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強気なわたしは誰よりも弱い

 ついつい帰りが遅くなってしまった家までの夜道、今日も私は耳にイヤフォンをつける。スマートフォンを操作して再生する曲は、いつも決まって強気な歌詞の曲。夜道に吹く風はなぜだか少し生暖かく感じられて、私をMVの主人公へと変えていく。すれ違う人を社会の逆境と見立てて、”私はあんたらに何を言われようと自分の思うままに生きるんだ”っていう顔と心で、たむろするヤンキーもいなければ不気味な野良猫もいない安全な住宅街をいそいそと歩いている。見る人が見たらきっとイタイ若者だろう。誰にも何も言われてないのに、誰に何を言われても!なんて逆境気取りしているのだから。

現実の私はいつだって弱い。人見知りとビビりな性格が相まって思っていることの半分も言えないし、孤独でいいしみたいな顔して誰よりも孤独を恐れている。自分が嫌いだと思う人はたくさんいる癖に誰かに自分が嫌われることは怖いから、気づいたらその人の下手にでて思ってもない誉め言葉をつらつら口に出している。実に醜くて弱い生き物だ。でもこんな生き物でも友達だと思える人は少なからずいて、その人たちが肯定してくれちゃうもんだからなかなか自分を変えられない。こうやって他人のせいにするところも良くないのだが、誰だって信頼する友人からそのままでいいって言われたら自分はこのままでいいんだって思ってしまうだろう。自分に甘くて他人に弱いのが今のわたしだ。

あなたは自分をどんな人間だと思っているのだろう。
もしあなたがあなたを嫌いでも、私は好きかもしれない。
直接は伝えられなくても、素敵だなって思うかもしれない。
そんなことを想像してたら、いつもより少しはやく眠れるかもしれない。

                                      はなり


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