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ごはん杖(#毎週ショートショートnote)

 2100年、日本は全人口の5割以上が70歳以上という超高齢化社会を迎えていた。それに伴い、身寄りのない高齢者による交通事故や凶悪犯罪が増えていた。この問題は「暴れる高齢者問題」と名付けられ、大きな政治課題となっていた。

「総理、年金の財源については増税でなんとか凌ぐことができましたが、“暴れる高齢者問題”はどのようにして解決しましょう?」

「私も頭が痛いところだよ」

「90年ほど前に民間で“こども食堂”というサービスがあり、孤食に悩む子供や収入の少ない家庭を助けたという事例があったそうです。“年寄食堂”というのはどうでしょう?」

「それで高齢者が暴れなくなるのかね」

「スタッフには若い美男美女を揃え、おいしい食事を提供すれば何とかなるかと」

「逆に変な気を起こさないかね」

「大丈夫です、高齢者であることを自覚させるため杖を持たせます」

「それでいこう」

もちろん、この政策は何も解決しなかった。
これが天下の愚策と言われる「ごはん杖政策」が始まった経緯である。

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