見出し画像

他者の存在が生み出す「内省」の可能性

今、「内省」が経営者などビジネスリーダーから注目されています。

 「内省」とは、過去の悪い行いを懺悔するような行為の反省とは違い、自分の内面を振り返ることで、自分自身の認識の枠組み(固定観念)を取り外す行為です。

未来に同じような場面や状況になった時に、自ら新たな可能性を生み出していく行為に繋げることができる「内省」の重要性は今非常に高まっています。

*反省については、「反省させると犯罪者になります」という少々刺激的なタイトルの本がありますので、「内省」との対比として参考までに見て頂くと良いかと思います。


 では、見せかけではない本質的な変容を生む「内省」とはどのようなものでしょうか。そしてなぜ、今求められているのでしょうか。

変化が激しく価値観がどんどん変わる時代においては、それまで学習したことに縛られるのではななく、学習したことを手放し(学習棄却:アンラーニング)、新たな価値観を取り入れていくことが重要です。

新しい価値観を取り入れていくために日々の中で内省を習慣化し、何をアンラーニングしていくのかを問い続けることが大事になってきます。


 私たちは、一人一人様々な固定観念に縛られて生きています。普段から自分の内面を振り返る「内省」という行為を習慣化していないと気づきにくいのですが、過去の失敗した経験や、親・教師、あるいはマスコミなどから知らず知らず刷り込まれてきたステレオタイプ的な思考は時折私たちの行動にブレーキをかけてしまいます。

 思い込みや固定観念が行動にブレーキをかけてしまう例として、有名な”カマス”の話を紹介しましょう。

 カマスは、水槽の中に小魚を入れておくと次から次へと食べてしまうような獰猛な魚です。

ある実験で、水槽の中にガラス板を入れてカマスと小魚を分けたところ、いつものように小魚を食べようと追いかけたカマスはガラス板に頭をぶつけてしまいました。そして、それを何度も繰り返すといつの間にかカマスは小魚を追いかけなくなりました。

では、ここで質問です。

 その後、水槽の中のガラス板を外したら一体どうなると思いますか?

正解は、、、カマスは小魚をもう追いかけない、です! 小魚を食べようとすると痛い目にあうということを学習したカマスは、すぐそばに小魚がいても食べようとしなくなります。

では、また2つ目の質問です。

 再びこのカマスが小魚を食べるようになるためには、どうすれば良いでしょうか?

勘のいい方はすぐわかるかと思いますが、正解は、、、野生のカマスを水槽に入れる、です。野生のカマスは水槽の中にずっといた先ほどのカマス達とは違い、本能で小魚を追いかけて食べます。その野生のカマスが小魚を食べる姿を見た他のカマス達は、また元のように小魚を追いかけ食べるようになります。

 このカマスのエピソードから何を言いたいのかというと、私たち人間もカマスと全く同じだということです。

過去の辛い経験や思い込みといったものにとらわれて、自分の行動にブレーキをかけてはいませんか? そして、そのことにどれくらい気づいていますか? 

そうした自分自身を縛っている固定観念に気づくための「内省」を効果的に引き出してくれる存在が「他者」であり、その他者との「対話」によって新たな可能性が生まれます。

 野生のカマスのように、自分の固定観念に気づかせてくれる貴重な存在が自分と価値観が大きく異なる”他者”の存在であり、自分にとって違和感を感じる他者の存在は、自分の固定観念となっている心の壁を取っ払い、新たな可能性もたらせてくれるかもしれません。

そして他者との関係性において本質的な「内省」をもたらすためには、自分のフィルターを通して他者を見、話を聞くのではなく、何も評価判断しないで”他者”の話を聞く、対話」の姿勢がとても重要になります。

 

 そうはいっても、なかなかすぐには長年培ってきた固定観念を外すのは難しいですよね。
それをできるようにするためのトレーニングが、”気づく力”を深めてくれる瞑想やマインドフルネスです。

欧米のビジネスリーダーの中では、固定観念からくるバイアスがかかった反応的な意思決定ではなく、フラットで冷静な意思決定ができるようマインドフルネスをベースにした認知トレーニング、MBSAT(Mindfulness-Based Strategic Awareness Training)が注目を集めており、MBAプログラムが世界トップランキングの常連校のスペインのIE Business Schoolのリーダーシップ修士プログラム「ポジティブ・リーダーシップと戦略」で展開されています。

マインドフルネスで”気づく力”を高め、他者という貴重な存在との「対話」を通しての「内省」を日々に生かすこと。それこそが自分自身の新たな可能性を見出すことに繋がっていきます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?