ショートショート「まさか!」

このタイトルが「まさか」であるからには、「まさか!」という話になるのだろう。そんなに驚くべき話なのか。そんな時に限って登場とは、俺はツイてない。できることならば平穏無事なお話、欲を言えばハッピーエンドのお話に登場したかった。しかし、どうやらそういう星の下に生まれたようなのだから仕方ない。思い返してみれば、幼少の頃からそうだった。貧乏くじは悉くこちらにやってくる。もう慣れっこだ。だからそんなに哀れんだ目で見ないでくれ。え?見てない?
さて、ということで、目下の関心事はどんな「まさか!」がやってくるかだ。心の準備をして待ち受けておいてやろう。そうすれば、いくらかは衝撃を和らげることができるかも知れない。いや、場合によってはあちらに「まさか!」と叫ばすことだってできるかも知れない。まさかこちらが先読みしているとは思うまい。
しかし、「まさか!」を予測するといっても何から手をつけていいのやら。まさか、いきなり殴られるとか?まさか、いきなり刺されるとか?まさか、信頼していた人間に裏切られるとか?まさか、不治の病に罹るとか?まさか、交通事故に遭うとか?いや、まさか、宝くじに当たるとか?これだって「まさか!」だ。いい「まさか!」もあるのか。それでも思い浮かぶのは悪い「まさか!」ばかりだ。しかもいくら思い浮かべてもキリがない。それはそうだ。想定内のこと以外は全て「まさか!」なのだ。それは無限に存在するだろう。無限に存在する「まさか!」にどうやって対処すればいい?どちらからやってくるかわからない敵からどうやって身を守ればいい?そんなことは不可能なのではないか?じゃあ、「まさか!」に脅かされるしかないのか?そんなのは嫌だ。どうにか「まさか!」をギャフンと言わしたい。何か手はないものか。
それにしても何も起こらない。まさか!このまま何も起こらないで終わるのか!

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