。もちろん治療はしていない。鼻の粘膜を焼き焦がすような治療が有効だと聞くが、知らないうちに僕の鼻の粘膜は焼け焦げてしまったのだろうか。焼け焦げたのが鼻だけだと良いんだけど。その他の粘膜は無事だろうか。

今日こそはと献本頂いていた『シティガール未満』(絶対に終電を逃さない女)を読むため意気込み、あえて新宿のルノアールに向かう。最初は調布の小綺麗なカフェで読もうと思ったのだけど、序盤を読んで思い立つ。これは新宿のルノアールで読みたい、と。

この世界にいる誰かには必ず受け取ってもらえることをどこかで確信している独り言のような言葉が綴られる。自らの恥部に丁寧に向き合い、言語化し、思い通りにならない現実の中に希望を発見する勇気を教えてもらえた。後ろ向きになりがちだけどちゃんと前に進むための尊い作法をやってみせてくれる。

どうしても新宿のルノアールで撮りたかった

細かな観察と洞察があるからこそ、記憶の引き出しを開けてみることが得意で、たびたび中身を丁寧に整理することまでできる、絶対に終電を逃さない女さんはそういう素敵な方なんだろうな。

かく言う僕はそれらがものすごく苦手だけど、その行為がこんなにもラブとジョイに溢れてるなら克服したいって思った。みんなが思うラブとジョイとは少し違うかもしれないけど、こんなふうに世界への目配せをすると、生活はきっと愛と喜びに溢れるのだと知る。

本当は僕も「自分はこんなにダメな人間なんです」ってサラッと品よく言える大人になりたかったけど、いかんせん品が足りないから言えないんだよな。

この本を読んでいるうちに格好悪さへの憧れが育って、できる気がしてきてる。ここは東京なんだから、田舎者らしくシティボーイ未満に生きてみたい。

そんなことを考えていたら知らず知らずのうちに鼻がむずむずしてきた。ルノアールの喫煙室から漏れてくる煙のせいだろうか。そういえば、煙草を辞めて3年が経ったんだな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?