読書録.1

文章を書く練習ついでに始めてみます。
三日坊主に打ち勝ってみせるぞという意志を「1」に込めました……。


『たんぽるぽる』 雪舟えま

歌集。読もう読もうとは思ってきた雪舟えまさん、いま出会えたことがとても嬉しい。
ぎりぎりの痛々しさを裸足で駆けて、何気ない生活の温い匂いに身をよせる。
少女のように甘やかに、時にけもののように奔放に、跳ねていくことばがいとおしい。

けんかして泣いてるとこと座のベガの六時にかかる曲が流れた
おいしいの苦い光がおいしいのめだかは空にえさをまかれて

一つの歌として特に印象的だったのは今のところこのあたりだが、
「ほぼ編年体」だという一冊を流れる時間の感覚はひとつづきの長編小説のようで、歌集というまとまった形を読むよろこびを強く感じた。


『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治

再読。十年振り?くらい。
改めて表現が美しい。うつくしく澄んだひかりを描けば描くほどかなしさが際立つのはどうしてだろう。
登場人物の印象が、まえに読んだ子どもの頃とかなり変わって驚いた。当時はおそらく主人公ジョバンニの視点で狭い世界を見ていたから、そのまま、ザネリはとんでもない意地悪な子だったしカムパネルラは神々しいくらいの憧れの存在だった。
しかし今読んでみると、それぞれに相応の幼さを感じた。ザネリはどこにでもいるお調子者くらいに思えたし(勿論、その心無い言葉に傷つく痛みは今もひしひしと感じたのであるが)、おそらくは身近な大人たちがジョバンニに向ける目を敏感に感じとって振る舞っていたのではないか、とか思う。自分を助ける為に級友を失った彼のこれからのことを考えるとかなりしんどい。
いちばん大人に見えていたカムパネルラの考えの青さのようなところを強く感じて驚いた。だが同時に、「ほんとうのさいわい」を追い求める真っ直ぐさにはっとして、以前の憧れとはまた違った眩しいものをおぼえた。


短歌には最近興味を持った。一瞬の感覚を鮮やかに切り取ることばにハッとする。
昔読んだ小説を読み返して驚くことが多い。生きたぶんだけ違った面白みが加わってくるのはボーナスっぽくて嬉しい。

今週は2冊。