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【読書】更科日記(ストーリーで楽しむ日本の古典)

2023年1月18日(水)、岩崎書店の「ストーリーで楽しむ日本の古典」シリーズの1冊である『更科日記』を読み終わりました。
以下、簡単なメモです。

■『更科日記』について

(1)作品について

・平安時代中期の作品。
・作者は菅原孝標女。菅原道真の子孫であり、母親の異母姉(つまり伯母)が藤原道綱母である。
・藤原定家の写本が、京都御所内にある東山御文庫に残されていた。その写本は誤って綴じられていたが、大正時代に、歌人で国文学者の佐々木信綱と、国文学者の玉井幸助によって整理された。

(2)あらすじ・構成について

・作者が晩年になって、若い時から何十年におよぶ出来事を書いた回想録。
・5部構成。濱野京子さんがアレンジした岩崎書店の本では、以下のとおり三章に分かれていました。
 第一章 都までの旅(原作の第1部)
 第二章 都での日々(原作の第2部)
 第三部 世間とかかわる中で(原作の第3部〜第5部)

■メモと感想

(1)「物語」への憧れ

 日記の出だし、主人公は、上総の国(現在の千葉県)にいるのですが、京の都に帰って『源氏物語』などの物語を読みたいと願う思いや、京の都に戻ってから物語を読み耽る場面など、文学作品が好きな私は相通じるものがあり、大変興味深く読みました。
 本来なら原文を引用すべきなのですが、ここでは濱野さんが書かれた文章を引用してみます。いつか、角川ソフィア文庫ででも読んでみたいです。

「どうか早く都にもどれますように。そして、この世にある、ありとあらゆる物語を読めますように」
と、ひたすら仏様にお祈りしたのでした。

16ページより

 部屋の中にひとり籠もり、几帳の内側で腹ばいになって、箱の中から、一巻一巻を取り出す時の気持ちといったら、
――もう皇后様の位だって、何だというの?
と思うぐらいでした。
 昼は一日中、夜は目が覚めているかぎり、灯で近くを照らして読みふけっていました。ほかのことは、何もしません。

P103より

(2)「旅」への憧れ

 前半の上総の国から京都までの道のり、後半に出て来る物詣の話など、旅の話が多く出てきます。地名が出て来るたび、私もインターネット等で調べながら読みました。また、その土地の描写が素晴らしい部分があったり、歌が詠まれていたり、当時の人々の暮らしが分かる部分があったりしました。こちらも、いつか原典を読んでみたいと思います。

(3)「信心」について

 若い頃は、仏様にお参りすることにあまり熱心ではなかった作者ですが、後半、結婚後は仏様の話が多く出てきます。しかも、夫・橘俊通を亡くした後、己の境遇を嘆きながら、若い頃に物語ばかり読みふけっていたことを後悔するような記載もあるようです。
 さて、この点についてですが、私は、自分の人生を振り返る回想録において、仏様への信心の観点から筋を通すという、作者の力量を感じました。

(4)その他面白いと思った点

・(三蹟としても有名な)藤原行成の娘である姫君が亡くなったあと、猫に生まれ変わった話
・『源氏物語』や『伊勢物語』以外の『とほぎみ』『せりかは』『しらら』
『あさうづ』などの物語
・藤原定家によると、『みつのはままつ(浜松中納言物語)』『みつからくゆる』『あさくら』の作者は、菅原孝標女。
・源資通と春秋の優劣を語る場面
・『更科日記』のタイトルの由来。姨捨山は信濃(長野県)の更科にある。
 「月も出でで 闇に暮れたる 姨捨に なにとて今宵 たづね来つらむ」
 
以上です。


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