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時間切れ!倫理 139 啓蒙思想 福沢諭吉3

 帰国後、福沢は幕府のために翻訳などの仕事をするのですが、幕府が倒れると慶應義塾をひらき教育活動に専念し、また啓蒙思想をわかりやすく伝え、明治のオピニオンリーダーとなります。
 たくさんの本を書いていますが、一番読まれたのが『学問のすすめ』。『福翁自伝』という自伝も面白い。まあこの人の本は何を読んでもおもしろい。少し文語調ではありますが読みやすいと思います。皆さんも頑張れば読めると思う。
 彼の代名詞が天賦人権思想ですね。ヨーロッパ人が強力な国家を持っている、その根本にある思想は何か。それは一人一人が独立している。権利を持つ一人一人が集まって、国民国家が作られる。それが民主主義的に政府を選んでパワーを発揮する。これが欧米列強の強さの秘密。
 日本では、人々が幕府や殿様の命令を「へい、へい」と従っている。西欧では、殿様の名前を書いた紙切れを踏んだからといって怒られることはない。踏んでいる人も一人の人間。殿様と何の違いもない。みんな一人一人が平等なのだ。それが欧米列強の強さのもとである、というのが福沢諭吉の思想の根本です。
 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり」。ということで徳川時代の封建制度を徹底的に批判します。身分制度を批判して、自立せよ、自立した精神を持て、と訴えます。誰かにくっついて何とかしようと思うなんてダメだ。自分の足で立って自立せよ。そのためには学問を身につけよ。学問が絶対必要なのだ。これからは刀を振って剣術が強いからといって身を立てる時代ではない。学問せよ。慶應義塾に来りて学べ、という感じですね。
 個人的な話ですが、大学時代に『学問のすすめ』はどんなものかな、と思って読みました。びっくりしました。何にびっくりしたか。感動した自分にびっくりです。二十歳の私が、100年前の人の本を読んでね、「うぉー!学問しなければ」と思ったからね。すごくパワーのある本です。現在でも訴えかけてくる力がある。
 時代は明治にかわったが、国づくりに失敗したら欧米列強によって植民地になるかもしれない、そういう切迫感の中で力を込めて書いているので、彼の本は訴える力が未だにあります。一人一人が独立しなければ日本も自立できない。自立できなければ侵略されるという考えが根本にありますから力強いです。「一身独立して一国独立す」です。
 そのためには実学尊重。富国強兵は当然肯定しています。政府との関係では官民調和という考え方です。官は政府、民は民間です。福沢諭吉は政府高官からも頼られるオピニオンリーダーですが、決して政府の役人にはならない。自分自身は決して政府に仕えないという信念がある。自分は民の側にたち、官と調和してやっていく。独立というのは、彼にとっては政府からの独立でもあったのです。
 ただ慶応出身の学生たちが政府に出仕することを禁止したりはしません。もちろん実業界で成功する人は沢山出てきます。この福沢ブランドの慶応大学は未だにその魅力を維持していますね。
 ちなみに早稲田大学を作った大隈重信は佐賀出身の人物で、彼は政治家です。総理大臣にもなっています。ここが福沢諭吉の慶應義塾とは少し違うところかな。早稲田出身者は、慶応出身者に比べて、実業界よりも政界で目立ったいるように気がします。
 福沢諭吉晩年の考え方です。脱亜論ということを言っています。アヘン戦争以来、欧米列強は東アジアに進出し、侵略の手を伸ばしてきています。それに対抗するために日本では明治維新が起こり、近代国家が成立しました。福沢諭吉は、当初は、日本は朝鮮や中国清朝と連携・団結して欧米列強の侵略からアジアを守るべきだと考えていました。そのためには、朝鮮や中国でも明治維新のような改革が実現することが必要だと考え、それを期待し応援していました。
 しかし朝鮮でも中国でも改革が進まないので、日清戦争の後ぐらいになると、日本、中国、朝鮮三国による連携を諦めます。もう日本はアジアの一国であることをやめよう。ヨーロッパの国として行動しようと主張しました。これが脱亜論。彼の考え方の変化と同調するように、のちに日本政府は朝鮮を侵略・植民地化し、中国にも進出していくことになるのでした。


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