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10月25日は「世界パスタデー」

秘密地下クラブ「密食会」での今回の密食はズバリ「パスタ」だった。それを聞いたとき仲間の一人は嬉しさのあまり泣いていた。カレーと聞いた時もその仲間の彼は泣いていた気がした。やはり、パスタの衝撃はすごかった。かなり今回は攻めたな。と素直に思った。いつもより危険が大きい分今回の参加者は少ないかと思いきや、なかなかどうして、いつもと同じくらいの人数が集まっていた。
この暗い地下室で、今は20人ほどが肩を寄せながら各テーブルに座っている。これだけの人数がいるのだから、雑談がはじまってもおかしくないが、誰一人しゃべらなかった。皆少し怯えるように、いけないことをしているのだというこの空間を共有していた。しかし、その空間のいけないことの量は一人一人で背負うには重すぎた。今日はパスタだからだ。

最近皆さんはいつ、パスタを食べただろうか? この国にパスタが入ってきてどれくらいの年月が経過しているのかは知らないが、少なくても国民が気軽にパスタを食べることができる時代があったらしい、らしいというのは聞いたことがあるだけで本当かどうかは知らない。つまりは、自由に外国の料理を食べることができる時代があったらしい。

今こうして我々のように地下に潜り、モグラのように隠れて外国の食べ物を食べる地下クラブが多数存在している。その数は年々増え、政府の取り締まりも厳しくなっていると聞く。今日は特にパスタなので、いつも以上に気を付けなければならない。

静かに奥の厨房からパスタが運ばれ、各々の前に置かれた。そうしてクラブの主催者はこう言った。

「皆さん、今日はパスタです。いつも以上に気を付けて召し上がってください。特に口の周りにパスタソースをつけて帰らないように。ではいただきます」

10月25日は「世界パスタデー」

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