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紙もの ~捨てられがちなお宝たち~

古物買取の仕事で最もがっかりすること。

それは、お宝があった形跡を見つけてお客様に尋ねると
”あっ、それ捨てた”というやり取りをすること。
一つならまだしも沢山あったという話を聞くと更に悲しくなり、
お客様と二人でガッカリなんて経験は日常業務の一環と言えることがなんとも言えない気持ちになります。

でもね、これって捨ててしまったお客様が悪いんじゃないんです。
買取専門家である私たちをご自宅に呼んでくれると頼って下さっていて
沢山モノがあってこういう依頼内容なんだけれど、どんなものを買い取ってくれるの?とお客様は必ず聞いてくれるんです。
しかし、多くの古物商の方は一般の方でもわかるブランドや高額品、
わかりやすい例ばかり買取宣伝します。
私は思うのです。お客様の問いの裏は”何を買取ってくれるの?”ではなく
”どこまでの物を捨てないでおけば査定してくれるの?”
本当に知りたいのはどこまでがお宝の可能性があり、見てくれるのかなのではないかと。

私たちがどんな汚れた品や古びた品が欲しいのか、買取したいのか。
一般の方なら迷わずゴミ袋に入れてしまう、そんな悲運なお宝を救う発信をしてこその買取専門家であると思うこの頃です。

今日はそんな事を視野に、私が買取させて頂きたいお宝のジャンルの中から
一般の方ならば真っ先に捨ててしまう”古い紙もの”の世界のお話をさせて頂きたいと思います。


◆ 家電や乗物などのカタログ類 ◆

こちらは私が集めている真空管のカタログです。
昔は電球一個でもカタログを作って販売する豊かな時代でした。
カタログ一枚一枚、しっかりデザインして作られます。
私のように実際にこの真空管を使ってアンプ製作して、
当時の流行歌を聴きながらこういったカタログを眺めると
ノスタルジックな気分に浸ることが出来ます。

こちらは戦前・戦後の楽譜です。
楽譜というのは音楽家にとっての地図、特にこの時期の作家の合唱曲や流行歌などは
復刻されていないものも多く、この当時に一回限りの出版ものも少なくありません。
また、楽譜を彩る表紙絵はセノオ楽譜の竹久夢二など、
著名な画家やデザイナーが描かれているものや、
とても可愛らしいイラストのものも多くコレクションとしても愛されております。


ここからは私が実際に買取の際に” ゴミ袋 ” から救出し、
実際に買取させて頂いたお宝たちをご紹介させて頂きます。


こちらはアナログ・レコードの帯たち
帯を外して保管されていたようで、本体は既に破棄されなく
ゴミ袋いっぱいに大量に破棄されるところに待ったを掛け、買取させて頂きました。
レコードの世界は”帯”に価値があります。
帯があるだけで価値が倍なんて品はザラにあり、
中には帯があったら数万円、無ければ二束三文なんて品もあるほどです。
レコードの専門店で学んだ私にとっては嬉しい買取となりました。


昔懐かしい携帯ゲーム機
こちらはなんと本体と説明書は別々の方から買取させて頂いたお品物です。
子供部屋のゴミ袋の中に捨てられていたのを発見し、本体はないけれど
説明書だけ買わせ頂き、しばらくして別の方からの買取で揃えることが出来ました。
玩具の買取の多くは当時、流行ったものが多く
本体は沢山出てきます。子供が遊ぶため外箱や説明書、細かい付属品の方が貴重だったりします。


こちらは私が特に愉しみにしているジャンルなので
写真が多くなってしまいましたが、古い写真や絵ハガキです。

人の家の家族写真を見て何が楽しい?と思われがちで
個人情報の関係もあり警戒されてしまう事があるのですが
私が欲しい写真は古い建物や物撮り写真、ペットなどの動物写真
自営業や会社ならば商品の研究写真など第三者が見て”レトロで素敵”と飾りたくなる
絵になる写真です。
素人の写真なんて、と思われがちですが
当時のフィルムと現像の独特の空気感、そしてアマチュアゆえの作為的ではないゆるさがある日常写真は時を経た今、なかなか素敵なものがあります。
こちらはいつか私が集めたコレクションを使って熱く語りたいと思います。

上の写真は大正-昭和期のパン工場をされていた方の写真です。
デジタルでは描けないなんともいえないレトロさを感じませんか?
こういったものを探しております。

古い絵葉書は海外のものや日本のもの、絵になるものだけではなく
景色や記念、歴史的資料価値のある物も少なくありません。
私の趣味でもあり、コレクターも多いこともあり積極的に買取をしたいジャンルでもあります。

黒い厚紙をめくっている写真はアルバムの使われていないページです。
当時の焼けたセピア色の紙や使われていないノートなどを使って
お店の値札を作ったり、説明書きや、古い写真や絵を雰囲気を崩さず
額装するためにも必要不可欠の為、買取の際はこういった物も評価しております。

こちらは長野県出身の著名画家である中村直人の水彩画、真筆です。
埃や破れが僅かにあること、ご家族の方に認知されている方がいらっしゃらなかったことからゴミ袋へ。
私が見つけた時、”そんな汚い下手な絵が売れるの!?”と驚かれました。


戦前・戦後の子供の絵やアマチュア作の板絵
こちらを買い取れますと伝えると皆さん、一気に見る目が変わります。
これが買えるんだった今まで捨てたゴミは全部お宝だったんじゃ…。

子供の絵は技術ではなく、”気持ち”が前面に押し出た絵心でもって描かれたものです。
特に時代を経て味が加わった事で深みを得る。
戦前・戦後の子供や素人絵の専門コレクターや専門店も存在するくらいの人気のジャンルです。


戦前・戦後の絵はがきや、雑誌の付録や折り紙など
竹久夢二や中原淳一、小林かつぢなどなど…当時の人気絵師たちが
描いたものも多く、コレクターの間で非常に人気の紙ものたちです。
こういったものも良く捨てられてしまっており、写真の品たちも
あらゆるご自宅のゴミ袋からかき集めたものとなります。


浮世絵や資料、木版画などもよく破棄されてしまいます。
家計簿や名簿など、古い紙が蔵や箪笥からどっさりと出てきて
中身も見ずにポイというのがよくあるケースですが
こちらは世界的にもコレクターが沢山居るほどとんでもない貴重なお品物がある可能性を秘めたジャンルです。
古い紙の山を見つけた際は捨てる前に頼ってほしいとただただ望むばかりです。


長くなってしまいましたが、こういった物に限らず。
古い雑誌や古書、和本、企業の包み紙や映画のチラシ、新聞などに至るまで。
あらゆる紙ものに価値を見出している方たちがいることを少し知っていただけたらと思っております。
ご自宅・ご実家の片付けの際は是非その点に気をつけてみて頂ければ幸いです。

閑古鳥はここまで見ます。
古い物やご不要なものが御座いましたら是非閑古鳥にご相談下さいませ。

閑古鳥

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