二段ベッドに愛を

息子は素直に寝てくれた。  
君が先に寝たから少し焦ったけれど、お気に入りのヘルパーさんと仲良く歯磨きをして笑顔でお休みをした。
一緒に住み始めてあっという間に2ヶ月。
コロナ禍で日々神経をすり減らしてはいたけれど、家に帰ると2人の笑顔が僕を待っている。
「待っている人がいると頑張れる」とはよく言ったもので、一人で過ごしていた時より何倍も忙しいけど、どこからかエネルギーが湧いてくる。
それも無限に。

毎日が賑やかで、毎日が楽しくて、毎日が彩られていて、僕はどれだけ幸せものなのだろう。

時計の音が聞こえる。
チクタクチクタク、トントントン。

障害と共に生きてきて、辛いこともあった。
20代は瞬く間に過ぎたし、どちらかというと、しんどい思いをした気がする。
その時間が必要だったのか問われると、正直わからないけれど2人に出会うための道だったのなら、僕は迷わず同じ道を選ぶ。断言する。

だって2人のことがすきだから。
とってもとってもだいすきだから。

遠く離れたところに住んでいて、育った環境も違って、見てきた景色も違う二人が出逢って、その二人に一生懸命話しかける君がいて。
「昨日のつーぎ!」(一昨日らしい)の言葉に笑い合える。

欲張りな僕は、もっと早く出会いたかったと思ってしまった。
1分でも1秒でも、長く二人といたいから。
でもそれはできない。
二人が歩んできた道は、僕と違った道だけれど、今こうして交じりあえたのだから。それで十分。

時計の音が聞こえる。
チクタクチクタク、トントントン。

すぐ近くには、ひっそり佇むヘルパーさん。
今夜は一人で寝ることになりそうだ。

そして朝になったら、エンジン全開の君と
眠そうに目を擦りながら、おはよって言う君が僕のそばに来てくれる。

ずっとずっとだいすきだよって
心の中でつぶやいて、僕は夢の中に入っていく。

二段ベッドに愛を込めて。

時計の音が聞こえる。
チクタクチクタク、トントントン。

背伸びしながら、時計を付けて
かわいいでしょ?って笑顔の君を早く抱きしめたい。

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