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制服が嫌い

高校3年生。英語の授業。外国人の先生による実践的な授業。
これからみんなの前で英語でスピーチをする。

1人ずつ教壇に上がり、くじを引き、そのお題で1分間英語でスピーチをする。
嫌だ、目立つのが嫌いなのに何故前に立たす。
下手な英語お披露目会。いい発音で言おうとしても笑われる。それくらいなら下手な英語の方がまし。

席の順番で回ってくる。着々と私の番が近づいてくる。
私の番がきた。嫌だなあ、適当にいけますように。教壇に上がり、前を見る。

すごい、なんだこの景色、怖い。
全員同じ服を着て全員前を見てる。私を見てる。
男の子は白のワイシャツに緑のネクタイ、紺のニット、紺のブレザー。
女の子は白のワイシャツに赤のリボン、紺のニット、紺のブレザー。
全員黒い髪の毛。同じ格好をして、机を自分の前に置いておとなしく前を見ている。

いつも私をいじってストレス発散しているアイツも、周りがいじってるから俺もいじってOKと思っているアイツも、運動ができて頭も良くて可愛くてチヤホヤされているあの子も、私が1人で可哀想だからっていつも話しかけてくれるあの子も、同じ格好で、座って前を見ている。

没・個性

おかしくて笑ってしまった。
40人の前でゲラゲラ笑った。
みんなポカンとしている。そりゃそうだ。
いつも教室の端で1人で音楽を聴いてるか、本を読んでるか、寝てるかの女がみんなの前で大笑いしてたらびっくりするよね、ごめんなさい、でもおかしいから、変だから、

個性を大事にしよう!に違和感。
見た目が個性とは限らないけど、見た目も個性を表現するうちのひとつのはずなのに。制服で個性を殺している。校則で個性を殺している。

全員が同じ服装だと人を区別するのは顔になる。
校則で化粧は禁止。周りには可愛い子たち。お前は不細工だから人権なし。よく言われた。
その状況で自分に自信なんてないし、自分に自信がない奴は内面の個性をどう表現したらいいのだろう。そもそも、人権のない私は自分の個性を主張してもいいのかすらもわからない。

先生はこの状況をおかしいと思わないのか。
自分たちがしていることは矛盾しており、この制度を変えられない自分の無力さに呆れることはないのか。

先生はこの景色を毎日見ているのか。私だったらうんざりしてしまうな。顔も名前も覚えられないな。
先生なんて嫌いだ。

最悪だ。高校って気持ち悪い。

高校生が綺麗に描かれる意味がわからない。
制服なんて大嫌い。着たくない服を着させられている。スカートなんて履きたくないのに、スカートを履かせられている。似合わない。こんなの私じゃない。
嫌だ。嫌すぎて、気持ち悪すぎて、笑いが込み上げてしまう。

外国人の先生が困惑している。
ごめんなさい。I'm sorry.

タイマーが鳴る。Time up!

私の笑い声が教室中に響き渡って1分間スピーチは終わった。
サンキューフォーリスニング。
わざと下手な英語で言い、私は再び没個性集団の1人に戻る。

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