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中高生から中高年までの検定試験入門

昨年(2020年)、日本語教育能力検定試験を受験し、無事合格しました。久しぶりの試験勉強で、うれしくて、たくさん自慢しました。「おめでとう」と言ってくれた方々、絶対に忘れません。ありがとうございます。

今回の試験は人生でもっとも大変な試験だった、というわけではありませんが、大変でした。本当に大変でした。

何が大変だったかと言うと、最初から最後まで時間との戦いだったからです。

2020年度は、「飛び回る蚊のように忙しい」一年でした。
(突然ですが「蚊が飛び回る蚊のように忙しい」はタイ語の慣用句です!)

出講先の予備校で映像授業に関わったり、その編集も自分でやったり、書籍の執筆をしたり。学習時間がほとんど取れず、なんとか確保できた学習時間は毎日30分程度でした。もちろん、忙しさは疲れと(ほぼ)同義ですから、机に向かうと強烈な眠気に襲われる。よく言う「働きながら勉強」の大変さを痛感しました。

近年、子供から大人まで、中高生から中高年まで、TOEIC®やTOEFL®や英検®など、語学に関する民間の検定試験を受験しようという流れがみられます。これまでも大学生の留学や、社会人の昇進・海外駐在のために民間の検定試験を受験することはありました。しかし最近、大学入試で民間試験が利用されようになり、この流れを強める大きな要因になっているようです。AO入試などの推薦入試系だけでなく、一般入試でも民間試験が利用される時代になりました。

これから各種検定試験を受験する方々。成果を出したい。合格したい。しかも最短で合格したい。

そう言う方々に向け、今回の受験体験を通じて「やっぱり試験に合格するために必要なのはこれだよなぁ」としみじみと思ったことを、備忘録を兼ねてまとめておきます。

過去問から入る

試験対策において最も重要なこと。
それは「過去問を解くこと」です。

えっ、あたりまえすぎる・・・と思わず声が漏れてしまいますよね。およそどんな試験であっても、「試験対策ガイド」の類を調べてみると「過去問を解け」と書かれていますから。

しかし現状はどうでしょうか。「過去問を解こう」とあらゆる場所で言われているにもかかわらず、取り組めていない方がとても多い。そういう印象を受けます。

中高生から中高年まで様々な世代の方々に英語を教えていますが、新しい受講生の中で「もう何度も〇〇試験を受けているのに合格できない」と言われる方が多くおられます。

試験対策がうまくいかない理由は、もちろん、人それぞれです。ただ、合格に必要な勉強ができていない。「自分が受ける試験を全く知らないまま漫然と勉強している」という印象を受けることはやはり多いです。

人生は短い。さっさと成果を出して次に進みたい。答えはあの兵法書に書かれています。

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」

敵を十分に研究し、自分自身と向き合い実力をつければ百回戦っても負けない。かのナポレオンも愛読したと言う軍事理論の大家、孫子の有名な言葉です。この言葉こそ、試験対策の極意です。

自分が攻略しようとする試験を分析し、その試験が求める水準に対して自分の実力がどのレベルなのかを分析し、試験と実力との差を埋める。これが試験勉強です。

もう少し具体的に説明しましょう。

試験の概要を確認

まずホームページなどで試験の概要を確認する。「〇〇試験とは」のメニューを探します。「アカデミックな英語に特化した試験」とか「日常生活やグローバルビジネスで使用される英語の試験」のように書かれています。ここから試験の特徴を見極める。これで勉強の方向性は見えてきます。

極端に言えば、英語圏の若者がよく使うスラング(俗語)をどれだけ知っていても「アカデミックな英語」を問う試験には永遠に合格できないわけです。逆に、英語で難しい論文を乱読して、「自分は高尚な英文を完璧に読みこなせる」と自負しても、日常会話表現やビジネス用語(人事部とか証券取引所とかそう言う類の言葉や言い回し)を知らなければ、ビジネス系の試験でハイスコアを取ることはできません。こう言うズレた勉強をしている方、結構多いです。

そしていよいよ過去問

次に、いよいよ過去問の検討です。出題形式、難易度、分量などをチェック。実際に解いてみる。

「意外といけそう」とか「これは思ったよりも難しいな」とか、様々な感想を持つでしょう。特に語学系の試験では、「難しい」という感想の方が圧倒的かもしれません。語学は相当数の知識を暗記してしまわないと使い物にならず、当然、問題を解けるようにもならないからです。本や講義で説明を理解して「もう自分はこの言語をマスターした」と思っても、全く問題が解けないと言うことは本当にザラにあります。

このようにして、自分に足りないものを把握する。進むべき道は見えてきました。あとは簡単です。勉強するのみ。

ごくごくたまに、「過去問は過去の問題だからもう出題されない問題」という意見を聞きます。過去問の定義はあっていますが、結論はどうでしょう。個人的には、「出題者がその試験の目的の枠内で、その試験が図る技能を試すために重要と考える項目を中心に作問したもの」が過去問だと思います。

そうならば、重要な項目は、二度と出題されないどころか、むしろ何度も出題される可能性が高い問題と見るのが良いのではないでしょうか。特に語学の試験ではその傾向が顕著です。

と言うわけで、これから検定試験を受験しようとする皆さん、もう勉強を初めている皆さん、これを読んでいる今日のうちに、過去問を見てみましょう。

ちなみに、じゃあ僕自身は限られた時間の中、どのように過去問中心の対策を乗り切ったのか。それは日を改めてご紹介しましょう。



オーキッド外語学院代表。株式会社オデッセイ・グローバル代表取締役社長。トフルゼミナール、アテネフランセ等で教鞭をとる。高校生、大学受験生、社会人を対象に大学入試対策、TOEIC対策を担当。テキスト執筆、ビジネス翻訳も手がける。https://orchid-gaigo.com