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【文楽】菅原伝授手習鑑など

 2023年5月、国立劇場(小劇場)に、文楽『菅原伝授手習鑑』を観に行きました。文楽に関することを含め、メモを残したいと思います。
 なお、今回は、初段と二段目の上演でした。(三段目以降は、9月頃の初代国立劇場での最後の文楽公演で上演されるようです。)

■簡単なあらすじなど
 あらすじも自分の言葉で書いてみようと思ったのですが、プログラムにズバリと書かれてあったような気がしたので、引用してみます。

讒言により大宰府へ配流となった右大臣菅原道真(菅丞相)の悲劇に、丞相の徳を慕って恩に報いようとする三つ子の兄弟の物語を絡めた大作

公演プログラムより

 この三つ子の兄弟は、梅王丸・松王丸・桜丸と言います。背格好と着ている服は同じですが、性格は全く異なるという設定です。そのため、人形の「かしら」が変わってきます。以下のようになっていました。

・梅王丸 → 検非違使(きりっとした印象)
・松王丸 → 文七(男性的でワイルドな印象)
・桜丸 → 若男(素直で優しそうな印象)
※()内は、私が感じた印象です。

 公演プログラムには、毎回、「かしらのいろいろ」という「かしら」の写真が載っている頁があるのですが、今回、何と三兄弟のかしらは載っていませんでした!
 三兄弟を載せると3枠埋まってしまいますし、他にも面白い登場人物がいることもあるからのように思います。しかし、この三つ子の例は、性格によって人形の「かしら」が変わってくることを説明するうえで、面白い材料のように思いました。

 3枚写真を撮ってきてアップ出来ればよかったのですが、出来なかったので、「文化デジタルライブラリー」のリンクを貼らせて頂きます。各かしらの写真もあります。

■演目についてのメモと感想(ネタバレあり)
 初段と二段目は、菅丞相が大宰府に流されるまでの経緯と別れが描かれます。私は、少し眠ってしまった部分もあったのですが、床本を目で追うことにあまり気をとられないようにしつつ、鑑賞しました。
 特に、苅屋姫の実家の悲劇が描かれる二段目を楽しみに(※語弊がありますが)していたので、イヤホンガイドを借りました。解説は、高木秀樹さんでした。「東天紅」という言葉や、「三婆」の説明などもあり、楽しかったです。「東天紅」は、一般的に言われていることもあり、記載します。

「東天紅」は、暁の空が染まる様と、その刻を告げる鶏の鳴き声(「コケコッコー」)を掛けた言葉です。

公演プログラムなどより、()内は補足

 義理の息子・宿禰太郎に、娘・立田前を殺された母・覚寿が、仇を討ちます。覚寿の人形を遣われたのは吉田和生さんで、刀を扱い、宿禰太郎を刺す場面が、とてもきれいにうつりました。プログラムにも、「覚寿の慧眼」、「硬骨の老女・覚寿の豪胆な裁き」と書かれてあります。

 ところで、先ほど少し書きましたが、歌舞伎や文楽には「三婆」というものがあるそうです。私は、今回初めて知りました。Wikipediaやコトバンクによると、以下の3人のようです。
・「菅原伝授手習鑑」の覚寿
・「本朝廿四孝」または「信州川中島合戦」の勘助の母
・「近江源氏先陣館」の微妙。
 至難だが、演じがいがある役という解説もついていました。私は、覚寿以外の役がどんな役柄なのかは知らないのですが、これからの楽しみにとっておきたいと思います。

■文楽のイベントなど
 私は関東に住んでいるのですが、文楽の本場は大阪で、東京公演の際、文楽の方々は関西から来てくれているのではないかと思います。
 本公演の前後に、イベントがいくつかあって、私も参加したり、動画を見たりしました。
・吉田玉助さん(今回は宿禰太郎の人形役割でした)の話を聞く会
・和生・勘十郎・玉男三人会
 人形遣いの人の話を聞くことが出来て、とても良かったです。また、いつも声を発せられないので、「こんな声をしているんだ」「こういう雰囲気の方なんだ」というのも分かり面白かったです。

 あと、少しだけ文楽の三味線に触れる機会もありました。撥の角度など難しかったのですが、良かったです。(写真は、三味線の写真を使わせて頂きました)

■最後に
 9月頃に三段目以降があるようなので、鑑賞出来ればと思います。三兄弟の活躍なども楽しみです。
 あと、自分の備忘録としてなのですが、先回りして記載しておきます。三段目の「車曳の段」で、(菅丞相のライバルである)藤原時平が車を壊して出て来るという場面がありますが、最初この場面を知ったとき「そんな大げさな」ぐらいにとらえていました。でも、現実生活においても、これぐらい迫力があって、のけ反ってしまいそうになるぐらい存在感のある人もいるように、最近思うようになりました。良し悪しは別として、現実世界も奥深いものです。

 本日は、以上です。

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