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【読書日記】5/24 服が語ること。「ヴィンテージガール/川瀬七緒」

ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ケ谷京介
川瀬七緒 著 講談社文庫

 下手の横好きの典型ですが手芸が好きなので、裁縫や編み物などをテーマにした物語にも興味を惹かれます。

そんなこんなで手に取った本書。
 主人公は、美術解剖学を専攻していて服の状態から身体のくせ、怪我、病気の予兆を察することが出来るという特技の持ち主。

十年前に少女が亡くなった未解決事件の情報提供のためにTVで画像が公開されたワンピース。
「紫色の生地の上に目玉らしきものや幾何学的な模様、そしてネジや太陽のような柄が大胆に散らされている」という特殊な柄、襟元の熟練した職人技と袖やウェスト部分の不格好さというちぐはぐな縫製。
この被害者がどこの誰とも身元が判明していない、と聞き、こんな特殊な服なら、自分がきちんと確認すれば少女の身元の特定に役立つはず、と動き出します。
桐ケ谷の、服装のほんの小さな手がかりから様々な事実を提示していく様子はホームズの系譜。
 ワトソン役として同じ商店街のヴィンテージショップの水森小春(26歳)と古びた手芸店の寺嶋ミツ(88歳)。

小春はゲームの実況をしているとのことで、ゲームに例えた話をよくしています。
それ風にいえば、この三人のパーティー「伸びた髪を剣士のように束ねている陰気臭い青年と、古着で着飾っている小生意気な女。そしてそこに、警察署で盛り塩を始める腰の曲がった老女」は、ワンピースから得られる情報(生地、ボタン、デザイン、縫製など)を集めて少女の身元捜しというクエストを攻略できるのか?

服飾に関する蘊蓄が楽しめたのと、職人さんや町工場の技術などへの敬意を感じさせる物語でした。