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皆川博子で世界旅行・時間旅行

まえがき:
小中高と世界史が苦手だった。
物覚えの悪さ、意欲の低さ、想像力の貧困など、思い当たる理由はある。止むを得ない。
教科書よりもファミコン、スーファミ、漫画、アニメのほうに真実味を覚えていたのだから、仕方ない。
二十歳を越えてから皆川博子を読み、大ファンになった。
幻想文学の文脈から知ったという経緯もあり、主に少女や女性が、過酷な現実を前に、喘いだり、まなじりを決したりする短編群を愛してきた。
文体に惚れたということもある。
が、皆川博子の作風の裾野は広い。
「死の泉」以後、あちゃー世界史の知識全然足りんわーと若き日の自分を恨みながら、分からないながらも小説の持つ大渦のような力に巻き込まれて陶酔し……学び直しなどできないまま、手あたり次第読み散らかし……。
あんなに勉強だけすればよかった期間に、正史を軽んじ、ポップカルチャーが提供してきた偽史ばかりに溺れていたのは勿体なかったな、と今更悔やむ。
このへんでちょっくら自分のために復習してみようと思った。
「中年のための世界史」は昨今の出版界の流行だと思うが、歴史を通じて現代を見通したいわけでもなく、ビジネスに活かしたいわけでもない。
ただ皆川博子の筆に乗って、想像理に時間や空間を旅行してみたいだけだ。

方針:
過去の読書ノート、新たに再読、ネット上の記事を精選した上で、18作品をピックアップ。
とき、ところ、こと、ひと、という項目を設けて、つらつら書きながら、思い返してみた。
……ここで目的は大半果たしているのだが、折角なので形にしてみる。
事、人、は(特に登場人物の思い入れもあって)かなり長くなってしまったので、時、所、だけに刈り込んだ。
それを列挙してみた上で、世界地図にマッピングしてみた。
全著作を所有しているわけでもないし、短編は反映させていない、誤認もありそうだし、画像加工の技術も皆無だが、個人の備忘録ゆえご寛恕いただきたい。

・・・・・

「光の廃墟」1978
時:1965年(建国約20年後)
所:イスラエルのテル・アヴィヴ

「彼方の微笑」1980 ※未所持 
時:ー
所:イタリア

「死の泉」1997
時:WWⅡ末期/1960年
所:ドイツ

「碧玉紀(エメラルド)」1999-2000 ※単行本未刊行
時:1944年/遠未来/1100年代/1930・1970年代/ペスト禍の中世
所:フランス/南米の神聖ゲルマニア帝国/北欧から南仏/ドイツ/ドイツ

「冬の旅人」2002
時:1880~1917年
所:帝政ロシア

「総統の子ら」2003
時:1934年/1938年/1942年~終戦後
所:ドイツ/オーストリア/フランス

「薔薇密室」2004
時:1914年WWⅠ~WWⅡ~1947年
所:ドイツ/ポーランドのワルシャワ

「伯林蝋人形館」2006
時:1920年代
所:ドイツ通称ヴァイマール共和国(1919-1933)の、ベルリン、ミュンヘン

「聖餐城」2007
時:1600年代前半~1648年(ウェストファリア条約)
所:ドイツ当時は神聖ローマ帝国/領邦のボヘミア王国

「開かせていただき光栄です」2011 ※三部作
時:1770年
所:イギリスのロンドン

「双頭のバビロン」2012
時:1892~1930年
所:オーストリアのウィーン/アメリカのハリウッド/中国の上海

「少年十字軍」2013
時:1212年頃
所:北フランス

「海賊女王」2013
時:1500年代後半
所:アイルランド/イングランド

「アルモニカ・ディアボリカ」2013 ※三部作
時:1775年
所:イギリスのロンドン/オックスフォード

「クロコダイル路地」2016
時:1788年~1800年代初頭
所:フランスのナント/イギリスのロンドン。

「U(ウー)」2017
時:1915年/1613年
所:ドイツ(プロイセン)/オスマン帝国

「インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー」2021 ※三部作
時:1700年代後半
所:新大陸アメリカ

「風配図 Windrose」 ※連載中
時:中世後期~
所:スウェーデンのゴットランド島/ドイツのリューベック/ロシアのノヴゴロド

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あとがき:
覚え書き、地図、これだけで小一時間楽しめる。
我ながらいいまとめができたが、それもすべて皆川博子のおかげ。
こいねがわくは「碧玉紀(エメラルド)」の単行本化が果たされんことを!

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