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愛社精神の底力

4月の第一週といえば、スタートの週ですね。

今週、入学式や入社式などの光景を目にすることも多かったし、たまたま病院へ行ったら、新人の看護師さんたちが病院内を見学している姿をみて、こちらも何かちょっと清々しい気持ちになりました。

最近何年かぶりに「スターバックス成功物語」という本を読み返してみて、愛社精神というか、自社の製品、会社そのもの、あるいは会社のお客さんたちへの社員や経営者の想いの強さって企業の力そのものだなって思って、それと入社したばかりの新入社員の人たちとが重なって、愛社精神の力について考えてみました。

私自身が就職したころ(もう35年位前)は、終身雇用が当たり前だったので、入社したとき、この会社で定年までお世話になるだろうと考えていたこともあって、愛社精神というか、この会社に人生そのものを捧げるくらいの想いが自然とあったのだと思います。

運がよく、とてもいい上司や先輩にも恵まれ、またいい仕事にも巡り合えて、愛社精神を持ち続けていたと思います。

入社6年目に業界で初めての商品開発に参画させていただき、それが大ヒットとなるなどもあって、特に意識をしたわけでもなく愛社精神はさらに強くなっていったと思います。
その商品が展示会に出展されると、仕事そっちのけで展示場に毎日足を運び、展示場の陰から一日中様子を窺っていたのが今でも思い出されます。

これは私だけでなく、同じ世代の同僚たちもいっしょでした。
仕事も余暇も毎日が楽しく、上司の目を盗んで自分のやりたいことを率先してやる雰囲気が会社の中にありました。

今の時代、こんなことを言うと叱られますが、残業は何時間やってもまったく苦ではなく、忙しいときは会社に棲んでるのではと思われるくらいでしたが、それでも楽しい会社生活でした。

今考えると、これってすごい力だと思うのです。

私は、こんなに愛社精神を持っていたのですが、入社17年後にさらなる挑戦をするために転職してしまうのですが、そのときいっしょに開発に参加していたメンバーたちの多くは、その後、その会社の幹部社員となっていきます。

最近は、若者たちの離職率なども高くなっていると言います。
入社後数年で転職することに抵抗がなくなっているとも言われます。

日本はあまりにも終身雇用が長く続いていて、確かにその弊害もあったように思いますが、何か簡単に会社を離れていくのには、少し残念な気もします。(前向きな転職は個人的には大賛成)

今、私は複数の会社でコンサルタントをしていますが、共通して感じるのは、若い人たちが”モチベーション”という壁にぶち当たっているケースが、私たちの若いころに比べると、すごく多くなっているように感じます。

会社の中でチャレンジさせてもらえる確率というか、チャンスをもらえる人が少ないのかもしれません。つまり、会社そのものがチャレンジをあまりしなくなっているからなのだと思うのです。

長い間、同じ事業を同じように続けることで収益のほとんどを確保して、会社をどちらかというと守る企業が多かったのだと思われます。特に製造業では、それが顕著なのだと思います。(ちなみに私の顧客企業は100%製造業です。)

経営改革、組織改革などをお手伝いして、必ず出てくるのも「社員のモチベーションをどう上げるか」ということなのですが、課題としては多く取り上げられるのですが、現場マネージャと経営者とで具体的にどう対応していくかとなると、少しあきらめムードで相談されるケースがほとんどです。

おそらく10年、20年という単位で、会社としての挑戦が減っていって、多くの社員、中間マネージャーにチャレンジの経験がない組織で、しかも、既存事業を守るための仕事にアップアップ状態のなかでは、どんな解決策もすぐに「絵に描いた餅」になっていきます。

トップは、簡単に既存事業を守りつつ、新しい挑戦で新しい収益源をXXくらい作りなさい、と命じます。
そう、トップ方針は間違ってないのですが、現場には、その地力と気持ちが追い付かず、結局、何もできない状況が続きます。

かなり多くの企業がこういう状態なのだと感じています。

会社経営は、1980年代のTQCのころとは、変わってきています。トップ方針が優秀な部下たちによって順次確実に実行される時代ではなく、成功体験の少ないミドルマネージャが、現状を守るのに四苦八苦している状態です。

会社経営はトップと現場が一体となって、求める施策を、詳細な計画に落として、実行の障害になることをすべて排除できるような行動プログラムを綿密に立てて実行していかなければいけないのだと感じます。

そして、実は経営手法云々の前に、全社員(と言わなくとも、出来るだけ多くの)の愛社精神を入社時から低下させないことが、今、とにかく考えるべきことなのではないかと思うわけです。

きれいな言葉で、「社員公募制の実施」とか、「社内ベンチャー制度の立ち上げ」とか、「新規事業にXX億円投資」とか言っても、本質の課題を見失ったままでは、何も起こらないのです。

いろいろと試すことはいいことですが、何が根本の障害なのか、どこを抑えなければ、折角の施策が生きないのかをプログラムに入れることが肝要です。

そして、最も大事な障害は、「新入社員たちの愛社精神が、日に日に低下してしまうこと」なのだと認識することです。

この入り口にある障害を抑えつつ、ミドルのやる気と地力を時間をかけて上げる、トップの現場への直接サポート、その上で初めて面白そうな施策が生きてくるのではないでしょうか。

かつて、入社後に愛社精神がポジティブ・スパイラルで上がっていった私の世代と、今の多くの企業の負のスパイラルの差は、実はものすごく大きいと認識してください。

1.01の法則というのがあります。1.01を365乗するのと、0.99を365乗することを比べてみてください。(ぜひ、電卓で計算してみてください。)

本来、これは会社側に伝えたいメッセージでありますが、新入社員の皆さんやまだ入社1、2年目という皆さんにも、ぜひ考えてほしいと思います。

忙しすぎて、上司や先輩も疲れ切っている部署にいるとしても、その状態に巻き込まれずに、むしろ先輩方に元気を分けてあげながら、大好きな会社を盛り立てる、という考えを長く持ち続けてください。

実は私の娘も今年から社会人です。娘の応援も兼ねたメッセージとさせていただきます。


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