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20181103 屋根だけが濡れた十一月の朝

屋根だけが濡れた十一月の朝

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大学時代のともだちと3人でユニバーサル・スタジオ・ジャパンへ行った。じつに10年ぶりである。そのうちの1人は年間パスポートも購入するという。3人の中では唯一のUSJフリークである、彼女がいれば久しぶりのパークももれなく楽しめることだろう。

わたしたち3人はもう長い付き合いになるけれど、なんでも腹を割って話せる関係なのか、と言われるとそうでもない。趣味も違うし、性格も噛み合っているとは言い難い。でも、こうして時々集まって、わいわいと楽しんでいる。それぞれの近況報告を聞いて、じぶんの報告もする。それぞれに楽しい話をしあって、刺激をうけている。付き合っていておもしろいひとたちだなあと思うし、わたしも彼女たちのことをそう思っている。あなたたちが本当に大好きなのだ。

「アトラクションの待ち時間って、喋るのにちょうどいいんだよ」と年パス持ちの彼女は言った。なるほど、それは面白いなー、と感心した。待ち時間は慣れた相手となら結構間延びして、気まずいものになりがちだけれど、久しぶりに会う相手だったり、何か話したいことがある相手とだったら、長い時間であっても深い話をするのにちょうどいい。話しきったころにはアトラクションの順番が廻ってきて、一緒に楽しい体験をする。その体験を持ってごはんを食べながらまたおしゃべりするのだ。

エヴァンゲリオンのライドに乗る。二人乗りだったので、年パスの彼女は1人で乗るねと言ってくれたので、あと2人は一緒に乗った。ゴーグルをつけて乗るジェット・コースター。ゴーグルの付け方の説明をここに来るまでに丁寧に受けていたのに、あんまり理解できずクルーの方にほとんどつけてもらう。

ちなみにクルーとはUSJのスタッフのことである。余談だけれど、わたしは10年まえ、学生アルバイトとしてクルーをやっていたことがある。パークのゲート外にある、パークで一番最後まで空いているお土産もの屋さん。不器用だったわたしは、レジで誤差を出してしまったり、随分迷惑もかけたんだけれど、とても楽しい思い出の場所だ。

ライドは想像していた以上に楽しかった。とてもよくできているねえ、これからジェット・コースターもVRの時代なのかもしれないねえ、と、わたしはテンション高いめに2人に話をした。

もう1人のともだちのリクエストで、スパイダーマンのライドに乗る。ともだちは首を痛めたかも!なんて言いながら、笑顔ですごいすごい楽しい、と感想を言った。

夕方に差し掛かり、整理券をもらってハリーポッターエリアへ行く。わたしはそのエリアの世界の素晴らしさに感動し、2人に、「ああ…すごい…ごめん感動して言葉がめちゃくちゃだわ…」と訳のわからないことを言いながら、あたりを余すことなくぐるりとみて、時々秋の空を仰いだ。

この街では魔法の杖を買うことができる。魔法を使えるように、街の中のいろんなところでこどもたちが腕を振っている。動いているおもちゃに魔法をかけて、時間を止めようとしているこどもの姿が目に止まる。じつと見ていたら、静かにおもちゃの動きが止まった。わたしは彼に小さく拍手する。

魔法が確かにここにあるのだ。彼は杖を持ち帰って、よい魔法使いになることを心に決めるのだろう。

朝9時から閉園の10時までめいっぱい遊んだ。わたしたちはたぶんみんな眠くって、電車ではあまり話をしなかった。年末までに飲みに行こうねって言われて、ええもうそんな話、と思ったけれど、もう今年が終わるまで1ヶ月を切っている。

いつまでもこんなふうに遊んでいられたらいいんだけどなあ。というのは、今のわたしのおおきな願いである。



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