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【ワーホリ国際恋愛体験談】 ⑮ 真夜中の訪問者 パースのイケメンマッチョ (中編)

☆前回までのあらすじ☆
29歳、初ワーホリでオーストラリアへ!
いろんな出会いと別れを経験した後、パース郊外のシェアハウスへ引っ越し。
ある夜、部屋の窓からイケメンマッチョのクリスがやって来て…

☆用語解説☆
・ワーホリ: ワーキングホリデービザ(若者の異文化交流を目的とした就労可能なビザ)、またはその保持者。
・パース: 西オーストラリア州の州都の美しい町。
・オージー: オーストラリア人、又はオーストラリアの○○。

※この記事はほぼノンフィクションです。誰かに迷惑が掛からないようちょっとだけフィクションを混ぜてます。

***
(本編ここから)

私が彼の謂わんとしていることを図りかねているのを察知したのか、クリスは急に蕩けたような表情で近づいてきた。

「パーティーで君を見かけてから、ずっと忘れられなかったんだ!」

いきなりきた!
光の速さでそっと腰を抱かれるアラサー日本人独女。

このさりげなく腰を抱く感じ、大学生とは言え流石はオージー!
それなりに人生経験を積んできたアラサーもびっくりした。

片手で腰を抱き、片手で私の髪に触れるこの技は一体いつどこで学ぶのだろうか。
流れについていけず唖然とする。

「僕はこの前ハタチになったんだ。
君はいくつ?19くらい?」

腰を抱かれながら絶句。

こんなとき何て答えれば正解でしょうか。
まんま「30」って言って良いんでしょうか。
日本人は詐欺師集団だと思われませんか。
身長が違い過ぎると向こうも私の顔がよく見えないんでしょうか。

暖房をきかせた部屋にデカイ若者がくっついてきてワケの分からないことを言い出すので汗が吹き出てきた。

どうしよう。

彼は異国から来た年齢不詳の女の子の元に、酔いと情熱にまかせて愛の告白にやって来た若者なのだそうだ。

彼の情熱と、部屋の熱さと、彼への申し訳ない気持ちで頭がぐるぐるし始める。

「…私、すっごい年上だから…」

ぐるぐる考えた末の精一杯の回答と共に、彼を押しのける。
が、筋肉は動かない。
更に引き寄せられた。

お互いのTシャツを挟んでもなお主張してくる筋肉。

待って、この筋肉はズルい。
私は筋肉には弱いのだ。

「22くらい?」
見栄えの良い大学生モデルの顔が近づく。
美しくも男らしい顔立ちだ。

「もっと上!ずっと上!」

恥じらい、というより、
モラル。

三十路女がハタチの未来あるピチピチイケメンマッチョとどうこうなって良いわけがない。
犯罪だ。

「30なの!」
とは言えなくて俯いて首を振る。

一応断っておくが、私はこれまで自分の年齢を誤魔化したことはなかった。
プライドも恥じらいも、年齢に関して特に思うことは何もなかった。

しかしこの時は、ハタチの子に申し訳ないというか、ガッカリさせたくない気持ちが働き、自らの年齢を言いづらかった。

「24?26?」
と尋ねる彼の中ではどうやら27~28という予想で落ち着いたらしかった。

「僕より年上なのは驚いたけど、年月でさえも君の可愛さを妨げることは出来ないんだね。」

甘い顔が更に近づく。
髪にキス。頬にキス。唇に…

させるかっ!

と彼の唇をかわすと、それはためらうことなく首筋にやってきた。

湯気が出そうな私の肌に気づいたのか、
「熱いでしょ?」
と言うやいなや、スルッと羽織っていた上着を脱がされた。

どんだけ場数踏んでるんでしょうか、ハタチのオージーってのは。

寝ようと思ってたからノーブラなんですけど!
それを知ってか知らずか、ため息混じりの情熱的な眼差しと筋肉が一層密着してくる。

やめて、筋肉を押し付けないで!(涙)

「待って!
私あなたと会ったばかりだし、あなたのことよく知らないし、いきなりこんなこと困る!」

ハタチのコドモ相手に慌てふためく三十路女。
誰にも見られたくない姿だ。

でもだって、仕方ない。
なんせ私は筋肉に弱い(二度目)。

太い上腕二頭筋に包まれて、きっと鼻から耳から湯気が漏れていた。

「何でも聞いて。何でも答えるから。
それで僕のことをもっと知って。」

上気した顔を隠すため俯いた私の遥か頭上でささやく声。
私は何も言えず、ひたすら困っていた。


「そうだ!
君のパソコン、ちょっと貸してね。」

何かを思い出した様子で私のノートパソコンの前に移動するクリス。
私は彼の腕から開放され、こっそりと深呼吸した。

YouTubeで何やら音楽を探していたかと思うと、また私を抱き寄せてきた。

「ダンスしよう!」

なん、だと…?
スローな曲調の聞いたこともない曲が始まった。


信じられないと思うが聞いてほしい。

これはほぼノンフィクションだ。

特にこの話の前のベンと、今回のクリスに関しては、名前くらいしか変えていない。


オージーめ…。
お互いを知るためにダンスってなんだよ。
そんな技、聞いたことないぞ。

何なの?
オーストラリアの若者の間ではフツウなの?

何もかも初めての展開に呆気あっけにとられる日本人アラサー。

「待って、私、踊れないよ!
本当に分からない!」

盆踊りと運動会でやったフォークダンスくらいしか知らない。
あとラジオ体操。

「大丈夫。僕に任せて。」

ウィンクまで自然。

こんな人、実在するなんて知らなかった。
少女マンガにしか生息してないかと思ってた。

みんな!オーストラリアに居たよ!大発見!
ミステリーハンターになった気分。

どんな曲だったかなんて覚えてない。
もうだって、未知の世界に突入していて、それどころじゃなかったから。

初めて聴くゆっくりした曲に合わせて、クリスは私を抱きしめながらゆっくりステップを踏む。
私も、とりあえずゆっくりそれに合わせる。
曲がゆっくり終ると、彼の腕に急に力がこもって私は宙に浮いた。

「本当に君は、なんてスウィートなんだ。
この前のパーティーで会ってから君のことばかり思い出してたんだ。」

熱っぽく、私を抱きかかえたまま語り出すハタチのオージーボーイ。
筋肉の圧が凄い。

体を持ち上げられた私の目の前には彼の顔があって、目を逸らすことを許してくれない。
そのまま彼は私のベッドに座り、私は彼に向き合ったまま足を広げて彼の膝の上に座る格好。

やだ、エロい。
鼻血出そう。

ハタチ相手にこんなことしてたら私捕まりますか?
いや、そんなつもり無いんです!誤解なんです!

「これで君の顔が良く見える。」

イタズラっ子みたいに熱っぽく笑うクリスは、これまで実際に目にした誰よりもセクシーだった。
というか、これがセクシーということかとハッとした。

この前までガラスの十代だったくせに…!

(続く)

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