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新型コロナウィルス禍における生活

「ちゃんと玄関で消毒してくれたよね」

「もしかしてもう感染してたらどうしよう」

「どっちかが罹ったら、濃厚接触者になるね」

 これが最近よくある会話だ。新型コロナウィルス禍の緊急事態宣言の下、ほぼ常時介護が必要な重度の肢体不自由者である私が、どのような暮らしをしているか紹介すると同時に、「もし自分が感染したら」ということに踏み込んで論じたい。。

 外出は週1回だ。近くに住む親族か、親しい友人と散歩をする。ちょっと暖かくなってきたので、公園でパンやおにぎりを一緒に食べることもある。
 毎年検査で行く病院は延期し、週3回の訪問医療のマッサージはお願いするのをやめた。そして公営プールが閉館しているので楽しみにしている週2回の水中ウォーキングも行っていない。
 仕事で外出することはない。訪問する用事はほぼ延期している。打ち合わせは、ズームやライン、スカイプを使ってテレビ会議で済ませる。5人の職員についてはテレワーク、時差出勤、休日の振り替えをしている。幸いにして繁忙期ではないので、それが可能だ。ただ、うちの事業はイベント主催なので、もしこの時期予定していたら、そもそもイベント自体が中止や延期になるところだ。
 とはいえ法人の管理業務、ネットにおけるプロジェクトの立ち上がりなどがあり、パソコンを使った仕事は結構あり、それなりに忙しい。最近始めたNoteに記事をアップするのにもかなり時間がとられる。
 ちなみに普段の私は、毎日複数の外部の人々とお会いし、1日おきに外出し、毎月地方出張にでかけ、ほぼ毎年海外に出張するほどアクティブだ。

 私の生活への影響が他の人と大きく違うことは、常時身の回りで介護をするパーソナルアシスタントがいるところだ。ここでパーソナルアシスタントについてだが、あくまで補助者であり、決定するのは障がい者本人という考え方のもと、先進国ではこう呼ぶ。
 彼らは、私の洗面やトイレ、入浴といった身体介助、調理や洗濯、掃除といった家事援助、また外出の付添いなど日常生活全般の補助をする。
通常、7人のローテーションで回しているが、新型コロナウィルス禍の中(2020年4月)、1人は軽微な風邪の症状があり、欠勤中だ。もう1人は、通勤中の感染が不安だからという理由で休職している。

 言うまでもなく、パーソナルアシスタントが感染しているかは、最大の関心事である。彼らが知らないうちに感染して、私の介護をすればいわゆる濃厚接触者となり、私への感染の可能性が非常に高い。もちろんその逆もそうだろう。
 よって、まずは私も彼らも感染しないこと、そして彼らが感染しても私や他のパーソナルアシスタントに感染させないことが、重要である。
 そこで、事前に何らかの症状がある場合は申告してもらい、咳やのどが痛いなど何らかの症状があれば、出勤は控えてもらうことにしている。
 出勤時には、除菌や手洗い、マスク着用についていつも以上に、メールや張り紙も含めてお願いしている。勤務中の雑談の中で、体調や移動の状況をつかんでおくのも、重要なことだ。

 前述の欠勤や休職によって、残り5人の負担が少しずつ増えてきている。あと1人何らかの理由で出勤できなくなると、ローテーションができなくなり困る状況だ。ただ新たな求人は、不特定多数の人々と面接することになるので避けたい。なかなか状況は厳しい。
 在宅の関係者に話をきくと在宅の介護の現場は、普段から人手不足のところが多くよく似た状況にあるようだ。施設の介護の現場もそうであるらしい。

 さてここで、もし自分のような介護が常時必要な人の感染が疑われたらどうなるのか。
 まず、感染者と「濃厚接触が疑われる」状況になった場合、普通であれば自宅やホテルで隔離して経過観察を行う。それでは私たちの場合どうなるのか。
 国によれば、普段よりも多くの留意はしつつも、「(中略)、保健所と相談し、生活に必要 なサービスを確保する。」*1とある。基本的には、パーソナルアシスタントは介護を自宅で続けることになっている。発熱などがあり「感染が疑われる」状況については、国の「事務連絡」文書には記載がない。現実にはこれら状況は不明確かつ不安定なので、自分が感染したと思ったら、広めたくないのでできる限り早い時点で彼らによる介護はやめてもらうと思う。
 さて国によれば、いよいよ感染が確認されると、パーソナルアシスタントは介護を行わないことになっている。その先は、医療関係者が介護も含めた治療を担うことになるということだ。現実的には、感染が確認されなくてももっと早い段階で、症状の悪化があれば、慣れているパーソナルアシスタントによる介護はあきらめ、入院することになると考えるのが普通だ。
 ちなみにパーソナルアシスタントによる介護は、看護師のような専門性の強い人よりも、その人に特化しているので効率がよく、言われたとおりに細かくやるので快適であることを付け加えたい。

 いずれにしても、現在のように感染症が蔓延すると、私たちのような常時介護が必要な者は非常に脆弱な立場になる。まず、複数のパーソナルアシスタントとの接触は致し方ないので、感染率は高い。基礎疾患がある人が多いので重症化しやすい。また、パーソナルアシスタントの確保が困難になり、自身が感染した可能性があれば早めに入院し不便な思いをせざるを得ない。

 以上、敢えて自分、すなわち常時介護が必要な障がい者の目線で述べた。実際に感染となれば、一般の人と比べて家族やパーソナルアシスタントなどを含めずっと多くの人々から多大なの支援が必要なのは間違いない。

 私たちだけではない世の中にはいろいろな立場の人がいる。不急、不要の外出、人との接触を控えるというのはいかがだろうか。

※1 厚生労働省「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(令和2年3月6日付事務連絡)」

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