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【1日1冊】クリエイティブな組織をどう作るのか?/ピクサー流 創造するちから(著)エド・キャットムル

こんにちは。

本日は、「ピクサー流 創造するちから(著)エド・キャットムル」の紹介です。

この本は、ピクサーという会社が、クリエイティブな組織であり続けるために、どういうことを実施していったのかを、ピクサーの歴史と共に説明されています。「トイ・ストーリー」シリーズや「モンスターズインク」「カールじいさんの空飛ぶ家」「Mr.インクレディブル」「カーズ」、、など、数々のピクサー映画に関わるエピソードと共に紹介されるため、組織論の面白さ以上に裏話的に楽しく読めてしまう本でした。

テーマ:クリエイティブな組織をどう作るのか?

同じくアニメ映画の制作会社で、ジブリの宮崎駿監督と高畑勲監督についての本「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」を読みましたが、ジブリは、組織というよりは、「宮崎駿」という天才のための組織だったと言えます。立ち上げの経緯としても、宮崎駿監督の作品を撮るために用意された会社でした。

ジブリの作品作りは、完璧主義により組織をガタガタにするとあります。宮崎駿監督の作品を作るとスタッフが辞めてしまうということが実際に起きています。また若い監督をうまく育成できていませんでした。

一方、ピクサーは、ジョン・ラセターという監督のイメージが強いですが、モンスターズインク「ピート・ドクター」、ファインディング・ニモ「アンドリュー・スタントン」、Mr.インクレディブル「ブラッド・バード」など、他の監督でも大きく成功している作品が多くあります。

また著者は、ディズニーへの買収後に、アニメ映画が不調であったディズニー・アニメーションを見事に復活させています。これはピクサーでの経験をもとにクリエイティブな組織をディズニー・アニメーションでも再現できたからだといえると思います。

いくつか気になったポイントを紹介します。

いいアイデアといいスタッフ、どちらが大切か

「トイ・ストーリー2」の事例をもとに、同じストーリーだったが、手直し前と後では、まったく作品がかわったとあります。一方は面白みがなく、一方は"心底感動的"とあります。ここでは、「優秀な人材」と「効果的な連携のできるチーム」を用意することがクリエイティブなものづくりには、重要な原則になるとあります。

ここで、「良いスタッフ」を優先させるというのに、2つの話があります。

ひとつは、社員が長く働けるような組織文化を作っていくことになります。トイ・ストーリー2では、手直しをするために、締め切りまでの6ヶ月間は週7日深夜までスタッフが働いてなんとか完成させました。当然スタッフは疲労困憊です。ピクサーは、仕事を続けていくためには、会社が社員に対して健康的な習慣であり、仕事以外にも充実した生活を過ごせるように配慮する必要があるあり、社員が仕事と生活を両立できるように支援できるように徹底していきます。

もうひとつは、この手直し前のときの監督を交代させています。本書では、少なからず監督交代の話がでてきます。つまり、優秀でない人材、効果的な連携のできない人材は、退出してもらっています。

これは、「良いスタッフ」というのは、与えられた役割をこなせる必要があり、そこに答えられない場合は、適切に処理されるということです。

「人」を大切にする。というのは、決して、人を大切に扱うだけではなく、厳しく対処する必要もあるということを表していると思いました。

アイデアをきちんとかたちにするには、第一にいいチームを用意する必要がある、優秀な人材が必要だと言うのは簡単だし、実際に必要なのだが、本当に重要なのはそうした人同士の相互作用だ。どんなに頭のいい人たちでも相性が悪ければ無能なチームになる。したがって、チームを構成する個人の才能ではなく、チームとしてのパフォーマンスに注目したほうがいい

Ed Catmull,Amy Wallace. ピクサー流 創造するちから (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1517-1520). Kindle 版.

ブレイントラスト

ブレイントラストとは、ピクサーで行われている制作中の作品を評価するための仕組みです。ここでは、制作中の作品の課題について率直に意見をいいあう場です。

このブレイントラストは、いわゆるフィードバックということだと思うのですが、、それとは違う点を2つ著者はあげている

まずひとつは、ブレイントラストのメンバーは、様々な立場のスタッフが加わるようだが、「物語を語る才能」があるというのが参加条件だったようです。(これは、監督や脚本家などが参加しているとあります)

もうひとつは、ブレイントラストには権限がないことです。これは、つまり経営会議やプロダクト承認会議といった決裁をされる場ではないということです。ただここでの指摘については、作品に何らかの課題があるということになるため、指摘を受けた監督は対処する必要があります。しかし、対処の方法については、その指摘どおりの対処である必要はありません。(指摘内容が外れている場合は、別の部分を修正し、結果作品の品質が上がれば問題ありません)

このブレイントラストに参加する人たちは、「物語を語る才能」がある人とありますが、実際には、ジョン・ラセターや他の監督たちになります。つまり、ピクサーの経営陣・中心人物です。このメンバーからのフィードバックに権限を与えずに、適切に対処できるようにするというのは非常に難しいと思います。

大勢の人を数カ月に一度集め、率直な話し合いをするだけで自動的に会社の病が治ると思うのはまちがいだ。第一に、どんな集団でも一定の信頼関係を築き、本当に率直に話せるようになり、反撃を恐れずに危惧や批判を表明できるようになり、グッド・ノートの言葉遣いを覚えるまでには時間がかかる。第二に、どんなに経験豊富なブレイントラストでも、その基本理念を理解していない人、批評を攻撃と受け取る人、フィードバックを咀嚼しリセットしてやり直す能力のない人を助けることはできない。第三に、後の章で取り上げるが、ブレイントラストは時とともに進化する。一度設置したら後は放ったらかしでいいというものではない。優秀で寛大なメンバーを揃えたとしても、問題はいくらでも起こり得る。メンバー間、部門間の力学も変化する。だからブレイントラストを機能させるには、目を光らせ、必要な調整をしながら守り続けるしかない

Ed Catmull,Amy Wallace. ピクサー流 創造するちから (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2036-2044). Kindle 版.

組織論

クリエイティブな制作をしている組織において、参考になると思います。
また監督やプロデューサー、プロダクトマネジャーと呼ばれる人たちをどう育てるかは、成長した企業ではよくテーマになりますが、ジブリ型・ピクサー型として紹介すると良いかもしれません。

ジブリ型組織論
・突出した天才を活かす組織
 - 天才中心の組織
 - 天才にメンバーを育成は考えさせない
 - すべての作品に天才が関与する(マイクロマネジメント)
 - 天才候補生を採用する必要がない
ピクサー型組織論
・天才を育成する組織
 - 天才(秀才)が出現しやすい組織
 - 天才がメンバーへ適切にフィードバックできる環境を用意する
 - 天才はメンバーへフィードバックはするが、指示はしない
 - 天才候補を採用し、なれない人は退出させる

本日のメモ

他にも紹介したいポイントがたくさんあります。ちょっとボリュームがありますが、コンテンツ制作に関わる人や、クリエイティブな組織作りをされる人にはおすすめです。

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