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教えることで教わることがたくさんある

伝わらないメカニズム

人に何かを伝えることって、意外に難しいことだと感じることがあります。

こちらの言葉が、相手にどのように伝わって、それを相手がどのように受け止め、そこから何かを学んでくれたのか、あるいは、真意は伝わっても、それに賛同されずにスルーされたのか、あるいは、間違って解釈されてしまったのか、相手が言葉で反応してくれればいいのですが、黙ったまま、あるいは、頷いているだけだと、実はよくわからないことがありますね。

自分が伝えようとしたことが相手に伝わっているかどうか、それを確かめようとする気持ちがあればいいのですが、多くの場合、私は相手に伝えたのだから、それは伝わったはずだと、何の疑いも持たないというのが実は普通なのかもしれません。

恋人同士、あるいは夫婦の間で、自分はちゃんと話したし、自分の考え方は伝わっていると思っていたけど、しばらく経って相手は全く納得していなくて、喧嘩になるってことを経験した人は多いのではないでしょうか。

恋人や夫婦の会話、友人同士の会話、職場での仕事のやり取り、すべての人と人のコミュニケーションで言葉がしっかりと伝わったかどうかを、ちゃんとお互いが確認するようになれば、人間関係ってもう少しスムーズになるのかもしれませんが、これは簡単なことではないですよね。

技術コンサルタントとして、様々な企業の方たちに、私の持っている知識やノウハウをお伝えする機会があります。

コンサルタント、士業、あるいは先生業というのは、自分の知識やノウハウを他人に伝えるのが仕事ですから、まさにプロプロフェッショナルであるわけなのですが、プロであっても、あるからこそ、人に伝えることを真剣に考える必要があると思います。

「日日是好日」という映画の中で、お茶の先生役の樹木希林さんが、なかなか上達しないで、20年も通っている黒木華さん扮する生徒さんに向かって、「あなたもそろそろ教えたらどう?教えることで教わることがたくさんあるわよ。」というシーンがあって、私自身が普段から感じていることでもあったので、少し取り上げてみようと思いつきました。

思い込みの違い

ご子息が小学校や中学に行っているなら、一度は勉強を見ようとしたことがありませんか?あるいは弟や妹に対して、勉強を教えるという経験はいかがでしょうか?

一生懸命教えてもわからなくて、「なんでこんなことがわかんないんだよ。」なんてイライラしたことってありませんか?

客観的に考えればわかることですが、まず、あなたの相手に対する前提条件が間違っていませんか?ということです。

もともと何がわかっていて、何がわかっていないのかを理解しなければ、相手はあなたがいくら正しいことを言っても理解することができませんよね。

人間は思い込みの塊だと私は思っています。
どんな人も、その人の知識や考え方というのは、その人が日々積み重ねてきたことの結果であって、他の人とはまったく違うものです。

人に何かを伝えるときにうまく伝わらないときは、あなたの思い込みと、相手の思い込みが違うのだと学べばいいのです。

自分と相手の前提条件の違いに気づくことは、あなたの「思い込み」を一つ取り除いてくれることになります。

伝えられる相手から考えてみると、こちらが言おうとしている内容を理解して自分の知識にするには、少し工夫というか、言外のことを理解する必要があるのだと気づくことになり、その気づきによって、ああそういうことかと腑に落ちていくのではないでしょうか。

教える側は、前提条件の違いという自分の思い込みに気づき、さらに、相手が納得するために、自分の言葉が足りなかったことや、言葉が不適切であったことにも気づくことが出来ます。

人に何かを伝えようとしたときに、はっきりと反論をもらうことも、ないことはないですが、稀なことかと思います。

反論してもらえれば、そこで正しい議論をすれば、お互いに得るものがあって共通の知識が出来上がると同時に、教える側が明確に相手から教わるということにもなります。

しかし、反論がない場合、すんなりと伝わらなかったり、誤った状態で伝わってしまったりした場合も、それは教える側に、「思い込み」の罪を教えてくれるのです。

人が学習するということは、自分が知らないことを知ることだけではないと思います。

自分が知らないということさえ知らないこと、存在さえ知らなかったことの存在を知ることも学習の一つであるし、また、自分の思い込みや、間違った知識を知ることも学習です。

人に自分の持っている「知識」や「ノウハウ」を伝えようとすると、その「知識」や「ノウハウ」を相手側が自分のモノとして受け継ぐために、何か工夫したり、さらに別の知識を追加しなければならないことに気づかされます。

その気づきが、元々持っていた「知識」や「ノウハウ」に何かを付け足してくれるのです。

人に何かを伝えることは、コミュニケーションの基本です。

何かを「教える」のではなく、共通の財産を作っていくことだと思います。

人に何かを伝えることを組織のメンバー全員が上手に出来るようになると、コミュニケーション力が上がり、組織が活性化されます。


小さな勉強会

組織内で「小さな勉強会」を開催してみませんか?

交代交代で、それぞれが持っている、どんな些細なことでもいいので、お互いに伝えあうことをやってみてください。

業務開始前の30分でもいいし、終業後でもいい。

人に何かを伝えることの訓練になります。

プレゼンテーション研修という方法もありますが、単に「小さな勉強会」を繰り返しやるだけで、プレゼン力も上がるし、教える方と教わる方、双方が学び、成長していきます。

私自身も、これまでたくさんの技術者の方たちに、たくさんのことを伝えてきました。

伝えたことの数だけ、私自身にも学びがあったのですが、その学びを、次の伝えることに使うようにしています。

つまり、人に何かを使えながら、何かを学ぼうとしていると、「知識」や「ノウハウ」が雪だるま式に膨らみます。

「人に教えることで多くのことを教わる」

ぜひ、実践してみてください。

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