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【夏の連続厚顔無恥小説】第5回「タクシーの運転手さんの、いやー新人なものでナビ使ってもいいですか? の答えはダメです」

前回のおはなし

駅まで歩き、タクシー乗り場でタクシーに乗った。

乗った瞬間に世の中で嫌いな名言トップ10に入る名言が飛び出した。
「いやー新人なものでナビ使ってもいいですか?」

「ダメです」

「え、お客さんひどーい」

「あのね、そうやって最初からナビに頼るからいけないんです。信じなさい、自分を」

「そんなこと言って、お客さんだって道を間違えるとすぐに怒り出すんでしょ? いやになりますよ、もう」

「そんな君にこんな言葉を送ろう。『あなたが一番だまされやすいのは、あなたが純粋だからだ』」

うーん、何かが違う気がするがまぁいいとしよう。

「なんですか? その名言は……当たり前じゃないですか」

「とにかく出発だよ! 君の思うままに走ってごらんよ。行けばわかるさ!」

「文句言わないでくださいね」

その後、新人くんの運転でどこをどう走ったのか分からないが、長いこと都内をグルグルしていた。

その間にカーステレオのラジオからは、浮気に悩む主婦の相談だったり、懐メロだったり、金のしゃちほこが飛び降りようとしているというような何とも不思議なニュースが流れていた。

日本はまだまだ平和だった。

彼なりの到着地に到着したようで新人くんは「尽きました」と答えた。漢字が違うと注意すると、色々な意味で「尽きました」を選びましたというので、新人くんを尊重してあえて訂正しないでおこうと思う。

タクシーがとまった場所は羽田空港だった。

「ありがとう、ここで降りるよ」そう言うと、新人くんは

「ナビを使わないでこんなに遠くまで来れました」とうれしそうに言った。

せっかくなので空港の中に入ると、団体客(なまはげ)が大勢ロビーにいた。それぞれ包丁をもったり、必要なアイテムを持っていたが、そのうちの一人のなまはげが、包丁は機内に持ち込めるのか? と熱心に空港関係者に確認していた。うーん、たぶん難しいと思うよ。こんなご時世だし。

団体客(なまはげ)が移動した後になんと一つ桶がぽつんと置き忘れられていた。大変だ、桶がないとなまはげが活動できない。慌てて僕は桶を持ち、団体客(なまはげ)について行った。

そしてそのまま団体客(なまはげ)の関係者だと思われて、秋田行の飛行機に搭乗したのだった。

本当に世の中、なにが起こるか分からないよね。

8月25日は「東京国際空港開港記念日」

次のおはなし

「団体客(なまはげ)と共に秋田に飛んだ僕、秋田で待ち受ける衝撃の運命とは!」
→【夏の連続厚顔無恥小説】第9回「泣ぐ子はいねがー、怠け者はいねがー」8/29をお楽しみに

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