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アラーキーのこと

まずはじめに、エッチいおじさん写真家、と思っていたことを謝りたい。
御年81歳、おじさん、ではなく、おじいちゃんだが、
ただのエッチいおじいちゃん写真家、じゃない。
「人妻エロス」なんて写真もあるのは事実ではあるが、それはさておき…
私のイメージをくつがえした写真集が
「センチメンタルな旅 冬の旅」である。
亡き妻、陽子さんとの新婚旅行を撮ったセンチメンタルな旅、
陽子さんの死の前後を撮った冬の旅、
二部構成になっている。

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切ない
けれど
愛おしい
生と死へのまなざし
私の心をとらえて離さない
何度も何度も何度も…
何度繰り返し見ただろうか

アラーキーはエッチい写真家、ではなく
愛してやまない写真家になった。

写真もさることながら、その語りも魅力的である。
ダジャレ好きなアラーキー、語りの端々に愛とユーモアが満ちている。
ふざけていると思いきや、サラッと本質をついた言葉を言う。
このバランスが絶妙で、遊び心の為せる技なんだろうなと思う。

「生きていることが記録なんだよ。」

撮ることが生の記録、ならば
書くことも生の記録、か…
毎日の看護記録はその人の生の記録でもあったんだなぁとふと思う。
変わりなければ「著変なし」
正直変わりないのなら記録しなくてもいいんじゃないか、などと怠慢極まりないことを思ったこともある。
…人間だもの。
遠い記憶がよみがえる。
夜勤明け、申し送りが終わっても記録という仕事が待っている。
パソコンの前に座ると睡魔に襲われ、記録はまったく進まない。
眠気覚ましのコーヒーなんて全く効かない。
必要なのはカフェインではなく睡眠だ。
こっくりしながらヒドイ数値を入力している。

血圧67/58  ??
走り書きのメモには
6.7  97/58   62  98

正しくは
体温 36.7℃
血圧 97/58
脈拍 62回
酸素飽和度 98%

変わりがないことはいいこと、である。
ひとたび急変したら一言では済まない時系列の膨大な記録を書かねばならない。
だから、変わりないことを証明するために「変わりなし」という記録を残さなければならない。
それが生きているという証でもあるから。


「あー、生きていきたいね。写真とっていきたいね。」

いきたい、
行きたい、
生きたい、
逝きたい、

アラーキーの言葉、
まだまだ聞きたい、
アラーキーの写真、
まだまだ見たい、
またまだ、生きている証、見せてほしい。

センチメンタルな旅、冬の旅は、私の中でまだまだ続いていく。
ページをめくれば旅が始まる。
めくる度に繰り返される旅。
そして、また、アラーキーについて語ると思う。
また、アラーキーのこと、
なんて調子で。 

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