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《アンダースロー考察1》加速度0を操る

 はい。こんにちは。
 アンダースロー考察シリーズ第1回です。

 早速本題です。
 アンダースローって、どんな投法だと思いますか? サイドスローとの違いは何だと思いますか?
 これはちょっと調べると出てきますが、一応、一般的な解釈を記載しておきます。

<サイドスロー>
 投球の際に振る腕が、地面と水平となる投法。

<アンダースロー>
 投球の際に振る腕が、地面と水平より下の位置になる投法。

 ざっくりですが、そのまんまの解釈でいいと思います。
 腕を横に振ればサイドスロー、振った腕が水平より下がればアンダースローってわけですね。

 また、投げている感覚としてのサイドスローとアンダースローはどうでしょうか。

<サイドスロー>
 横から腕を振りまわして投げるイメージ。

<アンダースロー>
 下から腕を振ってイメージ。

 ってことで、投法のイメージはそのまんまなんですけど、アンダースローについて、もう少し詳細に書くと、《重力に反発する上方向への力を少しでも加える動作が必要になる投法》という感覚です。
※山田久志さんの投球理論(オーバースローから体が倒れているだけ)でも、同じことです。身体の使い方は様々ありますが、重力に反発する力を加える必要があることに変わりはありません。

 まあ、当然ですよね。
 腕が下がれば下がるほど、打者のストライクゾーンに対して低い位置からのリリースになるわけですから、打者のストライクゾーンに投げ込むためには、重力に反発する力を少しでも加えておかないと、18.44m先には届きすらしません。
(オーバースロー、サイドスローでもある意味(球速・ボールの回転数)で重力には反発していますが、アンダースローの場合、“意識的に”重力に反発する力を加える場面がある、という意味です。)

 この<重力に反発する力を加えて投げる>ことから生まれる一般的な解釈が「浮き上がってくるような軌道で投げることができる」となるんだろうと思います。


 ここで、浮き上がる軌道で投じられたボールが、その後どうなるか考えてみましょう。

<Ⅰ>
 浮き上がっている軌道のまま、キャッチャーまで到達し、捕球される。

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当たり前ですよね、はい。

<Ⅱ>
 浮き上がっている軌道は頂点を迎え、重力に従って沈みながらキャッチャーに到達し、捕球される。

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そりゃそうですよね。

 いや、そりゃそうなんですよ。
 そりゃそうなんですけど、アンダースローによる投球をしていると、この事実に対しての葛藤が必ず生まれてきます。
 それも、アンダースローでストレートを磨けば磨くほど、悩ましい問題になってきます。

 なぜか。
 低い年齢のうちに、アンダースローに初めて挑戦する場合、必ずと言っていいほど、まずは<Ⅱ:浮いてから沈む>軌道になる投球を体験するんです。そして、アンダースローの投球が定着していけばいくほど、ストレートの球速・回転数が増してきて<Ⅰ:浮き上がるだけ>の軌道になる投球が可能になります。

 投げれば投げるほど、「アンダースローの投球が上達している」と感じますから、この流れで脳が「<Ⅱ:浮いてから沈む>ストレートはダメな投球の例だ」と認識してしまいやすくなります。

 これが結構な落とし穴と葛藤を生みます。

「アンダースローで強いストレートが投げられるんなら、お辞儀するストレートは不要なんじゃないか?」と。

 しかし、この葛藤は葛藤のみすべきであって、結論を出すのを急いではいけないと僕は思います。


 一般的なアンダースローの欠点は何でしょうか?
 これはご存じの通り、「オーバースロー・サイドスローに比べて、上から投げ下ろさないため、重力を利用することができない──すなわち、球速が出ない点」にあります。

 つまり、物理的に、重力に逆らう力を必要とする以上、投球時に上方向のベクトルを混ぜた力をわけですから、いくら頑張っても、限界があります。(ボールを投げる時に使用できるエネルギーの総量の一部を、重力に逆らう力を加えるために使用しているから)
 

 しかし、これは欠点ではなく、利点と考える方が素直だと僕は考えています。

【浮き上がる軌道の投球ができる】ということは、<Ⅰ:浮き上がる軌道の投球>と<Ⅱ:浮き上がってから沈む軌道の投球>の二種類の球質を得ている、と考えれば、より前向きになれます。


 したがって、『アンダースローで投げる』ということの選択理由の一つとして、

 オーバースロー・サイドスローのような速い球を投げることはできないが、重力の影響を自分でコントロールできる球質を得る。と解釈できるわけです。

 僕は体格に恵まれていなかった(170㎝/58kg:高校3年時)ため、他の人とは違う手法で重力を使うことにメリットを感じました。

 まあ、めちゃくちゃにひねくれた考え方ですけど、、、一つの球種が二球種に派生しやすいんです。

・浮き上がるストレートと、浮き上がってから沈むストレート(後者はボー球ですけどね)
・沈むチェンジアップ系、浮き上がってから沈むチェンジアップ系(パームボールでも可)
・単純に曲がって落ちるカーブと、一旦浮き上がって沈むカーブ
・右打者の外に逃げていくスライダーと、一旦上半身に向かってきてから外に逃げていくスライダー
・フォークボールと、スカイフォーク(『ドカベン』の里中智投手でないと投げることはできないかもしれませんが笑)

 こんな具合です。
 もちろん、オーバースローやサイドスローでも、一つの球種を球速と回転数の調整で二つに派生することは可能です。ただね、アンダースローだと重力の影響を利用することで、まずは分派しやすいんです。
※変化球については、おいおい詳しく書いていくと思います。


 ところで、重力を利用する場合に、忘れてはならない注意事項があります。
 利用するのが容易だからと、ホイホイと重力を使った変化球を作っていくと、球種増産に捉われ、重力を利用した球質そのものに対する危惧がおろそかになりがちです。

 僕が思うのは、【重力は誰でも知っている】ということです。
 これも意味はそのまんまです。重力によっての変化は、本能的な部分を含め、打者はおそらく軌道を予測しやすいです。
(守備のゴロ捕球で考えると分かりやすいですね。ゴロを捕球する際に、跳ね上がってくる途中で捕球するよりも、落ちてくる最中で捕球する方が容易です。)

 さて、軌道予測されるとどうなるか。

 打たれます。

 それでは、【重力を利用していて軌道が予測しやすいのに打たれにくい球】とは何でしょうか?

 先に書いたように、アンダースローは重力とは反対方向の力を加えて投げる方法です。
 そして、重力とは反対方向の力がゼロになり、重力に従って落ち始めるとき、〈浮いて落ちる〉軌道になるわけですよね。

 ならば、アンダースローの投球時に調整可能な、重力とは反対方向に加える力を操りましょう。(僕ら人間は重力自体を操ることは、当然できませんからね。)

 まず、一般的なオーバースローやサイドスローの投手が変化球を投げる場合、変化球が変化する位置を気にしますよね。

変化しきったあとの変化球は打たれやすい】

 これは定説だと思います。だから、分かりやすい部分で言うと、球速と回転数を用いて変化位置を調整します。

 では、アンダースローの場合はどうか。それは気にすることが2つになるということです。

・球速と回転数の調整
・重力に対して反対方向の力がゼロになる地点の調整

 これって、アンダースローで変化球を投げていてかなり曖昧になりがちなんです。曲がっているのか、重力の影響で落ちているのか、頭で切り分けて考えていないと、変化球の調整中に混乱を極めます。

 ということで、アンダースローで投球する際は、〈重力に対して反対方向の力がゼロになる地点を意識すること〉を忘れてはいけないと、僕は思います。

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 おそらくの話ですが、山田久志さんの高速シンカーの変化量とキレ、渡辺俊介投手のスローカーブは先程挙げた2点がかなり噛み合って調整されています。

 調整することが増えれば、変化球を操るのも難しくなりますが、極めることにより、通常出会ったことのないような変化球を作り出すことも可能だ、と僕は思います。
 まあ、単純に、変化球って面白いですからね。試すことが多いので、楽しんで試して、変化球を投げてみてください。
(僕が重力を特に意識して使っていたのは、スローカーブ、スライダー、シンカーです。これらは比較的扱いやすいです。変化球が難しければ、ツーシームやシュートを工夫するのも良いでしょう。※詳しくは変化球の回に書きます。)

 もう一度、最後に注意です。
〈変化しきったあとの変化球は打たれやすい〉です。これに加えて、〈重力によって落ちきったあとのボールも打たれやすい〉です。

 アンダースローの変化球の失投は二重苦を生みます。

 利点と欠点を使って、あなたなりの変化球を編み出せることを期待しています。

 

 おしまい。またね。

 

 

【オマケ】
 アンダースローのフォームについて考えるために動画を撮ってたんですが、ピンクのスリッパ姿が気持ち悪かったので載せておきます。

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 今度こそ本当におしまい。

 またね。

 


僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。