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20180306 笑うこと

泣いていたこどもを思う春雨に
凍解や新刊ばかりを買って行く
春の服泣いたふたりもすぐ笑う
集光道路にさんざめく春の声
休業の書店を知らせる朧月

R−1ぐらんぷりを見た。ピン芸人、いわゆる一人で活動している芸人たちの賞レース。今回優勝した濱田祐太郎さんのことは、ひと月ほど前に妹から聞いて知った。youtubeでネタを見た。白杖を持った漫談芸人なんてはじめて見た。『目が見えないあるある』ネタを連発する濱田さんに笑った。濱田さんとわたしたちは同じ世界に生きているけれど、見え方が違う。それが故に起きる気付きや事件を面白いと思う。濱田さんの創り出すネタの世界は、充分に視える明瞭な世界がまずあって、弱視であるが故にその世界が明瞭でないことへの不便や自虐を繰り広げる。それを軽快に、巧妙に表現する。

あるあるネタ、ってよくあるけれど、本当にありふれたあるあるネタは、正直面白くなかったりする。学校、彼氏、家族ネタ。そうそう、あるよねえー、だけじゃちょっと。そこにある特殊性があると、ネタは輝く。知らないんだけど、なんか知ってる、ような気がする。もっと知りたい、そう思う、ようになる。

さて濱田さんだけれど、妹は兄弟漫才師・ミキのファンである。大阪難波の『よしもと漫才劇場』で、若手芸人数人が出るライブにミキを見るために行った。その公演に出演していた濱田さんのネタを見たという。その公演は前半でネタをやり、後半ではゲームコーナーをする。その日のコーナーは『フリップを使って面白いことを言う』というようなゲームだった。ちなみにフリップとはテレビ番組などで使われるボードのことを言う。ある芸人が、濱田さんの白杖を使って、そのフリップを示す指し棒に使った。他の芸人は濱田さんをフォローしながら。その話を聞いて、ああなんかいいな、と思った。

濱田さんの決め台詞の「迷ったら笑っといて!」もああいいな、と思う。そうか、迷ったら、笑っていいのだよね。これから濱田さんはたくさんのテレビ番組に出演されることだろう。これまでと違った、何かおもしろいことがテレビで起こるような気がする。きっと、新しい世界をわたしたちに見せてくれる。楽しみである。

ちょっと自慢をひとつ。わたしは昔R−1ぐらんぷりの特別審査員をつとめたことがある。R−1の第1回大会の時に、一般人の審査員を吉本興業が公募していた。確か「あなたにとっての笑いとは」みたいな小論文を書いて、採用された。放送作家の方々と一緒に、準決勝を採点する。朝から夕方までずっとネタを見た。お弁当を食べて、出演芸人にああだこうだとえらそうに感想を言ったりして。面白い体験だったけれど、この一回きりで特別審査員企画は終了したみたい。



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