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NV200バネット イエローキャブ

くるまの状態: いろいろな恩恵を受けて乗せてもらった試乗車
試乗コース:湾岸エリア沿い一般道 運転席→後席の順に試乗

おい、キャブ乗らねぇか
ちょい昔、日本で入れるアメリカの大学っていうのが流行ったと思う。 結局あの学校を卒業した人はどうなったんでしょうね?なんてことを考えながらドアを開けたら、やっぱりそれはハンドルが左側から生えていた。 超マンゴー色のNV200バネットはイエローキャブ。 彼の地でタクシーとして活躍している車両だ。 やおら運転席に乗り込むと気分からしてアメリカ風に変わる。 タコスが大好物な身長2m級の運転手に変身した気がしてくるのだ。

“ホセがカミさんに言ったんだってよ。「テレビが見えないからそこをどけ」って。そしたらカミさん、なんて言ったと思う?「それならカモシカを抱いて寝たほうがマシ」ってな。とんだポテト頭さ。ハーッハハハハハハ。”

こんなぜんっぜんおもしろポイントがわからないジョークのひとつでも飛ばしたくなる空気感に変わるから不思議なものである。 走り出してみれば至って普通。何がどうだという不満など取り上げても意味がないほど普通。ただしびっくりするほど坂を上って行かない。ニューヨークには高低差がないのかしら? 「おい、キャブ乗らねぇか?」沿道の人たちにそう声をかけたくなる気持ちを抑えるのが大変だった。

異常な密室感
しかし後ろを振り返ればさすが犯罪大国アメリカのタクシー。ごっついポリカーボネイト製の仕切りで前後が仕切られている。空気がみっしりしている。まるで音楽スタジオのような造り。

ナマ声で客とは会話ができない。もちろんじかに接触することもできない。 なので客との会話はマイクを通じて行う。 もっとも近くて遠い存在。
昼ドラの微妙な男女関係を現したようなたとえだが、いかつくて腕毛が濃い運転手と客との距離関係の話である。 さきほどのとびっきりのアメリカンジョークもまったく届かない。赤面必至だ。

後席を開けると「ミィーシッ」という音を立ててステップが自動で出てくる。細かいなぁ。 ニッポンのタクシーのように、文化放送のラジオ番宣シールや鍼灸院のパンフレットなどまったくない。代わりに洒落た黄色いステッチのシートが出迎えてくれる。

広さは十分だ。いやいや十分以上。めちゃ広い。
上を見上げればガラスルーフだし、足も伸ばし放題。解放感抜群だ。 いきおい外の風景もめちゃくちゃアメリカに見えてくる。 装備も独特で、25インチ超のテレビ画面があり(何が映るのかは謎だった)クレジットカードのスロットがあり、運転手との連絡用マイクがある。カップホルダーも冗談みたいにでかい。いちいち文化の違いを感じさせてくれる。 試乗したのが金曜日だったこともあり、このままどっかニュージャージーあたりまでやってくれ、と言ってしまいたくなった次第だ。 これがアメリカのタクシーにおけるデフォルトか! もうちと頑張ってくれよニッポンのタクシー!導入してよイエローキャブ。乗り心地、とってもいいし。 それが無理だというのなら、少なくともクールじゃない運転席の数珠シートカバーだけはなんとか改善してくれ。

そこか?