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【一級建築士】課題発表!今年は図書館【令和5年度】

こんにちは、かねっつです。

ココナラでは、一級建築士設計製図の添削を始めました。

本日もnoteをご覧いただきありがとうございます!

本日7月21日は、令和5年度 一級建築士の設計製図課題発表日でした。

今年の課題は『図書館』です。過去3年(令和2年〜令和4年)と基準階タイプで出題されていましたが、今年はゾーンタイプと呼ばれる課題になりました。

今回は、図書館の概要と試験対策について重要なところと、私の所感についてお話ししたいと思います。

※この無料記事を読み終えるのに、約16分かかります。

■建築基準法について

図書館は建築基準法第2条第二号の特殊建築物に該当をしています。(正しくは、同法政令115条の3第二号に明記されています)
同法別表第1では、(3)に該当し、階数が3以上で耐火建築物または同等以上となることから、試験では耐火建築物として計画されます。
図書館は、工業専用地域以外であれば建築することができます。試験対策では、住居地域と商業・工業地域で変わる斜線制限に注意が必要がです。

同法112条の防火区画について、言わずもがなですが面積区画と竪穴区画を計画します。プラスアルファで異種用途区画に注意しましょう。図書館の部門とその他の部門(例えば、店舗や福祉施設などの図書館の用途とは異なる部門)の間で行き来がある場合の開口部(扉含む)は『特定防火設備』を計画します。

■消防法について

図書館は消防法上、別表第一(8)に該当します。しかし、1階部分に異種用途の施設(店舗など)がある場合、別表第一(16)項イになります。
図書館に必要な消防設備は消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、避難器具、誘導灯です。
この中で試験対策しておきたいのは、屋内消火栓です。基本は延べ面積が700㎡であれば該当しますが、消防法政令第11条第2項より、主要構造部と内装仕上げによって2倍(或いは3倍)と倍読みできます。最大でも延べ面積2,100㎡以上だと必要になることを覚えておくと、計画の要点で問われても答えられるので便利です。図書館の場合は1人で操作可能な2号消火栓を採用します。

■バリアフリー法について

図書館はバリアフリー法上、特定建築物・特別特定建築物の両方に該当します。特定建築物であれば、建築物移動等円滑化誘導基準(以下、誘導基準)となり、特別特定建築物で延べ床面積が2,000㎡以上であれば建築物移動等円滑化基準(以下、義務基準)の適合義務となります。
結論だけ言うと、誘導基準のほうが数値等が厳しいです。細かい内容は、別のnoteの記事でご紹介したいと思います。
試験対策では、どちらのパターンとなっても焦らないように、誘導基準と義務基準の違いを早いうちにマスターしておくとよいです。

■図書館の種類について

図書館は、利用者の種別によって、国立図書館(national library)、公共図書館(public library)、大学図書館(academic library)、学校図書館(school library media center)、専門図書館(special library)、その他の施設に設置される図書館に分けられます。

https://www.jla.or.jp/library/tabid/69/Default.aspx

学科の試験においては、公共図書館(地域図書館)について学ぶことが多く、過去には、平成24年に『地域図書館』、平成9年に『緑豊かな吹抜け空間のある地域図書館』、平成4年に『アトリウムと小ホールをもつ地域図書館』が出題されています。(なお、昭和時代にも過去2回出題あり)
今年は『図書館』のみなので、公共図書館以外の用途も十分にありえます。
或いは、既存の図書館に併設した地域図書館という考えもあり得ます。過去の令和元年『美術館の分館』はその名の通り、本館美術館からの連続性を問われていました。こういったケースに酷似した課題もあり得るかと思います。その他にも、既存の廃校をコンバージョンした図書館やブックモビル(移動図書館)の機能が併設されている図書館など…。語り始めるとつきません。我々予備校も、いろんな角度からの対策が必要になります。

■図書館を見に行こう

実際に図書館を見に行くことは、書棚の配置やゾーニングなどを体感できるのでオススメです。ただし、図書館ならどこでもいいわけではなく、可能な限り試験に近い計画の図書館を見る必要があります。なのでデザイン性に優れた図書館を見学するのは、個人的にはオススメしません。よくあるのが、有名建築家によるプロポーザルなどで選定された図書館や建物のファサードを幾何学にした図書館です。これらは、地域性との一体や建築物としてのコンセプトが強いものの、試験におけるゾーニングの計画やスパンの考え方などは試験対策には不向きかと思います。オススメなのは、大手の設計事務所が設計したものや、国・地方公共団体が運営している図書館です。

ここで個人的に思う、試験対策としてオススメの図書館をご紹介します。

1.せんだいメディアテーク【宮城県仙台市】

伊東豊雄氏の代表作で、ギャラリー、図書館、映像センター、目や耳の不自由な方への情報提供など様々な機能を持つ複合施設。図書部門のレイアウトや複合施設のゾーニングとして参考になる。

2.武蔵野プレイス【東京都武蔵野市】

東京都武蔵野市にある複合施設。読書のみならず、学習や研究としても集中できるスペースがある。フロアによって活動内容や世代が違う計画であるため、フロアゾーニング(部門の階構成)として参考になる。

3.金沢市立玉川図書館【石川県金沢市】

たばこ工場を改修した古文書館の2棟からなる図書館。隣接する公園利用者も自由に図書館を通り抜けられ、気軽に立ち寄れる空間となっているため、周辺状況とのアプローチ計画として参考になる。

4.神奈川県立図書館【神奈川県横浜市】

1954年に開館した神奈川県立図書館旧本館(前川國男設計・現 前川國男館)の様々な要素を受け継ぎながら、未来への図書館として建てられた公共図書館。1階にライブラリーショップ、2階にはレファレンスルームが計画されており、閲覧は1、2階で可能。書架の配置や閲覧席のプランニングの参考になる。

5.朝霞市立図書館本館【埼玉県朝霞市】

敷地全体を活用した図書館。開架室は成人・青年・児童の3つのコーナーからなり、視聴覚室や事務所などが、全て1階に配置されている。開架室の中央部にはトップライトをもつ吹抜け空間もっている。1階部分における利用者ゾーンと管理ゾーンのゾーニング計画の参考になる。

6.福知山市立図書館中央館【京都府福知山市】

ガラス張りの建物『市民交流プラザふくちやま』が複合している図書館。1階は児童書、2階は一般書の閲覧となっており閉架書庫も兼ね備えている。全般的な図書部門のプランニングの参考になる。

試験対策の参考になりそうな建築物を挙げてみましたが、この他にも地域にある大きな図書館や大学に付属している図書館に行ってみるのもいいかと思います。なお、見学の際は周りの方の迷惑にならないように注意してください。

課題の参考となるような施設に対して、見学等の要請を行う場合には、施設管理者の指示に従う等、社会通念上、良識のある行為、言動等に留意してください。

https://www.jaeic.or.jp/shiken/1k/1k-seizu.html

■図書館の試験対策は?

予備校に通われている方は教材と課題を優先して解くことです。昨今の予備校資料は、試験対策をするのに非常に細かくまとまっています。教材に穴が空くほど叩き込むことです。独学の方は、まずは過去問を調べてみてください。その年の傾向はどんなもので、今年はどのような問われ方をするのか考察してみると、勉強するのに何が大事かを明確にすることができます。あとは、前述した図書館の見学やSNSで他人の情報を収集することです。情報は鵜呑みしすぎないように気をつけてください。

■建築設備士と一緒やん!といった私の所感

令和5年度の建築設備士の設計課題は『市街地に立つ図書館』であったため、私は「今年の一級建築士の課題は図書館ではないな…」と思っていました。建築設備士の課題発表前は図書館だと思っていましたが…。
そして私自身、課題発表前日には自信満々に「カプセルホテルです!」とツイートまでしています。

実に見苦しいですね。…というのも、過去に一級建築士の設計製図課題が別の試験課題と被ることがなかったためです。ちなみにアンケートをした結果、公共施設と予想した方が多く、予備校の長期クラスは授業課題で図書館を練習していたそうです。これは大きなリードですね。

冒頭でもお伝えしましたが、図書館はいわゆるゾーンタイプと呼ばれるもので、部門ごとにフロア分けをする作業があります。基準階タイプはコア位置が決まるため上下階のプランニングに制限が出てしまいますが、ゾーンタイプはある程度の自由度が増し、エスキスしやすい傾向があります。ですが、その反面、自由度が増しすぎてエスキスが決まらない受講生さんも多いため、受講生さんによっては指導方針を変えていく必要があると思っています。
もうひとつ不安なのが、要求室の室同士や外部施設との条件が多くエスキスは決まっても条件欠落で不合格になるケースです。条件により室配置が児童的に決まってしまい、他室が配置できなくなったり、場合によってはその条件すら欠落してしまうこともあります。常に条件整理をしていき、エスキスの段階でも欠落しないように工夫する指導が必要になります。

図書館は建築基準法上、一般的な法を遵守していれば問題ありません。例年通り、延焼ラインの防火設備、防火区画の防火(特定防火)設備、敷地内通路の確保、避難・重複経路は、毎年必ず注意する重大な不適合のチェック項目です。ということは、プランニングやゾーニング計画が合否を大きく左右する要であると私は思います。試験元のHPにも『各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。』と掲載されている以上、設計趣旨に準じたプランニングが試されるのだと思います。


最後まで、ご覧いただきありがとうございました!

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