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時間切れ!倫理 89 ムハンマドの後継者・シーア派とスンナ派

4. ムハンマドの後継者

 ムハンマドが死んだ後、巨大な信者集団、ムスリム共同体ウンマが残されました。彼が最後の預言者なので、再び預言者は現れません。しかも、聖職者もいません。古参信者の中から選ばれた者がリーダーとなって、ウンマを率いることになりました。このリーダーのことをカリフといいます。カリフは聖職者ではありませんが、ウンマを率いるムハンマドの後継者として、信者からは絶大な尊敬をうけ、大きな権威を持ちました。
 ムハンマドが死んでから約六百年間の間、カリフ制は存続しましたが、モンゴル帝国によってアッバース朝というイスラーム教国が滅ぼされてカリフはいなくなりました。それ以後、現在に至るまで、カリフの称号を名乗る者はいません。簡単に名乗れないほど権威の高い称号なのです。なにしろ全世界のムスリムのトップに立つわけですから。
 数年前イスラーム国(IS)が出現した時、そのリーダーが自分はカリフだと名乗ったことがありましたが、世界中の信者が認めなければ意味がない。ただ勝手にいっているだけですね。

5. シーア派とスンナ派

 イスラーム圏のニュースを見ているとスンナ派とシーア派といういい方がよく出てきます。ムハンマドがイスラーム教を作り上げ、沢山のムスリムがそれを信仰し、やがてムハンマドは死んだ。こののち、カリフを決めるに際して、最初のころは有力な古参信者、幹部の話し合いでカリフを決めてきました。
 ムハンマドには娘がいて、その娘婿をアリーといいます。アリーはムハンマドのいとこでもありました。ムハンマドの娘とアリーの間には息子もいた。アリーは第四代のカリフになるのですが、アリーの死後、ムハンマドの孫に当たるアリーの息子、およびその子孫をカリフとして仰ごうと考えたグループがありました。このグループがシーア派です。しかし、これは少数派でした。
 血筋などはどうでもいい、実力のあるものがカリフになればよいというのがスンナ派。最初はそれだけの違いです。ただ二つの宗派が1000年以上も続いているので、なんとなくいがみあっているような形になっています。が、教えの中身が大きく違うわけではありません。お父さんがスンナ派、お母さんがシーア派というようなことはいくらでもあるようです。
 現在はアリーの子孫は死に絶えてしまって存在していませんが、それでもシーア派はつづいています。

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