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宮古島トライアスロンでSTRONGMANになった体験記

2023年4月16日に開催された、全日本トライアスロン宮古島大会「STRONGMAN」に参加し、制限時間内に完走できた。58歳にして初めてロングのトライアスロン大会だったが、宮古島の人たちの温かい声援やボランティアと好天に恵まれて、宮古島の絶景をゆっくり満喫しながら楽しめたのでその感動を記しておきたい。

スイム苦手がトライアスロン始めたら

大多数の人たちからみたら、トライアスロンをやる人間はクレイジーである。7年前までの自分にとってもそうだった。前の記事でも書いたが、ロードバイクを買って自転車乗り始めたのが2012年(48才)、マラソンを始めたのが2年後(50才)。自転車仲間の中にトライアスロンやっている人たちがいて、「あと泳ぐだけじゃん」と言われたが、そもそも泳ぐの苦手だし、海で1km以上泳ぐなんてもってのほか。1日で3種目いっぺんにやる意味もわからないので「やりませんよ~」と全否定していた。

そんな2016年、私はベンチャー企業の役員を退任して、LIXILといういわゆる大企業に転職した。ベンチャー挑戦が不完全燃焼に終わり次のチャレンジを模索していた頃。夜中まで会社のために働き続けるベンチャーと違ってホワイト企業の管理職は率先して早く仕事を切り上げなければならない。余った時間と情熱を向ける先として、NAS吉祥寺のトライアスロンスクール(スイミング)に金曜日の夜通うようになった。

トライアスロン大会に出るようになってもスイム苦手は変わらず、いつもスイム下位10%以内の制限時間ギリギリ通過。2018年の横浜トライアスロンではパニック状態になり途中リタイヤになった。パニックと言うのは大抵スタート後200-300mくらいで心拍数あがり過ぎて過呼吸状態になり普通の息継ぎできなくなること。スイム途中棄権のほとんどはパニックによるものらしい。

宮古島「STRONGMAN」は特別な大会

そもそもトライアスロンと言っても大会によって距離はいろいろ。大きく分けて次の3つ。

  • オリンピック ディスタンス: Swim 1.5km Bike 40km Run 10km。 オリンピック種目の距離。横浜、石垣島大会などで3時間くらいで完走

  • ミドル ディスタンス: Swim 2km, Bike 60~90km, Run 20km。 アイアンマン70.3(Mile)、諏訪湖大会などで6時間くらいで完走

  • ロング ディスタンス: Swim 3km以上、Bike 100km以上、Run 30km以上。宮古島、佐渡、世界各地の「アイアンマン」(140.6Mile)など。日の出から日没まで走り続けるような大会

私もLIXILがスポンサーしていた常滑開催アイアンマン70.3(ミドルディスタンス)を完走してからは「いつかはロングを完走したい」とは思っていたものの、スイム3km以上はだいぶ気が重い。

宮古島は全日本トライアスロン大会という名を冠し37回の歴史あるロングディスタンスの一番人気の大会。コロナ前まではSwim 3km Bike 156km Run 42.195km で行われていた。抽選倍率が高く私もコロナ直前の2020年大会にエントリーしたが落選。その大会は結果的にコロナ緊急事態宣言により中止になったのだが、今回の2023年はそれ以来4年ぶりの開催で、Bike 124km Run 30km に短縮されたこともあって再度エントリーして初当選。

宮古島大会は4月開催なので、冬場の暑熱順応できていない状態からいきなり灼熱の宮古島で丸一日レースするわけでコンディション作りと熱中症対策がカギとなる。私は2月末に自転車落車して脇腹痛めた影響で3月はスイムやバイクの練習少なく不安を抱えたまま宮古島入りすることとなった。

宮古島入りから前日まで

レースは日曜日だが、木曜日朝の羽田発直行便で宮古島に入った。早めに暑熱順応したかったし、金曜日だと手荷物として預ける自転車の飛行機搭載が集中して運搬してもらえないリスクも考えた。仕事は元々テレワーク基本なので木曜日の午後や金曜日は宮古島から普通にZoomで会議に参加していた(宮古島にいることも気づかれない)。コロナのおかげで便利な時代になったものだ。

木曜日夕方、伊良部大橋にて

木曜日は会議後夕方に伊良部島への伊良部大橋をバイクで渡り、金曜日には選手受付を済ませた後でスイム練習をした。夜NAS仲間のヒロさんと行動を共にしたので安心して準備できたし夜は宮古牛焼肉や島おでん、てびち(豚足)を満喫した。

土曜日の午前にはバイクで片道15kmの池間島まで軽く往復して足慣らし。昼頃から激しい雨となり、ずぶ濡れになりながらレース会場スタート地点の前浜ビーチにある東急リゾートでバイクチェックインを済ませた。ホテルに戻ってトランジションバッグに忘れ物ないように様々な道具や補給食をより分け、朝3時半の起床に備えて夜9時に寝ようとしたが興奮して眠れない。レース前はいつもこうなのだが最初のスイムが気になって悶々と寝付けないまま朝を迎えた。

金曜日の夕方、ビーチでスイム練習

レース1: 鬼門のスイム 3km

レース当日は雨も上がり絶好の青空。4時半にホテルを出て暗い中レース会場へ。スイム会場の前浜ビーチは東洋一美しいビーチと言われるだけあって白い砂浜と青い海が美しい。水温24度ということで袖なしウェットスーツ(ロングジョン)を選択しても冷たすぎることはない。スイムでパニックになる要因の一つにウェットスーツが窮屈に感じることがあり、袖なしタイプの方が腕が自由に動かせるので気が楽。

スイムスタート前、夜NAS仲間と


過去の宮古島大会は朝7時一斉スタートだったが、今回から密集を避けるため?4つのグループに分けて2分間隔でのウェーブスタート。私は第2ウェーブで7:02にスタートし、成り行きでインコース側の前の方から泳ぎ始めたのが失敗だったかも。飛ばし過ぎてパニックにならないようスローペースで泳いでいると続々と後ろから人が襲い掛かってくる。2分後スタートの第3ウェーブがすぐに追いついてきてバトルになり海水を飲んでむせる。さらに第4ウェーブに後ろから巻き込まれた時にゴーグルが片目ずれて海水が目に。スクールで教わった通り仰向けになってゴーグル直したりしてるうちに集団から置いていかれる。

集団から離れるとバトルが減って泳ぎやすくなり、キレイに透き通った海と白い砂を見ながらマイペースで泳ぐ。ドラフティングできる同じペースの人を見つけながら、一周目1.5km終わって時計を見ると何と48分もかかってる。目標40分以内どころか一周目の制限時間は55分なのですでにヤバい。

2周目はさらに人がまばらになったけどブイやコースロープが見やすくなり蛇行しにくくなったはず。数少ないスイム下手仲間を見つけてはドラフティングで後ろについて泳ぐ。1周目より上手くいったつもりで砂浜に上がって時計見ると何と1:46分。え?2周目58分もかかったの?スイムの関門は1:50分なのでギリギリ通過、「あと5分でスイム関門閉鎖です~」というアナウンス聞きながらトランジションへ。
スイム結果1:46:38 1107人出走中、スイムアップは後ろから数えて17番目、ほぼ最下位

それにしても私のオープンウォータースイムは遅過ぎ。プールではどんなにゆっくり泳いでも100mあたり2:30ペースより遅いことなどありえないけど、3:30ペース以上かかった計算になる。潮流の影響もあるとは言え、GPS軌跡見るとまっすぐ泳げず蛇行して3550mも泳いでいる(他の人のログみると3300mくらい)。メンタル面でも海に入ると心拍数上がっておっかなびっくり泳いでるし浮力の高い海+ウェットスーツのスイム姿勢がとれていないのも原因かな。

GPSログでは蛇行した軌跡が😅

レース2: 絶景のバイク 124km

トランジションエリアには20台くらいしかバイク残ってない。いつものこととはいえ取り残された気持ちで焦りながらバイクの準備。焦り過ぎて靴下のしわが寄った気持ち悪い状態のまま靴を履いてバイクスタートしてしまい、バイクの間ずっと後悔することに。

鬼門のスイムを何とかクリアしたので気持ちは晴れやか。ほぼ最下位からのバイクスタートなので一人一人抜かしていくのが楽しい。自転車ロードレースではこうはいかない。実は8年前の2015年、「ツールド宮古島」という自転車ロードレースに出場したことがある。当時はトライアスロンなど念頭にない頃だったけど、今回とほぼ同じコースを走り、集団から横風で千切れてどんどんと置いて行かれ、後半ハンガーノックで失速した悔しい想い出がある。今回はランもあるので150W以上は踏まないことを心掛けて一定ペースで漕ぎ続ける。

宮古島のバイクコースは宮古島の全体を回る絶景のオンパレード。今回は距離短縮で伊良部島への伊良部大橋は渡らないものの、北端にある池間島への池間大橋を渡るし、南東端にある東平安名崎も絶景スポット。池間大橋を私が渡る手前でたくさんの選手が池間島周回を終えて戻ってくるのとすれ違い、夜NAS仲間の顔も見える。スイムで30分以上の差がついているのでこれをバイクで挽回するのはキツイ。

池間島への池間大橋 土曜日撮影 レース当日はピーカンの晴れ

バイクの間に補給食をとるのだが、今回は初めてボトルに高価なモルテン入れてみた。ジェルも使ったけど途中で飽きてくるのでスポーツ羊羹やライスペーストのような固形物がありがたかった。

晴れてだんだん気温が上がってくると熱中症にならないように水を頭からかけながら走る。今回正解だったのは日焼け防止のアームカバー装着と、HALOのバンダナ型ヘッドバンドつけていたこと。頭と腕に水をかけると長時間身体を冷やしてくれるし日焼けしないので身体に負荷がかからない。
バイク結果4:36:31  ここまでの着順で892番目、約200人バイクで抜いた

レース3: 灼熱のラン 30km

宮古島陸上競技場でバイクを置き、ランシューズに履き替えてランスタートしてから下り基調で快調に走り始めた直後、両脚がつって走れなくなる。諏訪湖の時もそうだったけどバイクと違う動きに筋肉がついてこれないのだろう。いったん止まってストレッチしてからゆるゆるとリスタート。

今回のランコースは市街地を中心に15kmのコースを2周する。市街地には地元の皆さんの「ワイド―!(がんばれ)」という応援や太鼓が途切れず、とても楽しい。水を頭からかけてくれる人もいるし、ゼッケン番号を見てスタートリストを確認して「三原さんワイド―!」と叫んでくれる人もたくさんいる。今回もチームLIXILのユニホーム着ていたおかげで「LIXILワイド―!」の声もだいぶもらった。ホントに地元の人に愛される素晴らしい大会。

アップダウンのあるランコースなので登り基調ではペース上がらず1km 7:30くらいの歩くようなペース。NAS仲間が2周目で周回遅れの私を見つけて声をかけてくれる。気温約28度の真夏のような天気なので、エイドのたびに氷水につけたスポンジをたくさんもらって胸と背中に一つ入れ、バンダナ型ヘッドバンドの中に氷を入れて熱中症対策。ジェルは飽きてしまいエイドでもらえるバナナやオレンジが嬉しい。2周目に入ると完走を確信できるしだんだん日が傾いて涼しくなってきたので楽しくなり、レースがもうすぐ終わるのが名残惜しくなってくるから不思議。

2周目終えて宮古島陸上競技場に入ってくると、一人一人の名前を呼び「おかえりなさい」とアナウンスしてくれる。先にゴールした仲間たちに声をかけてもらいながら感動のゴール。
ラン結果3:55:15トータル 10:33:27 総合順位 782位
ランで100人くらい抜いたことに。制限時間11:30なので約1時間の余裕ありました。完走者1000人、完走率90.3%

ゴール前をヒロさん撮ってくれた。ランナーズハイ状態ですね

トライアスロンは生涯スポーツ

今回の宮古島ではスイムで関門ギリギリ通過だったものの、目標である完走を果たした。トライアスロンは完走者はすべて勝者と言われ、順位にこだわる気持ちはさらさらない。また、トライアスロンは生涯スポーツであるとよく言われているように(参考:「なぜトライアスロンが生涯スポーツとして選ばれるのか」)、トライアスリートには50代、60代のシニア層の割合がとても高い。もちろん遠征にはお金もかかり家族に迷惑もかけているが、人生にリズムと達成感を与えてくれているのは間違いない。年齢が上がると事故のリスクも上がり今回の宮古島大会でも不幸な事故が起きてしまったが、無茶をせず今後もほどほどに楽しんでいきたい。今年の9月にはラスボスに位置付けている佐渡国際Aタイプ(国内最長距離のロング)にエントリーしており、スイム4km泳がないといけないので夏の間にスイム改善何とかしたいものだ。理解してくれてる家族や共に頑張る仲間たちへの感謝を忘れず楽しみたい。

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