見出し画像

誰も知らない自殺未遂

このお話はフィクションかもしれません。
なぜなら、目撃者がいないからです。

■「何か」が追い詰めてくる

「人は、追い詰められると、思考も行動もおかしくなる」って言いませんか?
追い詰められる、というと、追い詰めてくる相手がいるはずなのですが、当時の私は、一体誰に追い詰められていたのか、分かりません。
睡眠時間が2~3時間、常に締め切りに追われ、朝の5時なのか夕方の5時なのか分からない生活を続け、家に戻れば没交渉の夫が、寝ていたり仕事に行っていたり。
夢の中でも仕事をしているので、いつも、寝ているのか起きているのか、よく分からない状態だったのは、決して誰かから「そうしろ」と言われたわけでもありません。
マスコミ業界の底の底に行くことを選んだのは自分だったはずですから。

同世代の周りの人間が、結婚をし、仕事も順調にキャリアを積み、子育てにいそしんでいる中、これといってやりたいこともなく、けれど生活をするためのお金は稼がないといけない。
でも、なんかちがう、だけど周りの人たちのようにならなければ…!
子供産まなきゃいけない、でも育てる自信はない。
みんな立派な人間になっているのだから、早く私も何者かにならないといけない。
みんなみたいに稼げるようにならないといけない。
もし子供を産んだら、みんなみたいに習い事や塾に行かせられるだけの稼ぎをつくれなきゃいけない。
でも、そうなれる自信もない、みんなみたいになれない。
…という諸々の不安を、考える暇を無くすことで逃れようとしていたのだと思います。

■大雪の降ったある夜に

その日は珍しく関東に大雪が降った日でした。
終電で帰路につき、積もる雪に足を取られながら、最寄り駅から徒歩で自宅に向かいました。
雪が積もっている夜って、深夜でも微妙に明るいですよね。
いつもなら街灯を頼りに歩く家路も、不思議と夜な気がしません。

当時の自宅はアパートの3階。
外面にむき出しの廊下にも、しっかりと足跡がつくくらい雪が積もっていました。
空を見上げ、視界いっぱいに白いヒラヒラが舞っていたのを覚えています。




気づいたら、仰向けに横たわって、その光景を見ていました。





頭と背中が冷たいのに気づき、ゾクッとしたら、視界は建物と塀の隙間から空を見ている状態。
見慣れない風景に、一瞬パニックになりながら、立ち上がって狭い通路を進み、大通りに出て初めて、お隣のマンションの敷地内に倒れていたのだと分かりました。

何が起こったのか分からないまま、再び自宅アパートの3階に上って下を確認したら、アパートとマンションの間にある、トタン屋根の倉庫に積もった雪に、不自然にはげた跡が、お隣のマンションに向かって斜めにずるずると延びています。
廊下の手すりは胸の高さまであるし、家の窓も、下のサッシは手すりと同じくらいの高さ。
(廊下にいたのか、家の中から窓を開けて外を見ていたのか忘れてしまいましたが)いずれにせよ、人が落ちようのない高さ、なのにあんなところにいたということは、恐らく、無意識で飛び降りていたのではないでしょうか。

もし本当に飛び降りたのだったら、ものすごい音がしたのではないか。家で寝ている夫や、ご近所さんも、気づくのではないか。
けれど、どこからも人の出てきた様子はありません。
トタン屋根の倉庫は1階分の高さだから、少なくとも2階分は転落しているのだし、そこそこケガをするのではないか。
多少、身体のあちこちを打ったような痛みはあったものの、ダウンジャケットとニットのスカートがべちょべちょになっていたくらいでした。
もしかしたら、積もった雪が、衝撃だけでなく、音までをも吸収していたのか。

考察を様々巡らせましたが、最終的に思ったのは、
「あぁ、私、このままだとダメだ。」

外の廊下に積もる雪で、訳も分からず泣きながら雪だるまをつくりました。
そんな深夜3時。

当時のインスタ(すみません鍵かけてます)を確認したら、不眠症だったみたい。

■ゼロ・ワールド

ここからは、たぶん飛び降り自殺を試みるほどに追い詰められていた自分が、どうにか人生を立て直すためにやったことです。「たぶん」というのは、目撃者がおらず、私しか知らない上に、それですら状況判断なので、私が語らなければ、これはなかったことになりますから。

①引っ越し
離婚して住む家がなかったのですが、ありがたいことに、行きつけの居酒屋の大将に、シェアハウスの空きが出たことを教えてもらい、無事入室ができました。
これは本当に、運が良かっただけだと思います。

②人間関係のリセット
一度死んだような身ですから、もう、私が生きていたって死んでいたって、なんにも関係ありません。
伴侶も貯金も無くして、仕事も全部無くすついでに、惰性でつながっている昔の知人関係もすべて切って、本当にゼロベースにしました。
仕事関係は、徐々に後任に引き継いでいき、完了したものから連絡先を消していきました。
実績を積むためにどんな理不尽な目に遭ってもつながっていないといけなかった人たちも、すべて削除です。

③ストレスになることを認識し、徹底的に原因を排除する
・満員電車に乗りたくない
・人混みに行きたくない
これらは、自営業になることで、ある程度調整できてきたのですが、
・しがらみのある人間関係から逃れたい
・足元を見られた理不尽をかけられたくない
・というか、もはや人と話したくない
・寝たい
など、自らを追い詰めてしまうほどのストレスの原因を明らかにしました。
その上で、お金ではなく、徹底的に、ストレスのない仕事を選ぶようにしたのです。

④誰でもできる仕事から始める
仕事を選ぶ時、これまでの経験、キャリア、給与を踏まえて、ステップアップの転職を…と選ぶ方は多いと思います。
けれど、私の場合、スキルに書けるほどのキャリアもなく、オフィスの中で働く一般企業への就職は、年齢的にも無理だな、と分かっていたので、
・未経験者歓迎
・誰でもできる
と謳っていて、常に人手不足な業界を探し、清掃の仕事に就きました。
家族もいない、子供もいない、守るべきものも特にないなら、良い暮らしができるほどの高い給料も不要で、とりあえず夜露が凌げて日々食べられさえすればいい。となれば、職探しに苦労はしないことが分かりました。
(恐らく「仕事が無い」と言う人は、「“給料が良くて、休みもいっぱいあって、らくちんで、責任も重くなく、フレキシブルに働ける仕事が“無い」の意味で言っているのではないかと思いました。)
※ちなみに、別記事で書く予定ですが、「誰でもできる」と言われている仕事をやってみた分かったのは、「誰にでもはできない」ということです。
向き不向きは必ずあります。

⑤徹底的に独りになる
人間の悩みの9割は人間関係だと、かのアドラー氏も言っていますから、人間関係を必要最小限に抑えれば、悩みもなくなるだろうと目論んで、仕事から帰ったら、基本部屋に引きこもります。
たまに行きつけの居酒屋へ行き、たまにリビングで会うシェアハウスの住人と話す。それ以外の人付き合いを徹底的に無くしました。

■「なりたかった自分」に1ミリもなれなかったけれど、そこそこ幸せ

こうして、とことんストレスを減らしていったら、ウソみたいにメンタルが安定しました。
毎日規則正しく寝て起きて、昼間は仕事でとことん身体を動かす。太陽の光を浴びる生活をし始めたら、徐々に体力も回復してきて、今では風邪すらひきません。
殺伐としていた日々は、まるで誰か別の人間だったかのようにすら感じます。アレは本当に私だったのでしょうか…?

きちんとした会社でしっかり働いて、キャリアアップして、結婚して子供産んで育てて、育産休から復帰してまたバリバリ働いて、お給料もどんどん上がってスキルも上がって、子供に何不自由ない生活をさせてあげている、会社の人間関係も、ママ友お付き合いも充実して、自己実現もしている同世代の知人らのようには全く成れていませんが、それでも、なんとか生き延びています。
そして、なんの贅沢もできませんが、穏やかなこんな暮らしがそこそこ気に入っていたりします。

■「死」から始める「今」

実は「死にたい」気持ちは、記憶にあるところでは6歳からありました。
追い詰められるほどの思考を形成したのは、育った環境や自身の性格が大きく関わってくるとは思いますが、そんなクソネガティブな人間でも、今、こうして、どうにか生き延びることができています。

ずっと何かに追われ続けているのが苦しくて、死にたい気持ちがいつも隣にあったし、今も無くなったわけではありませんが、それでも、まるで一度死んだかのような経験がなければ、「そこそこ幸せ」なんて吐ける生活にはなっていなかったはず。
だからこそ、思うのです。

「死」は悪か?
「死」はネガティブか?

縁起悪い、怖い、不謹慎と見られがちな「死」ですが、生きとし生けるものすべての命のゴールは絶対に「死」です。
そのゴールから目を背けることなく、見据えることで、今を楽しく充実して生きられるのではないか。
そう思ったのが、このブログを始めた理由です。

ストレス社会、多死社会の中、理不尽で苦しい状況下におかれたり、キレイごとだけでは立ち行かなかったり、正直者がバカを見るような、こんなクソみたいな世の中で、それでもご機嫌に生きていけるような気づきが、読んでくださる方の中に生まれたらうれしく思います。

オススメの書籍、話を聞いてほしい人の紹介など、ありましたら、お気軽にメッセージいただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。

闇雲に忌み嫌うのではなく、学びを深め思考を巡らすことで、「死」は「今」を生きることを豊かにしてくれると信じています。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?