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【能】海人

 2023年7月23日(日)、国立能楽堂で能の『海人あま』を鑑賞してきました。シテは、金春流の能楽師・中村昌弘さんでした。以下、メモを残します。

■『海人』の簡単なあらすじ(最後まで書いています)

 幼いころに母を亡くした藤原房前は、その母の追善のため讃岐の国志度の浦房前の地へ向かう。そこで出会った海人は房前の出生を語る。房前の父である淡海公・藤原不比等は海底に沈んでしまった宝珠を取り戻すべく、この地の海人と契り、その女との間にできた子を世継ぎにすると約束した。海人は自らの命と引き換えに宝珠を取り戻したと物語るが、その女こそ房前の母の幽霊であった。
 房前が法要を営むと、母は竜女の姿となって現れ、有り難いお経に喜び成仏したのだった。

配布されていたチラシより

■海人はどんな女性か
(1)国語辞典より
 記載するまでもないかもしれませんが、辞書を引いてみました。

(海人・海女・海士とは)海にもぐって貝類や海藻を採るのを業とする女性。古くは女性に限らず、漁師一般をも指した。

小学館・現代国語例解辞典より

(2)古代・中世の中央と地方、海人のイメージ
 話が少しそれますが、『源氏物語』でも「須磨」「明石」の巻があります。どういったイメージで描かれているのでしょうか。私は、子供の頃に児童版を読んだぐらいであまり正確に書けず、本当に恐縮です。
 海辺のイメージがあります。そして、都との対比で、うらぶれてはいるものの、都より元気な(生命力がある)イメージ、というところでしょうか。

 話を戻しまして、今回の能『海女』の流儀横断事前講座で、(たしか)「海人は意思の強い女性で男性的」と仰っていているのを伺って、シテである海人のイメージ(骨格)が、ある程度掴めたような気がしました。
 我が子を慈しむ母性愛もありますが、それに付随して、子の立身出世を願う力強さを感じます。

■能『海人』のメモ・感想
(1)見どころ
 見どころは、大変多い曲です。
・藤原房前は「子方」(子ども)が演ずることが多いようです。
・前場の「玉之段」
・竜女となった後場の舞
など。

(2)感想
 前場の「玉之段」は具体的な動作が多く、舞台に目が惹きつけられました。一部だけ詞章より抜粋します。

かねてたくみし事なれば、持ちたる剣をとりなおし、乳の下をかききり玉をおしこめ、剣をすててぞふしたりける。

『海人』の詞章より

 後シテの装束はオレンジで(私が抱いていた竜のイメージの緑とはまた違って)、とても華やかでした。母が命を落とすという重たいテーマですが、後場は明るい感じで、子どもに見送られるのは親として嬉しいものなのかな、と思ったりしました。

■その他・その他の曲
 仕舞の「初雪」「西王母」「江口」、独調の「玉之段」、狂言の「泣尼」がありました。私はまだまだ初心者で、仕舞や独調の見どころ、聴きどころなど分からない点もありますので、こつこつ学んでいきたいと思います。
 狂言の「泣尼」は、ウトウトしがちな私にはとても面白かったです。

 本日は以上です。

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