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ショートショート:「低山病。」



【前書き】

皆様、お久しぶりです。
カナモノです。

先に言っておきます、〝フィクションです〟。

少しの間でも、誰かに寄り添えることを願います。


【低山病。】

作:カナモノユウキ


《登場人物》
・僕

拝啓、出会えなかった僕たちへ。

〝低山病〟という言葉があるらしい。
標高の高い場所から元の地上に戻ると、その酸素量の多さで逆に体調不良を起こすという。
この言葉を知って、真っ先に思った感想は「分かる」だった。
僕は別に登山が趣味で、羊蹄山や富士山に登ったことなんて一度もない。
現在進行形で標高の高い山に住んでも居ない、多くの人が住む街に住んでいる。
それでも「分かる」と思ったのは、低山病は酸素濃度が濃く逆に呼吸がしにくくなるといった点だ。
〝地上に居ても、呼吸がしにくい〟これが僕の悩みだったから、多分全然別物なのだけどね。
だから先に行っておくと、集中力の欠如とか、理解力の無さとかも。酸欠気味の頭には起こりやすいんだと思う。
これは、傍から見ても分からないだろう。ただそこが僕たちの最大の問題であり、課題であることは…理解していた。
先に言うと、コレは言い訳とか分かって欲しいと言う感情で書いてはいない。
上手くは言えないけど、この症状の一番の難しい部分は「説明できない」こと。
そして「伝わらない」こと何だと思う、だからコレを読んで同じ思いの人が居たら。
少しでも、何かを伝える時に役立てて欲しいと思ったからだ。
この症状は、別に生活しにくい訳ではない。ただ、常日頃呼吸がしづらく苦しいだけだ。
ヘラヘラも出来る、相手に合わせることも、八方美人にだってなれる。
ただ、僕たちは頭が悪い。それが〝普通〟と勘違いして常日頃他人に失礼を働く罪人になるほどに。
結果人は離れ、自問自答が深く重く〝重なり〟続ける。
「まぁいいか、仕方ない。」これが僕たちには難しいんだと思うんだ。
だからずっと片付かない書庫で、ずっと過去の記録を手にしては「あぁ…。」とため息をつく。
〝忘れる〟ことも〝気にしない〟ことも、何故かできない。
ふと一人になると、夜道を歩くと横切る車のヘッドライトの様に、脳裏に浮かびあがる。
それをただじっと、見つめることしか出来ない。
〝終わったこと〟から、先に進めずに立ち尽くすだけしか出来ていない。
関係ないが、低山病と高山病は症状的には似ているらしい。
吐き気や頭痛、めまいなどだ。僕は自分のこの症状を高山病と見間違えていた頃がある。
それは、〝怖い〟という感情が毎日傍に居るからだ。
高いところに居れば、人は必ず落下の恐怖と隣り合わせだ。高所恐怖症の人間ならば尚更に。
この〝怖い〟は具体的に〝怪我〟〝死〟に直結はしていない。
でも当人には近い感覚があるだろう、「人に嫌われたら」「人に失礼をしたら」とういう思いが。
イコール〝怖い〟になっている、だからこそ言い換えれば人を怖がりやすいんだとも言える。
だけどさっきも書いた通り、僕たちは普通に生活ができる。
というより、〝普通〟に生活しなければいけない。
だけど見渡した時に、僕たちと同じような〝苦しさ〟を持った人間は見当たらない。
もしかしたら、上手く擬態できる方法があるのかもしれないけど。僕たちから見えないんだと思う。
だから、いつの間にか勘違いをする。「自分は違う世界に住んでいるんだ」と。
そんなことは無い、ありえない。みんな同じ世界に生きて居るのに。
そう勘違いした結果、価値観すらも〝普通〟からズレていくんだと思う。
この症状を低山病の話をしたのは、つまりそう言う事だ。
僕たちは、みんなと同じ世界に生きて居ることを、忘れてはいけない。
でもね、きっとその全てが嫌になるときがあると思う。
どうしようもない〝苦しみ〟が、〝怖い〟が、「普通じゃない」と言う価値観が。
それを突きつけられたときに、真っ暗になって、身動きが取れないことが。
苦手な人やお世話になった人、大事だった人から、好きになった人から。
受け取って前に進まないといけない言葉たちが。
きっとその時は無数の銃口からハチの巣にされる様な、無数の刃でゲームの様に刺されるような。
分かっているのに、分からないが。
人の言葉が、分かったと思えば消えて。
分かっていないと言われ、分からなくなって。
その答えを考え続ける。

ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる
ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる。


今書いた倍の反芻を繰り返した結果、結局答えが出ないバットエンドに向かうことが多かった。
そう、これは、多分バットエンドなんだと思う。
自分勝手で、他人を浮世からしか見れない自分の、最善で最低の選択。
ここまで読んで下さった皆様、ありがとう。
まだ出会えてない僕たちへ。
僕の言葉が理解できた人が居るなら、無責任でごめんだけど。
生きてください。
少しは、説明しやすくなったともう。それを糧に、僕たちは進んで欲しい。
僕は先に逝く、〝苦しくない世界〟を願って。

さようなら。


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

…去年も、確か〝傷〟と言う作品を吐き出すように書いたのですが。
これもそのタイプです。

今回は物語と言うか、シンプルに〝遺書〟ですが。

うまく言えないですが、多分これは僕が吐き出した。
〝死にたがりの自分〟何だと思います。

そんな奴の遺書。

奴に何があったのかは、僕であり僕ではないので知りません。
でももし、奴の言葉を理解できる人が居たら。

心から、幸いだと思います。

では次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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