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原田マハ『リボルバー』と大叔母さん

(この文章は小説のネタバレを含みません、というかあんまり内容に触れてなく、思い出話に近いものです)

10/4 発売の『anan』2367号に寄稿させていただきました。現役書店員芸人のカモシダせぶんです。

特集が「言葉のチカラ。」ということで会話が印象に残る本をいくつか紹介したんですが

その中で特に、思い入れがある一冊の話を書きたいと思います。

原田マハ先生の長編小説『リボルバー』

あらすじは

パリのオークション会社に勤務する高遠冴の元にある日、錆びついた一丁のリボルバーが持ち込まれた。それはフィンセント・ファン・ゴッホの自殺に使われたものだという。だが持ち主は得体の知れない女性。なぜ彼女の元に? リボルバーの真贋は? 調べを進めるうち、冴はゴッホとゴーギャンの知られざる真実に迫っていく。傑作アートミステリ。(Amazonより引用)

この本に出合ったのは今年の春。ある老人ホームの一室でした。

そこに暮らしてるのは、僕のおじいちゃんの妹。大叔母さんに当たる人です。読んでる皆さんの中で「大叔母さん」と付き合いが多いって人はあんまりいないでしょう。だけどこの大叔母さんは親戚の中でも人気者のエネルギーたっぷりな人。

とにかく感覚がずっと若くて強い。それが大叔母さんのイメージです。

大叔母さんって本人に言ったこと無いんで、イニシャルでC叔母さんと書きます。ホントは若々しすぎて【Cちゃん】と呼んでますが、それはそれで皆さんがイメージしづらいと思うんで。

そもそも僕が本を読むようになったのは、父親の影響が強いんですが、そんな父親から小さいころ、このC叔母さんに面白い小説を教えてもらってたという話を聞いてました。

だからこうやって僕が本を紹介するお仕事ができてるのもC叔母さんのおかげだなーとも思ってます。

C叔母さんは未婚で子どももいませんが、ウチの父方が割と皆近所に住んでいたのもあって、ウチの父親世代にとっては叔母さんというより「年の離れたイケてるお姉さん」といった感じだったと思います。とにかくカッコいい女性だから昔モテたんだろうなぁ。と更に年の離れた僕ですら思うんで。

C叔母さん、本当にエネルギーの固まりでお笑いも大好き。昔、父親を連れて寄席にも行ってましたし、僕が芸人になってからは従兄弟とライブ見に来てくれたり。しかも終わった後の感想が「良かったよ~」とかじゃなくて「あのコンビのあのボケが良かった、あっちのコンビはツッコミの子に華がある、みっちゃん(僕)面白かったしオチも良かったけどもう少しボケ数増やしたら?」というガチお笑いオタ意見。毎年M-1やキングオブコントも見てたし、凄く「今のお笑いが」好きなんだろうな。と一芸人として、とても嬉しかったです。

運動神経も昔から抜群で50歳過ぎてから水泳始めたら、あれよあれよと大会で勝ち上がり、海外に行ってたりもしました。凄すぎ。

そんなC叔母さんが数年前体調を崩して入院を繰り返すようになりました。中々普通に歩くのも難しくなり、老人ホームに入居、その後もケガや病気で何回か入院することに。

老人ホームの入居や病院の入院でC叔母さんが引っ越す度、父親や親戚と共に手伝っているんですが、とにかく本が多い。

しかも世代がかなり広い、名作から最近の話題作まで。もう80過ぎてるのに。ここに来ても「この人若いなー」と思い知らされました。

そんなC叔母さんの引越し途中で見つけたのが原田マハ先生の『リボルバー』

実は叔母さんは絵を描くのもとっても上手で、勉強も熱心。国内、海外の美術館も見にいったりもしてたそう。マジスーパーレディです。

C叔母さんとは逆に体育も美術もてんでダメ、学生時代、大体1だった僕。なので美術関係の小説はイマイチ読もうと思わなかったんですが、読書センスがあるC叔母さんが持ってるんで興味が湧きました。

『Cちゃん、コレ借りていい?』本人の許可を得て借りて読みました。

激烈に面白かったです、ananにも書きましたが会話によって生まれる迫力が物凄かった。またこの小説には常に「ゴッホとゴーギャンの人生の残り香」が漂っていて、何世代にもわたって沢山の人物が語り部として出てきます。

良く配信とかで言ってますが、僕は小説を読むとき脳内で登場人物を自分の周りの人で配役して読んでます。なのでC叔母さんもこの話の重要人物にして読んでました。そうしたことでよりグッときたシーンもあって、借りて本当に良かったなと思いました。

単行本が出たのは2年前、ですが最近文庫化されたのでananの企画が来た時にこの本をぶつけました。幾つか出してるんですが編集さんの反応が一番良かったのが『リボルバー』。嬉しかったなぁ。

僕にとって尊敬できる女性の一人がC叔母さん、その人のおかげで超メジャー女性誌ananに記事が載るの、なんか凄いグッときます。

ホームに行ったとき二人きりで何回か喋ってるんですがある時C叔母さんがポロっと

「私昔、東京の書店で働いてたんだよね」

と言ってきた時は驚きました。全然ダサい生き方してる僕と、超カッコいいC叔母さん、共通項あるもんだな。

今度ホームに行ったときanan持ってこう、めちゃ若々しいから僕の記事より

表紙のSixTONESの田中樹さんの方に興味湧くかもなぁ……


以上が僕とC叔母さんとの思い出。もし上記の思い出、350円ぐらい払っても良いなって感じだったら有料部分買ってもらえれば。

有料はそんな叔母さんに唯一怒られた話と叔母さんの代わりに有名作家さんにサインをもらってきた話を。

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