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【A Pinch of Psychology】1:Handness-Lefty 左利きの心理学(2)

心理学的にみた左利きの話の続き。その1↓

遺伝?

左利きのことを単純に遺伝であると結論できないのであるが。それでも、近年における科学の発展ぶりは素晴らしいもので、1970年代あたりから始まっている利き手の研究においても最新の科学は色々なデータを提供している。下の引用記事。これは、最近の研究によると、おそらく40近くの遺伝子が利き手に影響しており、個々の遺伝子の力は弱いのだが、40個がまとまることで利き手に作用しているのではないか、という発見があったらしい。

The U.S. National Library of Medicine stated, “It was initially thought that a single gene-controlled handedness. However, more recent studies suggest that multiple genes, perhaps up to 40, contribute to this trait. Each of these genes likely has a weak effect by itself, but together they play a significant role in establishing hand preference.”

https://online.notredamecollege.edu/left-handed-brain-differences/

遺伝が原因か?と思われる事象においては、よく一卵性と二卵性の双子を対象にそのデータを比較する研究が行われるが、これらの研究ではあまり有意な差が見つかっていないらしい。双子は同じDNAを共有するため、遺伝か環境かという研究においてデータを取りやすいのある。

別の面白い研究。胎児の動きを見ることによって分かったことは、妊娠15週目までに、90%の胎児は、お母さんのおなかの中で右側の親指を咥えているのだという。その1で出した統計を思い出してほしい。左利きの人口は10~12%ほど、という数字をここでもサポートしている。

Fetuses show a strong preference for arm movement early on in development. By the fifteenth week of pregnancy, 90% of fetuses prefer right-sided thumb sucking. These initial preferences are correlated with handedness later in life, illustrating that handedness is partially developed before birth.

https://www.sciencedirect.com/journal/neuropsychologia

更にここでは、利き手の好みというものは、生まれる前からの発達の一部である、と結論づけられている。

ちなみに、両親がどちらも左利きであった場合、子供はどうなるか?という研究もあるのだが、意外なことに子供が左利きになる確率は26%くらいなのだという。100とは言わないけど、50%とか75%くらいの高い率で出てもよい気がする。

ちなみに私の家では、父親が矯正された左利きの人であり、父は書き物は右だったが、お箸だけはどうしても矯正できず、左だった。ゆえに、私が幼い頃に矯正をした時、チビだった私が泣きに泣いて、お父さんはいいのに!なんで!私は!!と言ったために、利き手矯正は3年生くらいの時に終わりを告げた。3人きょうだいであるが、左利きなのは私だけである。なので個人的には遺伝子要素というのはかなり強いのかなぁと思う。

その1の記事にいただいたコメントでもママが左利き、もしくは両利きであり、何人かいるお子さんたちのうち1人は左利きです!なんてコメントをいただいたのでやはり環境要因以外の強い因果関係はあると思う。

で、結局のところ、他の色々な心理研究に当てはまるのだが、結論は、遺伝と環境両方で、色々複雑だからまだよくわからん、となっているらしい。

The ‘vanishing twin’ hypothesis

で、こちら。面白い説がある。訳すると「消えた双子説」なんだかミステリー小説の題名のようだが、これが遺伝やその1の記事でペンの持ち方なぞを紹介した理由でもある。

この消えた双子説というのは、左利きの人は、胎児の頃は実は双子であり、右側にいた赤ちゃんが胎児の発達が始まる早期の時期に成長しきれなかった(で、生まれた赤ちゃんが左利きだった)利き手が矯正できなかった左利きの人、Non-Inverted writingタイプの左利き、矯正ができなかった左利きの人はおそらく高確率でこのタイプなのかもしれない、というものなのである。で、その中でもLRRTM1 geneなる遺伝子がおそらく強く関係しているのであろう、とのこと。英語参考文献である↓ びっくりではない?!びっくりしたよ!私は!

私はこれを知覚・認知心理学のクラスにて聞いた時、心底驚いた。そして、改めて心理学という分野に強く惹かれた。更に、さらに。こちら↓

It may be influenced by levels of testosterone or oestrogen during pregnancy, and early experience with holding and throwing things can also affect later hand use.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33454315/#:~:text=Prenatal%20sex%20hormone%20exposure%20was,associated%20with%20weaker%20hand%20preference.

もしかしたら妊娠中におけるtestosterone や oestrogenといった性ホルモンの影響もあるのかもしれない。なんということでしょう。

私が専門的に研究していた分野は性ホルモンがいかに人間の感情やストレスに影響するか。学習・記憶能力に影響を及ぼすかといったようなことであったので、この論説を知った時、大層、興奮したものである。

後、蛇足ながら最初にやらされたプロジェクトはセックス・快楽のホルモンが偏桃体(脳みその部分)でどんなふうに働いているのかをドーパミンのタイプによってどう違うかとか、それが生殖活動にどのように影響するかといったことについての研究をした。性ホルモンの世界というのは大変、奥が深く、これもまた色々な研究がおこなわれているので、このシリーズでもつづっていこうと思う。

底なし沼

思うに、心理学というのは沼なのである。ここに書いたのは主に遺伝などに関する利き手の話に終始してしまったけれど。例えば、ダヴィンチ、ベンジャミンフランクリン、エジソン、アリストテレス、アインシュタイン、ダーウィンなど左利きだったので、左利きは知能が高い傾向がある、という論説があるものの、確証は見つかっていない。

進化論的観点からみるとチンパンジーもまた左利き、右利きがある、という研究。どんな人にも必ず一つは利き手でない方の手で行う動作があるらしいという研究も存在する。私はかぎ編みのみ、右手を使うことに最近、気づいたのでなるほどなぁと思った。

右利きの人に比べて左利きの人は11倍、アレルギー持ちである傾向が高く、また不眠症の率も高いという研究もある。これは私に限って言えば当てはまっているので、むぅん、となる研究である。

American teachers and doctors in the early 1900s believed that left-handers were more prone to mental disorders and pressured students to switch hands.なんと1900年代は、アメリカにおいても左利きというのは、精神疾患であり、利き手を強制させていた事実も存在する。その1で書いたレーガン大統領とかの話もこれ。

更に上げれば、creativity, imagination, daydreaming and intuition. つまり想像力に長けている人が多いという説もある。これもその1にいただいたコメントの私も左利き、両利きですよ、の報告から。noteには左利き、両利きの人が多いですよとのコメント。とすると、noteはそもそも創作をしたい人のためのプラットフォームであるので、理に適っているように思う。何ならnoteユーザーそして他のいくつかのSNSから無作為に同じ数のユーザーを選び調査してみたい!!などというリサーチャー魂が震えてしまっている私である。

単に利き手の数の多さを調べるのではなくて、例えばnoteは最近、エディター機能が新しくなったけれど、エディターとか記事の表記とかもしかしたら左利き、両利きさんらの数によってはなにか変えたほうが使いやすいとかわかるかもしれんし。その1で書いたけれど、基本的に世の中のものって右利き用に作られているから、そうで無い人は、無意識のうちに地味なストレスが存在することになるわけで。データの使い方は色々あると思うから、noteのえらい人が雇ってくれたらいいな😂

心臓発作からの回復は左利きの人の方が早い、アルコール中毒になる率が高い、右利きの人に比べて4~5か月ほど思春期になるのが遅い、言語発達に問題がある、左利きは男性に少しばかり多い、ゲイの男性は左利きが多い、キーボードを打つのが早い、早口言葉が下手、精神疾患にかかる率が高い、などなど。とにかくありとあらゆる角度からの研究がおこなわれている。

でも、早口言葉て……誰が一体、何の目的であえてそこを研究・調査しようと思ったあのであろうか(謎)でも言われてみれば、私も下手である。すごく。

そこに宗教学的な要素、文化的な要素を加えると研究対象は更にひろがる。例えば、イスラム教においては左手は不浄の手であるのでイスラム教圏における左利きの人の研究もあれば、キリスト教においてもThe right hand of God;  to be at the right side "is to be identified as being in the special place of honor。神の右腕というのはとても神聖なものなのであるとされている。そんなことまで交えて考え始めると、終わりなき沼なのである。

だからこそ楽しい。私が心理学に憑りつかれるような形で興味を持った・持ち続けるのは、「当たり前のものだと思うのに、実のところなんでか理由がわかっていない」からである。小説・漫画『氷菓』に出てくる女の子ではないが、「私、気になります」というやつである。気になるのである。だから知りたい、だから調べたい。

正直なところ。心理学は、あまりつぶしの利かない学問である。専門職に就ければそれは良いし、私の場合はラッキー事項が重なり、これまでの研究経験を現在の職で生かせてはいるものの、研究なんてものは日々、ものすごいスピードで進化・発展していくものであるので、現場にいなければ置いてけぼりになってしまう。なのでNoteでこんな風に記事を書いてみるのは、単に自分のためのBrush upという点もあるし、まぁ会話の小ネタくらいにはなるんじゃないの?的な意味もこめてのA Pinch of Psychology。ほんのちょっぴり、一つまみの心理学、なのである。

またそのうちなにか、「私、気になります」的なネタがあれば心理学に絡めてこのようなお話を書いてみたいと思う。そして、もしあなたに「私、気になります。で、心理学的にどうなのよ?」というネタがあれば教えてください。このような記事ですが、色々調べてまとめます。

以下のサイトは利き手と心理学、左利きと心理学の割と新しい研究を紹介しているサイトです。


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