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川西ケプリタウンの社会学~しょぼい起業の街づくり~



 2021年9月の「川西のカレー屋~ケプリとミルズ~」というnote(https://note.com/kamocafe/n/n31d9a5118581)では、兵庫県川西市で久木田郁哉(くきたふみや)が立ち上げたカレー屋ケプリとミルズの経緯と、カレー屋が中心となって川西を起業の街にしたいというしょぼい起業の村の立ち上げの展望を書いた。
 今回のnoteでは、それから半年後の2022年2月の時点で、実際に川西がどの様な起業の街になって行っているのかをご紹介しようと思う。



1.畦野カレー屋 チャンプル

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 チャンプルはマーシーさんという人が2020年12月年に開業した。マーシーさんはTwitterでの久木田の熱心なフォロワーで、低コストで効果的なカレー屋の経営手法を紹介する久木田のツイートに対して熱心にいいね!をしたり、時々リプライを送ったりしていた。しょぼい起業家が投資家相手に事業企画をプレゼンテーションして資金を集めるというえらいてんちょうのYouTube企画「投資家vs起業家のマッチングバー」を見て、その中で久木田があの手この手で投資家や観客の皆んなからお金を集めているのに感激し、久木田のフォロワーになり、動向をチェックしていた。
 今の川西ミルズができた2020年の春頃、マーシーさんは久木田に連絡をし、川西に移住してカレー屋をやりたいという事を伝え、沖縄から川西にやって来た。久木田と相談し、賃料と立地とその他条件を加味して久木田と共に店舗物件を探し、川西を南北に走る能勢電鉄の畦野(うねの)駅近くで飲食店の居抜き物件を賃借した。店内の設備の調整に少々苦労したが、上手くいき、カレー屋チャンプルは2020年12月にオープンした。
 チャンプルはケプリやミルズから種々のカレー粉や冷凍カレーを仕入れ、ケプリやミルズのカレーと同様の商品も出しつつ、両店にはないカツカレーなどのカレーも出している。トッピングもケプリやミルズには無い物があり、ほうれん草や鴨肉をカレーに乗せて食べられる。チャンプルでは12歳未満はカレーを無料で提供していて、子ども食堂もやっている。対象年齢の幅は違うがケプリと同じ川西市内の子ども食堂だ。チャンプルがある畦野は住宅街なので子どもは多い。
 マーシーさんは元々はYouTubeのチャンネルプロデューサーの仕事をしていて、メディアミックスや広告に長けた人だが、実店舗の経営も経験してみたい、学んでみたいとのことで、久木田の所までやってきて、カレー屋を開業した。マーシーさんは非常に仕事のキャパシティが大きく、カレー屋チャンプル以外にも川西市内を縦横無尽に動いて活動し、市内の問屋や店舗などの事業者を巡って資源を集める事ができ、それがこの後7章で紹介する冷凍無人販売所である冷食屋の開業に繋がった。

2.川西麺業

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 川西麺業は2019年の8月に開業した。現在の川西麺業は繁盛店で、客席が満員になることも多い。えらいてんちょう著『しょぼい起業で生きていく(持続発展編)』(イーストプレス、2020年12月21日初版)にしょぼい起業の成功事例として紹介され、2021年2月の東洋経済のネット記事で紹介されたり(https://toyokeizai.net/articles/-/407366)、2021年7月には地上波関西テレビの人気番組「よ~いドン!」の中の「となりの人間国宝」というコーナーに出て、紹介された。メディアへの紹介のされ方は、格安物件を借りてカセットコンロ等の最低限の設備を使ってこれだけの味が出せるラーメン屋が川西にある、という形であった。川西麺業の開業にあたっての初期投資は40万円で、現在も低コスト経営を続けている。店長の松井さんはイベントに呼ばれて出張川西麺業を行うことも多く、忙しくしている。
 川西麺業がテレビで紹介された時は同時に久木田も紹介され、久木田が行って来た店舗中心のマイクロ起業の様々な実例を紹介してもらった。最小コストで店舗物件を再生させ、カレー屋やラーメン屋などの実店舗を組み合わせて街づくりを行うという久木田の事業活動には面白みがあり、社会的に注目された。
 川西麺業はケプリの隣の物件で、二階もあり、ケプリを中心とした川西のプロジェクトの倉庫になっている。ケプリと川西麺業の物件はとても古く、特に川西麺業は開業にあたって、物件の内部を皆んなで大規模に掃除し、設備を整え、キッチンの内部やカウンターをラーメン屋として使えるように整備し直した。設備や内装の多くは元からあるものをきれいに磨いてそのまま使うことが多かったり、冷蔵庫やエアコンは家庭用のもので済ませて初期費用を圧縮する。古い物件を自分達の手で手入れし、店として使えるようにして経済活動をするのはしょぼい起業の醍醐味だ。


3.サンドウィッチ屋 國屋シナノ

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 國屋シナノは2021年3月に川西郵便局の近くの丘の中腹に開業した。國屋シナノは店長ヤスさんの苗字の「國本」と4で紹介する「シナノ」を合わせて命名した。國屋シナノは元々は2020年9月頃から大阪の中崎町で間借り営業をしていた。カフェ・ベーカリー・シナノの暖簾分けとしてスタートしたが、久木田が行っているしょぼい起業の街づくりに参加したいと思い、川西能勢口周辺の店舗物件を探し、移転した。
 暖簾を分けてもらったシナノはシナモンロールが看板商品のお店だが、國屋シナノはサンドウィッチがメインだ。サンドウィッチのパンはシナノの物を使っている。アボカドのサンドウィッチやオイルサーディンのサンドイッチなど、数種類のメニューがある。また、サンドウィッチの付け合わせで店長自慢の味噌汁を出すのがユニークだ。
 商品のサンドウィッチも写真映えするが、國屋シナノはお店の物件と外観がかわいいのが特徴だ。白い壁に青い装飾が施され、丘の中腹の目立つ場所にあることもあり、雰囲気が良い。雨の日に灯りがともった國屋シナノは風情があり、店内でギターなどの楽器の音色を聴きたくなる。実際店長のヤスさんはギターが趣味で、ミルズの従業員にも音楽を嗜む人がおり、國屋で会合して演奏会を企画したりする。
 國屋シナノの物件は少し不思議な物件で、実は店に入って左の階段を上がれば二階が不動産屋さんになっている。川西の主に古民家のリノベーションを手掛ける不動産屋さんの事務所らしい。また、國屋シナノのキッチンは店に入って右の階段を下りた半地下の様な場所にあり、空間的に上下の広がりがあって、不思議な印象がある。半地下部分にも南向きの窓から光が差すので明るくなっている。
 國屋シナノはシナノから暖簾分けを受けたが、この様に独自の経営を行っている。実はカレー屋ケプリも暖簾分けした店があり、大阪の阿倍野区にケプリ大阪という店がある。そこはうみへこさんという人が店長として独自の経営を行っている。久木田が展開するケプリやミルズのカレー粉を使ったカレー屋は全国にあり、そちらは暖簾分けシステムを取っている訳ではないが、各地のカレー屋も各店長が独自の経営を行っている。しょぼい起業では店舗の経営者(店長)が全ての経営裁量を持ち、基本的に縛りを設けない。そしてえらいてんちょうがしょぼい起業という概念を提唱し出してから4.5年ほどが経つ今、マイクロ起業やしょぼい店舗の経営方法の現場レベルでの知見は蓄積されており、久木田はそれを起業家に提供する。

4.ベーカリー・シナノ

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 シナノは元々は2019年4月に阪急伊丹線の稲野駅近くで開業した。店長のビタミン中嶋さんは、しょぼい文化祭という久木田が2018年10月に川西能勢口駅東隣の藤ノ木さんかく広場で主催したお祭に、みかんの卸売業者として出店していた。
 シナノは2年間伊丹市稲野の地でパン屋や洋食を出すお店をやり、パンの研究をしながら、SNSと連動させて集客してお客さんをつけ、シナノを成長させた。
 2020年からのコロナウイルスによる社会の変化と経営環境の激変を考えた際、久木田が川西で作っているしょぼい起業の街づくりに合流した方が良いのではと考え、店舗を稲野で経営しながら、先に中嶋さんご夫妻は川西能勢口に移住した。稲野店の経営を終え、2021年秋から川西能勢口店の開業の着手に入り、久木田の協力を得てケプリの裏に物件を賃借した。
 シナノ川西能勢口店は2021年末にプレオープンし、2022年始から公式に営業を始めた。2021年末のクリスマスは、ケプリ従業員一同はシナノの七面鳥の丸焼きを食べてお祝いをした。ケプリの近くにシナノがあることで、ケプリの従業員も気軽にパンを買いに行けるし、中嶋さんでしか作れない料理を買うこともできる。川西にしょぼい起業の村を作っていて良いことの一つがこれで、筆者はケプリ従業員だが、ケプリの周りに店が増えれば増えるほど、享受できる商品やサービスが増えて、自分も豊かになった気分になる。また、シナノが川西能勢口に移転してきたことで、國屋シナノはサンドウィッチのパンを仕入れやすくなった。
 稲野から川西能勢口に移転して来て、シナノの売り上げは大分上がっているらしい。一日の営業時間も12時間以上の時もあるし、パン焼きの窯も何回転もする。シナノ川西店も繁盛店だ。
 シナノはコワーキング・スペースではないが、中嶋さんがデザインのセンスがあり、扉が綺麗で雰囲気が良く、お店の中も綺麗なので、来客をもてなすには良いお店だ。久木田は自分に連絡をくれたお客さんをよくシナノに連れて行く。久木田に連絡をくれるお客さんは様々な人がいるが、TwitterやYouTubeを見て川西のしょぼい起業の活動を知り、自分も起業などの新しい経済活動をしてみたいという人が来る。ケプリから歩いてすぐにシナノや川西麺業などをしょぼい起業の実例として紹介できるのは非常に活動のメリットになっている。

5.沖縄料理屋 かっぱ食堂

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 かっぱ食堂は2021年末12月に川西郵便局の近くにオープンした沖縄料理屋だ。きゃめろんさんと旦那さん(二人の通称はかっぱとペンギンさんだ)のご夫妻が経営している。元々きゃめろんさんはかもカフェ扇町店からのお客さんだった。かもカフェ扇町店とは2018年3.4.5月に大阪の扇町で間借り営業していた筆者のカフェだ。2018年3月時点ではまだえらいてんちょうの著書『しょぼい起業で生きていく』は出版されていなかった。関西のイベントバーエデンも無く、川西のケプリも2018年2月にできたばかりであった。久木田(難民社長)が関西のあちこちを奔走し、関西でのしょぼい起業の準備をしていた頃だった。
 きゃめろんさんは自分で料理屋をやりたいという事をずっと思っており、自宅で料理会をやったりして友達と知り合いに料理を提供していた。2019.2020年の二年間は、旦那さんと一旦関東に引っ越し、会社員をしていた。店舗起業の意志が固まり、2021年の夏に川西に引っ越し、かっぱ食堂の開業準備を始めた。きゃめろんさんはまずは、当時川西市が試験的に実施していたレンタルキッチンカーを借りて営業を始めた。2019年に久木田主催のしょぼい文化祭を行った川西能勢口駅の東隣の藤ノ木さんかく広場で、通常は日替わりで内容の違うキッチンカーが出店していた。きゃめろんさんはここのキッチンカーをレンタルして、2021年の秋から沖縄そば屋を始めた。これはいずれ開業する実店舗の営業の前に、商品提供のオペレーションや原料や備品の仕入れのやり方を試して体験し、経験値を積むためだった。実際にお客さんに商品を提供する回数が増え、どういう時にどういう失敗が起きるかを確認した。また、川西能勢口で沖縄料理屋をやってみると実際にどういう人が来てくれるのかを実店舗開店前に見ることができたのは、開業してからのイメージを作る上でとても参考になったときゃめろんさんは語っている。
 また、他の店舗との関係では、きゃめろんさんは今の川西のしょぼい起業の店では一番新しく参入した経営者であり、川西には先行の店舗が複数あるので、開業にあたって先行事例を参考にできる部分は多かった。看板や商品の配置の仕方など、実際に複数の店舗を比較検討して自分の店舗に合うやり方を考えられるのは効率が良い。自分一人で考えて試していたら時間と労力がとてもかかってしまうことを、似た様なやり方や結論を持っている店舗から学習し、短時間・低コストで自分の店をアップデートすることができるのだ。これはしょぼい起業の村をつくる経済合理性の一つだ。具体的な事例が川西市内の手の届く所にいつも在り、方法論の共有という協働関係をつくることができるのだ。その様な意味で、川西にしょぼい起業家として参加するメリットは大きくなって行っている。
 きゃめろんさんは2022年3月に第一子ご出産を控えており、2022年2月からは産休に入った。その間は旦那さんが店を切り盛りする。夫婦で協力して店をやれば生活も仕事も補完し合うことができる。
 


6.スパイスカレーミルズ

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 久木田が川西でスパイスカレーミルズを経営して3年目になる。ミルズは経済的な最前線だ。阪急百貨店の食品売り場の目の前にあり、売り上げを出さねばならない。それがケプリや他の川西での活動も含めた事業全体を支える。
 ミルズ自体はそんなに広い店舗ではなく、客席は7席でカウンターの内側は一人でも店を回せるようになっている。数種類のカレーのルウが窯にはいっており、それをご飯に盛り、お客さんに提供する。常にご飯とカレーが消費されるので、カウンターの内側の店員はカレーを提供しつつ、鍋でカレーを煮込んで作っている。作り方と食材の分量は定型的に決められており、やる事が沢山で忙しくなっても殆ど何も考えずに型通りの作業をすればカレーを作ることができる。ミルズへの物資の補給はケプリの従業員が行っている。ケプリの二階は倉庫となっており、カレーのお持ち帰り容器や冷凍カレーを保存する袋などの店舗用品が備蓄されている。ケプリの従業員がケプリでカレー粉を作り、歩いてミルズまで毎日持って行く。カレー粉作りも決められた定型的なやり方があり、習得するのは簡単だ。ケプリの二階にはカレー粉の備蓄が用意されている。ケプリ従業員はケプリとミルズを往復して、ミルズで足りない物など教えてもらってまた買い出しに行ったりする。ミルズとケプリの店員・従業員の作業は、できるだけ簡易なものになるように久木田は設計している。できるだけ色々な人がカレー屋の従業員として参加することができるようにするためだ。
 また、久木田はミルズで、障害者や就労困難者の雇用促進や就労支援にチャレンジしてみる予定だ。現在、市の福祉課による就労支援制度から一人当事者の人がミルズに就労体験に来ている。
 ミルズは阪急の商業施設の中で休まずに営業しなければならず、そのためミルズに関わる従業員も久木田は徐々に増やしていった。2021年の8月に東京でまるみベーグルというベーグル屋さんをやっていたみっきーさんといしいまきさんのご夫妻が川西に移住し、お二人はミルズの従業員になっている。他にも久木田が東京でえらいてんちょう達と一緒に働いていた頃の仲間や、関西学院大学の後輩、川西市内の主婦の方々も複数名ミルズの店員として働いている。
 ミルズはしょぼい起業の経済規模から一段階か二段階上の店舗で、しょぼい起業関係者だけではなく、川西市内や阪急宝塚線沿線の地域の商業や街起こしに関わる公的な人物が視察にやって来ることも多い。宝塚の阪急百貨店の催事でミルズの冷凍カレーを大量に納品し販売することもある。川西の起業プロジェクトを紹介するにあたって、ミルズは表看板の様な役割なのだ。それは、しょぼい起業・就労支援・百貨店レベルの商業活動・地域貢献など、複数の異なる社会的当事者層に紹介できるものになっている。ミルズや他の店舗に訪ねて来る人達と関係を築き、久木田は人や事業の組み合わせを考えて協働関係をつくる。それを様々な新しい企画に繋げて行く。

7.冷凍無人販売所 冷食屋

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 川西能勢口駅から幹線道路沿いに南下して久代5丁目という所に行くと、「冷食屋」という食品の無人販売所がある。ここのオーナーは最初に紹介した畦野のカレー屋チャンプルのオーナーのマーシーさんだ。冷食屋は実験的な店舗だ。物件は一見するとオフィスの様な感じで、その中に販売用の透明の蓋が開けられる冷凍ショーケースが何台も置かれてあり、中にはマーシーさんが自身の取引先や知り合いから引き受けた冷凍食品が沢山置かれている。冷食屋にはミルズの冷凍カレーをまず置いて、3個1000円で販売した。冷凍カレーには定番のチキンカレーや、キーマカレー、ビーフカレーなどがある。ミルズの冷凍カレーは2021年の一年間で1万個以上売れた商品だ。冷食屋では川西麺業のラーメンとシナノのシナモンロールも冷凍して販売している。冷食屋は川西のしょぼい起業各店舗の商品を数十個単位で買い上げる。
 各実店舗は食品のロスを冷食屋に出している訳ではないが、こうやって各実店舗で商品を作り過ぎても、回収してくれる役割を担ってくれる冷食屋の存在感は大きい。しょぼい起業の店舗が川西に増えれば増えるほど、各店舗から食品を引き受け、冷凍してまとめて売る冷食屋の業容は拡大する。マーシーさんは畦野でカレー屋をやりながら、冷食屋という川西全体の中での補完的なポジションも提案的に実行している訳だが、例えば他にも店舗用の備品や器具を扱うリサイクルショップが川西にあれば、しょぼい起業の村の経済的稼働性は高まる。役割や業態や商流の上下が違う店舗同士が近距離で補完的協働関係を作って行けるのが、しょぼい起業の村づくりのメリットだ。
 冷食屋は非常に実験的な店舗で、マーシーさんが川西市内や色んな知り合いの農家から野菜を引き取り、冷食屋の中に並べ、お客さんが無料で持って行っていい食材を置いている。ミルズのカレー粉の横にカレーの食材のタマネギやジャガイモなどが無料で取って行っていい物として置いてあるのだ。こんな店舗は中々ない。しょぼい起業は最小コストでのスタートなので、自由度が高く、実験的な事ができるのが良いところだ。
 冷食屋は補完的な役割にとどまらず、冷食屋からミルズやシナノや川西麺業などを知って、それらの実店舗に来てくれている人もいる。とにかく協働して販路を増やすのは経済的に効果がある。それを近距離の地域の中で行えるのが川西のプロジェクトの良いところだ。

8.コワーキング・スペース ケプリ

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 ケプリという店は、通常は子ども食堂とカレー粉工場として運営されている。その様子は前回の私のnote(https://note.com/kamocafe/n/n31d9a5118581)でご紹介した通りだ。従業員は現在は3名程で店が回っている。子ども達にカレーを提供しながら、店内でカレー粉を毎日作り、それをミルズに供給している。
 ケプリには子ども食堂やカレー粉工場以外にも様々な機能がある。YouTubeの撮影スタジオや事務所として使っているし、二階は倉庫になっている。自分も起業したいと久木田に連絡をして川西に来てくれた人にコーヒーを出して談話する場所としても使う。コーヒーの焙煎教室も行っているし、ミルズの従業員の休憩場所、ケプリ・ミルズの関係者の小さい子どもの面倒を見る場所などとしても使っている。ケプリは店だが、様々な機能を持つコワーキング・スペースなのだ。ケプリはコンピューターで例えたら、何でも入れていいフォルダだ。
 ケプリは2018年2月に開業して現在で5年目に入るが、ケプリには本当に色々な人達が集まるようになった。川西市役所の福祉課の職員さんがケプリを視察に来ることもある。ミルズで障害当事者の就労支援を行っている事と、ケプリは子ども食堂を運営しており、店員にも障害当事者がいるので、市としても福祉分野の支援の実例として広報ができるのではと考えてくれているようだ。ケプリには子ども食堂や地域貢献などの社会活動の協力をしたいという電話がかかってくることも多く、人・物・情報が集まるようになっている。


9.ネズミハウスDIY

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 久木田は現在川西市内に自分の家を作っている。2021年末に土地と古い家を買った。今、内装を撤去し、骨組みと屋根と壁だけになった家を、自分で修理し改造して行っているのだ。アメリカではDIY(Do It Yourself)という自分の手で家や家具や車を作る文化がある。久木田は川西でそれをやってみようと思った。久木田はこの自分の家を作ることをネズミハウスDIYと呼んでいる。ボロボロの家の中でネズミの穴を発見したのだ。
 家を自分で改造するのは体力や筋力や設備の設計の力が要るが、この様な現場作業系のチームも川西で作りたいと久木田は考えている。久木田は昔東京の池袋近郊で、リサイクルショップや引っ越し作業や万屋のような仕事をやっていたことがあった。川西の中に、店舗用品のリサイクルショップや店舗の引っ越しを手伝える現場作業系の店ができれば、それと一緒にDIY系の事業活動もできる。物理的に物件をゼロから再生できるチームを自分で持てば、街づくりの実行に非常に有効だ。川西の参加者達が自分の得意なことを活かせる協働関係を作って行っているので、この構想も実現するかもしれない。


10.川西ケプリタウンの社会学~しょぼい起業の街づくり~

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 このnoteで紹介した店舗やプロジェクトは、全て川西の人達が自分達の手で一から作り、協働関係を作り、社会的な実験を行っていっているものだ。「しょぼい起業」を提唱したえらいてんちょうは元々は20代の中頃に久木田と出会い、久木田が神戸元町の高架下の物件を安く賃借して、仲間達と自分達で店の内装や道具を作って店を盛り上げていたのを知り、経済社会活動としてのしょぼい起業の形を作り、発展させていった。
 川西の人々はそれを継承して、自分達の手で店舗・商品・看板を作り、営業をし、商業的・経済的なネットワークを地域に作っている。店舗経営として参考になる先行事例も増え、知見も蓄積して行っているので、川西ではできる事が増えて行っている。えらいてんちょうは著書『静止力』の中で、若い人達は地元の名士を目指すべきだという社会的提案をした。川西の人々はそれを実行している。
 このnoteを読んで川西に興味を持っていただけたら幸甚だ。川西で、川西一同がお待ちしております。

11.川西見学ツアー・就労体験募集

・川西のしょぼい起業村をご案内します
・カレー屋研修制度あり
・カレー賄い付き
・寮あり
・久木田による起業コンサルあり
・川西への移住も支援します
・詳細は久木田(through12345@gmail.com)までメールくださればご返信差し上げます
・久木田Twitter(https://twitter.com/fbtfumiel
・ケプリTwitter(https://twitter.com/KhepriCo
・チャンプルTwitter(https://twitter.com/kawanishicurry
・川西麺業Twitter(https://twitter.com/kawanisimengyou
・國屋シナノTwitter(https://twitter.com/kuniya_cinano
・シナノTwitter(https://twitter.com/cafe_cinano
・かっぱ食堂Twitter(https://twitter.com/kappasyokudo
・冷食屋Twitter(https://twitter.com/reisyokuya


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