瑞波かな
現実と幻想の隙間を歩く少女。 そんな女の子のお話を書きたい。
朝の訪れは、毎回私を憂鬱にさせる。 時計のアラームも鳴っていないにのに、カーテンの隙間から零れる朝日の光で目が覚めたなら、気分は最悪だ。 「ふわ……ぁ」 欠伸で開いた口を片手で押さえながら、もそもそと布団を出た。 また、一日が始まる。 そう思わせる朝が、すこぶる嫌いだった。 キッチンへ行き、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを冷蔵庫から取り出し、半分くらいを一気に飲んだ。乾いた身体が芯から潤いを取り戻していくのを感じて、口を離した瞬間、「今日も生きてるんだな」と
三学期の、卒業式も修了式も終えた春休み。私は近所にある桜並木へ向かうため、家を出た。天気の良い昼下がりの外は春に相応しく、程よい陽気がじんわりと身体を暖める。暑さも寒さも苦手な私にとって、春のこの気温が一番好きだった。 同じく休みであろう小学生くらいの子が数人、はしゃぎながら私の横を駆けて行く。楽しそうだなぁ、と羨ましく思ってしまう。いつからだろう、無邪気に笑って過ごす自分を見失ってしまったのは。 歩いて十五分程。住宅地から少し離れた山の麓へ到着する。道の両側には満開の
「わぁ、なんて高いんだろう!」 まるで無邪気にはしゃぐ幼子の様に、嬉々とした声で少女は言う。 深夜、初めて忍び込んだ学校の屋上。冬の冷たい風が、身体の芯から体温を奪う。口元からは吐息が、白いもやとなって視界に入り、消えていく。 物心ついた時から、少女は空を飛ぶことを夢見ていた。乗り物なんかじゃなく、自分の意志で身体そのものを、空で自在に操ってみたかった。 「ん……と、よいしょっと」 自分の背丈ほどある落下防止用のフェンスを乗り越え、幅三十センチも満たない足場へ降りた。そ