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嗚呼、魅惑のゲイビーチ

日曜の朝、スバルのSUVの助手席に乗って海に向かう。目指すはそう、ゲイビーチ。
日本にそんなものがあるのかとノンケの皆さんは思うかもしれない。いや、日本にもゲイビーチはある。なんなら私は15年以上前から夏はそこに通っていた。

場所は伏せておく。片田舎の、人も来ないようなさびれた海にいつのまにかゲイが集まるようになったというだけの話だ。それだけの話なんだけど、まあ凄い話ではあるわな。

決してヌーディストビーチではない。端切れのような水着でギリギリ秩序は保たれている。ゲイが集まり、海に浸かり、酒を飲み、ビーチバレーに勤しんだり、ゲイ同士の品評会をしたりしているだけのゲイリゾートといった塩梅である。

この時期は毎週末ちらほらとゲイが来ているが、いつからか8月の第一週の日曜日にたくさんのゲイが集まるようになった。今回も大盛況。こんなにもゲイが集まることななかなかない。

東京から車で3時間。電車やバスはないことはないが、本数の少なさや乗り継ぎの悪さを考えると不便なので公共の交通機関はないに等しい。私はけいちゃんという友人が車を出してくれるので昔から甘えているが、ハードルが高いよなと毎回思う。それでも皆、車を出したり、車を借りたりして毎回来ているから熱力が凄い。

みんな5時とか6時に起きて、荷物の準備をして買い出しをして、乗り合わせて来てるんだなと思うと中々感慨深いものがある。
東京から来ているゲイだけではない。たまたま海の近くに住んでいる方とか、そこを起点にして東京とは真反対の場所から来ているとか、まあ色々なところから皆さん来ているのも面白かった。住んでいる所がみんなバラバラだから普段はなかなか会えなくて、その海でしか再会できない人もたくさんいたりする。

今回はけいちゃんのお友達の地元組の方、そして昔から面識のあるコリキという友達のグループに合流させて頂いた。あ、名前出しちゃった。いいよね、別に。
私、15年前から通っているとは言ったものの、転職で毎夏は長期出張になってしまったものだから7年くらいこれてなかったの。だからコリキともだいぶ久しぶりの再会よ。

いやあ、知り合ったばかりの頃は学生だった子がすっかり立派な社会人になってて、めちゃくちゃ良かったなぁ。もう親戚のおばさんみたいな感想しか出てこない。それどころかコリキ周りの子たちとも10年ぶりの再会とかで、でもみんな大人になってて、しっかり生きていて良かった。みんな大人になって、酸いも甘いも知って逞しくなっていくんだなぁ。なんなら私よりもしっかり生きていらっしゃる。
何気ない会話の中でも「うちら、元彼死んだ同盟だから」という重い言葉が出てきたりして、でもそう言って笑う彼らの眼差しには寂しさと強さが滲んでいて。ああ、こんなにもか弱いゲイが30年も40年も生きてるってだけで素晴らしいことなんだ、と実感する。


そんなことはさておいて、海だよ、海。
ゲイビーチのあの寂しい感じ好きなんだよね。海の家なんてものもシャワーもなくって、あるのは青々とした海と申し訳程度の砂浜。それでも海なんてはしゃぎまくったもの勝ちですから。
台風の影響なのか、波が高く水温が低い。それでも私たちはGLAYの「生きてる強さ」を熱唱しながら水をかけあって「ギョェギョエ」と叫んではしゃぐ。

ってかさー、疲れるんだよね、海。毎回思うけど。酒飲むし、暑いし、波も高いし。
それでも体力がもつかぎり、波に抗い、水面に潜り、地を蹴って無駄に回転したりしちゃう。普段はさ、暑い、夏もうやだ暑いって言いながら日常を送ってるけど、まぁこれがあるから夏は素晴らしいんだ。

帰り際にみんなでご飯をした。ふだんゲイバーに行かないもんだから、性的趣向が同じってだけで繋がっているのはなんか不思議な気持ちになる。でも皆さん大人だから気も使ってくれるし、思いやりを持って接してくれる。ああ、みんなとまたこの海にきたいなと思ったんでした。「じゃあ今度は九州男で」なんて2丁目の大衆カラオケバーの名前を出して笑う。

海にプロレスに、なんだかんだで夏を楽しんでいる気がする。明日もまたがんばって働こう。

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