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「孤児たち」第二回

かつて、ぼくらは永遠を知っていた。確かに、それに触れたこともなければ、この目に見たこともないし、その声を聞いたこともない。ましてそれを所有したことなどありえない。しかしながら、それは常にぼくらとともにあった。それはぼくらの斜め後方、およそ2メートルほど離れたところにあり、ぼくらは常にその気配を感じ取っていた。それは常にそこにあった。
だがしかし、今はそれは消え失せた。

消え失せるようなものが永遠であり得るだろうか?簡単なことだ。それはそこに今でもあるのかもしれない。ぼくらがそれに気づけなくなっただけなのだ。あるいは、ぼくは時折やってみるのだが、それがそこにあるのだと自分に思い込ませようとしてみる。念入りな擬制を行い、それがそこにあるのだと、自分を信じ込ませるのだ。

もちろん、それが上手くいったためしはない。自己欺瞞と自己憐憫の物悲しいのは、それが閉鎖回路であるからだ。車輪を回すハムスターはどこへも行けない。永遠にそこを走り続けるだけだ。

永遠に。

あるいは死が訪れるまで。

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