20220108

彼は良い人だった。ゆっくり進めたいと言った私に手を出してこなかったし、占いも教えてくれた。自分が学んできた頃を私に教えたいと言って、熱心に教えてくれた。私は少しだけ、彼が気になり始めていた。

今日は私がご飯作るから食べにこない?と誘ってみた。

ランニングしてから行くね、と言って彼から連絡が途切れた。夕方になってからインスタを通してメッセージが来た。
「スマホが水没してしまったよ。復活させようとしているんだけど上手くいかなくて。今日はうちに来てくれないかな?」
料理して待っていたんだけれど仕方がない。彼のマンションへ向かった。

今までは駅まで迎えに来てもらっていたので、迷ってしまった。メッセージを送ったけどなかなか既読にならないので、近くのカフェに入ってドーナッツとカフェオレを注文した。食べ始めた頃彼から連絡が来て、すぐ迎えに行くとの事だった。

「2階席に座っているから上がっておいでよ。」

階段を上がってきた彼の表情が固かった。まだ半分以上残っている熱いカフェオレを早く飲めと急かす。訳がわからず私も怪訝な顔をすると、飲み終わるまで外で待っているからと出て行ってしまった。ドーナッツもカフェオレも美味しかったのに、急いで掻きこむことになるなんて。店を出て歩き出すと、彼が話し出した。
「実は元彼女がこのカフェで働いていたんだ。付き合っていた頃よく迎えに行ったから。」
彼がこの元彼女と付き合っていたのは3年以上前の話なのは知っていた。
「その子はまだ働いているの?今日働いていたスタッフさん達は顔見知りの人だったの?」
彼は
「それはわからない。今日の人たちは顔を覚えている人ではなかったと思う。」
と答えた。

私は不満だった。

彼の家に着いた。彼は生米の入ったビニール袋にスマホを入れて、乾燥させるのに必死だ。今日はUber eatsにしようかと言いながら、スマホが使えない彼は私のアカウントで好きなものをオーダーするように促す。私はイタリアンレストランからピザとサラダをオーダーした。一緒に食べようと思って作ったエビのクリーム煮、美味しくできていたんだけどな。

彼はその後、パソコンでシステム復旧ソフトをダウンロードしているようだった。ピザが届いたので、一緒に夕食をとった。割ときちんとしたレストランのデリバリーだったので、ピザもサラダも美味しかった。彼はこんな美味しいサラダは初めてだと言い、ピザも喜んで食べた。しかし、彼は1スライス目からピザの耳を残した。モチモチで美味しいのに。これは、安いピザじゃないのに。その日は少しずつ機嫌が悪くなってしまって、食後すぐ帰った。

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