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映画『レジェンド&バタフライ』レビュー

東映70周年記念作品とのことで、制作費にもプロモーション費にも贅を尽くしている印象である。今年の大河ドラマを担当する古沢良太が脚本として名を連ね、木村拓哉、綾瀬はるか共演、『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督となれば、自ずから関心、前評判は高くなる。実際岐阜城、安土桃山城はセットかと見紛うほどの出来栄えだし、合戦シーンや比叡山焼きなども見応えある仕上がりである。しかしながら誰もが知る歴史の一コマ一コマが、かくもダイジェスト感あまりに強くこま切れにされ並べられると、長尺3時間近くは大作然とするばかりで冗漫にしか感じられない。信長と帰蝶との出会い中軸とするなら、信長の変容を時系列で描くのではなく本能寺の変に特化して回想で収斂させてもよかったのではないか。役作りへの気合いは理解できてもキムタクはやはりキムタクだったし、演技賞ものの綾瀬はるかは大河ドラマ『八重の桜』の新島八重を思わせるばかりの立居振舞いが残念でならない。終始聞こえる三河弁も劇中での「敦盛」の取扱いもなんだか中途半端。「下天の夢」が『タイタニック』では興醒めで笑うしかない。期待しての鑑賞だったせいもあり、落胆大なり。『影武者』や『乱』の黒澤明を懐かしく思い返し重ねて歎息するばかりだった。

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