20220413

2〜3日に一度メッセージのやり取りをするようになったスペイン人がいた。普通そうで、真面目そうで、忙しい日には返信を後回しにしてしまう事もある。でも何故だかフェイドアウトはせずに連絡を取り合っていた。
1ヶ月ほどはマッチングアプリのメッセージ機能で連絡を取るだけだったのだが、突然LINEかwhatsappに登録してくれないかと電話番号が送られてきた。LINEを使っているなんて、マッチングアプリ玄人なのかと疑いながら友達登録をした。その後すぐに、彼はマッチングアプリのマッチリストから消えた。マッチを解除されたのかと怪しく思ったが、LINEでは連絡が続いていたので特に聞かなかった。

4月半ばに差し掛かった頃、急に彼からお誘いがあった。
「14日に名古屋に行くことになったんだけど、一緒にビールでもどうですか?」
ちょうど私も仕事で名古屋に行く予定だったので快諾した。彼は嬉しそうに、自分の写真を送ってきた。
「I’m real! (僕は本物だよ)」
マッチングアプリから消えて以降、彼のプロフィールが見れなくなってしまったので忘れていた。この人は、自称31歳パイロットだった。
出発前の飛行機からの写真や、経由地に着いたこと、もうすぐ日本に向けて出発する事などを逐一報告してくれた。

それでも怪しく思っていた私は、フライトレーダーという飛行機の情報サイトで検索をかけた。彼曰くベトナムを出発して名古屋に夜到着する便らしい。彼からの返信が途絶えた時間を出発時間の目安にして検索したが、該当便が無い。
おかしいな、騙されているのかもしれない。と思いながら時間を置いてもう一度検索してみた。すると、出発地ベトナム、目的地不明の飛行機が名古屋付近を飛んでいるのを見つけた。
フライトレーダーのサイトは、リアルタイムで飛行中の飛行機の図を見ることができる。私はその目的地不明便を目で追い続けた。

その飛行機が嘘みたいに名古屋に着陸し、その10分後くらいに彼から「着いたよ」と嘘みたいなLINEが送られてきた。

明日会う人は、嘘つきではなさそうだ。そう思ったのを覚えている。


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