見出し画像

がんばれ日本の大企業

ここのところ新聞を読むと、3月決算の会社の決算報告(上期)と通期の見通しについての記事が目につきます。
「増益」という文字もたまにあるものの、多くのケースで「下方修正」や「減益」の文字がたくさん目に入ってきます。
特に電機や機械系の大手メーカーの苦戦が目立っていて、すでに発表されているところで見ると、17年3月期の連結純利益がパナソニックは従来予想の1,450億円から1,200億円に修正、ソニーは従来比25%減の600億円に修正しました。精密器メーカーのキヤノンは12月決算ですが、当期利益が前期比で25%減の1,650億円に下方修正、リコーはさらに状況が悪く前期比71%減の180億円との見通しを発表しました。

これらの企業だけでなく、状況が思わしくない多くの企業が言っているのは円高による収益の悪化、あるいは円高での景気低迷を理由に挙げています。
さらにトップのコメントを拾ってみると、パナソニックの津賀社長は、「太陽電池事業分野は、電気自動車関連の先行投資をしていて必要な赤字である。」とか、ソニーは「電池事業の村田製作所への譲渡に関連した損出計上などに伴う修正」ということでした。
また、キヤノンは、「円高と新興国経済の停滞長期化に加えて、既存事業の伸び悩みがあり、新規事業が思ったスピードで伸びていない。」というコメントで、リコーは、「想定よりも景気が弱く売り上げが伸びず、さらに構造改革に伴う費用計上をした。」ということでした。

すべてをまとめて言うのは正しくないかもしれないし、それぞれの内情はわからないのですが、どうもそれぞれの状況、コメントなどから大きく改善するような雰囲気を感じられないのは私だけではないと思います。

最近、三枝匡さん(事業再生の専門家。ミスミグループの社長など歴任。)の本を読んで改めて日本企業の状況を思い測って感じるのは、今、日本の老舗大企業(特にメーカー)で起こっていることは、かなりの部分が共通の、しかも根本的に大きな問題点なのではないかということです。(トヨタだけは違う、というようなことを言うコンサルの方たちもいますが、私はトヨタの内情も良く知りません。・・・トヨタのことを書くと本が売れる?!)

いくつか私なりに考えている大きな問題点は、
・硬直化した組織(外見を変えても本質が変わらない組織)
・大量生産時代の名残で機能組織(専門組織)を引きずって全体を俯瞰できない。あるいはそういう人材を育てられない。
 だから、リーダー、次の経営者が育たない。今の経営者も本物が少ない。
・自分たちの間違いを認めない。他者から学ぶのが下手。(アメリカは必死で日本から学び(盗み)日本を追い越していった。)
・危機だ危機だと言って、本当に危機感を持っていない。(上から下まで)

まだまだ挙げられますが、要は本質的な課題に到達できない、あるいは到達しようとしても組織の壁をまたいだ改革を進められない。それをトップに期待しながら、有能な人ほど無力感を抱いてしまう。

一番大きな問題は強いリーダーの存在で、これについては強い危機感を持っています。今の経営者もそうですが、多くの日本企業で次のリーダー、強い経営者が育つ土壌が本当にあるのでしょうか?コンサルを雇ってきびしい研修をやることとは違うように思います。(それも必要ではありますが)

先日、ある会社の社員の方から聞いたのですが、ネガティブな決算報告を外部にする直前に社員向けに社長からメッセージが出たようですが、そのメッセージは、「私たちのやっていることは間違っていない。これからも頑張ろう。」という趣旨のメッセージだったそうで、社員たちはたいそうがっかりしたそうです。きっと何も反省していない、何も変えようとしていない、という言葉として伝わったのではないでしょうか。

大企業に比べると、明るいのはスタートアップの世界です。
日本でもベンチャー企業をサポートするしくみや体制、風潮が出てきて、今ベンチャーはとても元気に見えます。
大企業も、自分たちだけではイノベーションを起こしにくい、特に新規事業は外部と連携したいということでベンチャーの支援を積極的に始めています。
先日、東京虎ノ門で行われたイノベーションリーダーズサミットというイベントでは、非常に多くのベンチャー企業と大手企業とが参加して、マッチングイベントなどで交流をはかっていました。

私は、今の日本企業が本当の意味で再生していくための一つの方法は、このベンチャー企業と大手企業の関係を活用することではないかと考えています。
人材の交流、つまり大企業は、特に若い人材をどんどんベンチャー企業に送り出して(雇用を切っても、また切らない人事制度を作ってもいい)、人材を流動化させてスタートアップのアクセラレーションの一環にしていくということもあるし、あるいは大企業のまどろっこしい決済プロセスをベンチャーの名前を借りてやりたいことをさっさと出来る仕組みを作ったり(これらについては、詳細なアイデアがあるのですがそれはまた別途)、ベンチャーと大企業の間に人事、業務プロセスなどの面でフレキシブルな空間を作ってやることで、ベンチャーの成功確率も上がるし、大企業もスピーディにベンチャーを取り込んだり、人材を強く(小さな専門家でなくオールマイティな人材を作る)することでWin-winな状態にすることが出来るように思います。

また、大企業の再生には、もちろん王道のやり方もあるはずです。
かつて、カルロス・ゴーンが日産をリバイバルプランで見事再生させたように、トップ自らが本質の課題をしっかりと捉えて、スピーディに改革していくやり方です。やっている間は単なるコストカットだと冷ややかな目もあったようですが、うわべのコストカットではなく本質的な課題を捉えていたことが勝因だったのではないでしょうか。

そういう意味でもうひとつ気になるのはシャープの動向です。
鴻海から載正呉社長を迎えてまだ間もないですが、先日の発表で、4-9月期はわずかながらではありますが黒字(営業利益で7,900万円)になったとのことで、17年3月通期では、営業利益で257億円の黒字、連結損益で418億円の赤字(前年度は2,559億円の赤字)と大幅に改善するという発表でした。
載社長のコメントからは、「まずはコストカットを始めていて、次は取引先との不利な契約を鴻海の力を使って是正する。中期経営計画は4月をめどにまとめて発表する。」というものでした。
内情はわかりませんが、何か変えてくれるような期待を持ってしまいます。マスコミとしては、まだまだ不透明感が強く様子見という立場が多いようですが、シャープの再生は日本企業にとっても大変歓迎すべきことかと思います。

ただし、日産のケースもシャープもトップが日本人でないというのが、少しだけ気になります。
がんばれ日本の大企業。がんばれ日本の次の経営者たち!というところです。

電機メーカー企業にフォーカスして、経営と業績を客観的にウォッチしていきたいとメディア情報などをまとめていきます。

電機メーカー企業ウォッチャー




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?