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連載小説『エミリーキャット』

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(2018年・8月~現在も連載中)画商の彩は誰もが認めるキャリアウーマン、優しい年下の彼と婚約中。 然し本当は人知れず幸せよりも生きづらさに喘ぐ日々を送っている。彩はある日、森奥… もっと読む
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#ファンタジーロマンス

小説『エミリーキャット』第79章・It's not a coincidence

『またあんた達なんだぁって思ったわよ』 という口ぶりを聞いて病院のベッドの上の慎哉は心の…

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小説『エミリーキャット』第77章・suddenly

『彩さん?ついたわよ』 順子の声に彩はまるで階段の最上階を一段、踏み外すような衝撃の中、…

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小説『エミリーキャット』第76章・メリーさんの羊

若い癖に寝つきの悪い貞夫は何度も寝返りを打ち、枕の上で荒々しいため息をついた。 そして思…

小説『エミリーキャット』第71章 ・コヨーテの鳴く夜に

彩は無自覚というものがさながら自分という人間が誰か別の人格に操られていつの間にか動いてし…

小説『エミリーキャット』第70章・サエリとキヨリ

店へ入ると同時に赤銅のカウベルが三段落ちの立体細工を施した、いかにも年代ものの扉の上でガ…

小説『エミリーキャット』第69章・Labyrinth

順子の家から帰宅した彩はマンションの鍵がかかっていることを確かめても尚、怯々と踊り狂う胸…

小説『エミリーキャット』第67章・燠の記憶

マンションの敷地内は延々と続き呆れるほど広かった。 彩は歩きながら果たして本当にこの地を踏破出来るのであろうかと本気で疑った。 それゆえにあの森がいかに拡大で、深い森であったかを彩は改めて思い知った。 暗くなっても桜がマンションを取り囲むように植樹されている為、その桜を照らし出す為に並列する街灯のもと、マンションの住人達はピクニック・シートを敷いて集い、夜桜見物を至るところで賑々しく行っていた。 その傍らを犬連れでどこか場違いな彩達ふたりはうつむき加減に小さく黙礼しながら彼

小説『エミリーキャット』第66章・Missing

まるで折れ釘のように首と頭を倒して高層マンションを見上げているうちに、その窓々が春の日射…

小説『エミリーキャット』第65章・the lost world

彩はまるで切ない夢から覚めたように、 と同時に未だ夢の中に居るかのように、泪をひとすじ異…

小説『エミリーキャット』第64章・悲しみよ、こんにちは

足音は一人のものではない。 複数で勇み足に近づいてくるものだとエミリーは思った。 ケンイ…

小説『エミリーキャット』第60章・孔雀の夢

閑静な住宅街が近づくとそれぞれの荷物を少女達は順番に一つずつエミリーの肩から取ってゆき、…

小説『エミリーキャット』第57章・悲しみとダンス

日本へ来てエミリーが直面したことはアメリカに居た時から薄々感じてはいた幼い中、常に鈍痛の…

小説『エミリーキャット』第55章・エミリーとの出逢い、尚三の初恋

『山下くん?…山下くん!』 尚三はまるで通勤電車の中で草臥れ果てたサラリーマンのように教…

小説『エミリーキャット』第54章・heads or tails?

401号室は水を打ったような鎮けさで彩は自分が息をしてもその呼気が極度の静寂の中で大きく波紋のようになって響くのではないかと感じ、普通に息をすることさえ憚(はばか)られた。 気がつけばふたりは室(へや)にある黒い革張りのソファーに向かい合ったまま座っていた。 お互いにどうしてそうなったのかその経緯を全く憶えておらず、 まるで記憶喪失のように抜け落ちた記憶の果てにふたりはいつの間にか、差し向かいとなっていたのだった。 山下は茫然とその椅子に深く腰掛け、目の前にある机と自分との間